皮膚のトラブル

健康管理の第一歩。 皮膚の状態を知ることから始めましょう!

皮膚の改善は生活習慣から

皮膚病の改善は、生活習慣から
犬の皮膚病は、動物病院に来院する最も多い疾病だと言われています。
皮膚病は、数百種類にも分類できて、一つの疾病が複数の症状となって現れたり、複数の疾病で同じ症状が現れたりと、その原因を突き止めることは、非常に難しいとされています。
皮膚病は長引きやすく再発しやすいため、改善していくためには、愛犬の生活環境や食生活などを見直していくことが大切です。

皮膚の構造

皮膚は、身体の内部環境と外部環境との境目となる組織で、「表皮」「真皮」「皮下組織」から構成されています。
皮膚のいちばん外側を覆っている「表皮」は、身体の内側から「基底層」「有棘(ゆうきょく)層」「顆粒層」「角質層」の四層構造になっており、バリアー機能の役割りを担っています。

表皮のバリアー機能

「角質層」は、角質細胞と細胞間を満たすセラミド(細胞間脂質)でできています。
セラミドは細胞間を確り繋ぎとめて、外界からの刺激や体内からの水分の蒸散を防止しています。

4層構造の表皮表面は、更に、「皮脂膜」で確りと覆われています。
皮脂膜には、皮脂バリアーという抗菌作用があります。
例えば、愛犬が痒がっている場合に、不用意にシャンプーの回数を増やしてしまえば、真菌(カビ)やフケなどには効果的ですが、皮脂膜の抗菌作用を持つ皮脂バリアーの脂(油)まで洗い流してしまい、菌に弱い皮膚になってしまいます。

適切な衛生管理

犬の皮膚は、ヒトと比べて刺激や乾燥に弱く、トラブルを起こし易い傾向にあります。
これは、ヒトの角質層と比べて1/3程度の厚さしかなく、とても薄いためです。
そのため、皮脂バリアーの脂(油)で、確りコーティングされていないと直ぐに皮膚を痛めてしまいます。
脂分を洗い流してしまうようなシャンプーを使い続けていると、むしろ皮膚炎の原因になる場合があります。

ブラッシング(スリッカーやファーミネーターなどで死毛をしっかり取る)をし、安心安全の100%天然成分の植物由来成分配合のシャンプー&リンスで洗ってあげましょう。

仕上げには、皮膚への刺激が少なく、高い浸透性と保湿効果のあるホホバオイルを配合し、カモマイルローマン、サンダルウッド、パチュリ、イランイラン、ローズマリー、アルシランなどの100%天然アロマがブレンドされた「ブラッシングローション」で、優しく被毛をケアしてあげることをお勧めします。

表皮のターンオーバー

一番下にある「基底層」で生まれた細胞は、形を変えながら表面に押し上げられていき、無核となり死んだ状態で角化細胞となります。
角化細胞は、新しい細胞に押し上げられるようにして表面まで上がり、最後はアカとなり、自然に剥がれ落ちる構造になっています。
これを、ターンオーバー(新陳代謝)と呼んでいます。

犬のターンオーバーのサイクルは、ヒトよりも1週間程度短く、約3週間だと言われています。
ターンオーバーによって、表皮は絶えず入れ替わっています。
表皮に傷がついても、かさぶたとなって剥がれ落ち、きれいな皮膚を維持できる仕組みになっているのです。

ターンオーバーのサイクルは、遅すぎても早すぎても、皮膚トラブルの原因となります。
愛犬のターンオーバーのサイクルを正常に保つためには、バランスの取れた食事や散歩などを規則正しくとって、ストレスを溜めないようにするなど、基本的な習慣を確り維持していくことが大切です。

食事の見直し

皮膚病と向き合っていく上で、薬や食事療法食(処方食)にばかり頼るのではなく、食事の見直しによって体内から健康にしていくことが大切です。
これには、相当の時間を要しますが、かけがえのないワンちゃんの身体に負担を掛けず、健康な身体と美しい皮膚を維持していくためには、最善の方法だと言えます。

添加物に注意

愛犬が肉球をしきりに舐める行動がみられたら、肉球の状態を観察してみてください。
肉球に集まっている汗腺からドロドロした分泌物が出ていたら、それに対する違和感がストレスとなっている可能性があります。

添加物の入ったフードやおやつなどを食べ続けていれば、未消化のたんぱく質が血管などにこびりつき、全ての分泌物がドロドロになってしまいます。

防腐剤や着色料などの添加物が使われておらず、食品に含まれる栄養成分が、身体に吸収され利用されて健康で美しい身体を維持できるような形で存在しているフードやおやつなどを選びましょう。

消化のよい食べ物

犬は、体内で作られるエネルギーの60%以上を消化のために費やしていると言われています。
消化の悪いフードやおやつなどを食べ続けていれば、消化することに余計なエネルギーが掛かり過ぎて、ターンオーバーのサイクルを悪化させてしまう可能性もあります。

犬は、喉を通る大きさの食物を食べるときには、あまり噛まずに丸飲みしてしまうため、直ぐに胃に到達し、満腹感を得難い身体構造になっています。
そのため、特に、空腹時間が長く続くと、食べ過ぎてしまう傾向がみられます。

犬の先祖は、狩りをして食物を手に入れていました。
そのため、進化の過程で、狩りに成功した時に食べ溜めできるように、大量に入る胃と強い食欲が備わった構造をもつようになったと考えられています。

食べ過ぎてしまうと胃が拡張してしまい、たんぱく質を分解する胃液が十分に回らなくなります。
たんぱく質以外の栄養素は、胃の収縮によって混ぜられ、液状になると十二指腸から小腸へと送られます。

腸では、すい臓からのすい液や胆のうからの胆汁が分泌され、分解酵素によってタンパク質はアミノ酸に、炭水化物の何%かはブドウ糖などの単糖類に、脂肪は脂肪酸とグリセリンに分解されます。
腸では分解されたタンパク質、炭水化物、脂肪とビタミン、ミネラル類が吸収されます。

大腸では、未消化の食物繊維や有機物を常在菌がほんの少し消化し、利用されます。
そして、消化できなかった物や腸内菌の残骸が便として排出されます。

愛犬の食べ過ぎに注意して、消化の良いフードを選び、おやつは消化の良いものを少しだけ与えましょう。

体内の酸化防止

酸化したフードを食べ続けていれば、マラセチアなどの真菌(カビ)の増殖を引き起こす原因にもなります。
体内の酸化物の掃除には、ビタミンCの摂取をお勧めします。

ビタミンCは、コラーゲンの生成にも不可欠です。
コラーゲンは、皮膚のハリを保つタンパク質として知られており、細胞と細胞をつなぐ「接着剤」として働いています。
コラーゲンが不足すると皮膚が老化し、ケガの治りも遅くなってしまいます。

食品からの摂取だけでは不足しがちなビタミンCですが、サプリメントで補給することもできます。
その場合、人工的に合成したビタミンC(アスコルビン酸)ではなく、天然のビタミンCを自然の栄養バランスを崩さないよう低温殺菌し微粉末化した天然のビタミンCを原料とした安心・安全なサプリメントを選びましょう。

また、太陽下で運動させることでストレスを発散し、紫外線により皮膚内部で天然ビタミンDが生成されます。
ビタミンDにも、体内の酸化物を掃除する効果があると考えられています。
砂糖は、ビタミンDにとって大敵ですので甘いものの採り過ぎにはご注意ください。

皮膚は腸を映す鏡

昔から、東洋医学では、「皮膚は腸を写す鏡」だと言われています。
皮膚をみればそのヒトの腸の状態がわかるという意味です

ヒトの場合、〝便秘=ニキビ・肌荒れ〟という考え方が知られていますが、これは、アレルギーとも深く関係しています。
そして、犬の場合にも、「皮膚は腸を写す鏡」という言葉が当てはまります

皮膚と腸の関係

犬は、ヒトと比べて身体の体積に対する皮膚(表面積)の割合が高く、体重の約15~20%を皮膚が占めると言われています。
しかしながら、犬には、肉球以外の皮膚からは発汗しないという特徴があります。

一方、犬の消化器の構成は、ヒトとほぼ同じです。
共に、腸に溜まった老廃物や毒素が腸壁から毛細血管に滲み出て、全身をめぐり、皮膚に現れる、という構造で類似しています。

犬の腸の長さは〝全長〟の約6倍です。
一般的には、ヒトの腸の長さは〝身長〟の5倍と言われていますが、犬と同じ四足歩行の状態(よつんばい)にした場合には、〝全長〟の約12倍となります。
ちなみに、肉食動物であるトラの腸は、全長の4倍だそうです。
犬は、1万5千年とも言われるヒトとの共生により雑食性に変化してきましたが、まだまだ腸の長さは肉食寄りだと考えられます。

犬は、ヒトよりも表皮のターンオーバーのサイクルが短く、季節の変わり目には「換毛」と呼ばれている被毛の生え変わりを繰り返しています。
表皮の角質や被毛は、「ケラチン」と呼ばれるタンパク質から作られています。
そのため、犬は、ヒトよりも多くの量のタンパク質を食事から摂る必要があるため、肉食寄りの身体の構造を持っているのだと考えられます。

アレルギーの概念

身体の中にある器にアレルギー物質(アレルゲン)をためていって、あふれ出た時が、アレルギー発症となると考えられています。
体の中の器は、大小さまざまで、器が小さいと1回摂取しただけで症状が出てしまうこともありますし、反対に、大きなバケツにほんの少しずつしか摂取しなければ、一生発症しないで済むこともあります。

たとえば、腸が元気でないときには、身体の中の老廃物や消化不良で溜まっている毒素を体内で処理しきれなくなり、皮膚から強制的に排出しようとして、アレルギー発症となる場合があります。

アレルギー改善の第一歩

愛犬のアレルギー改善の第一歩として、毎日の食事の中に、乳酸菌を積極的に摂り入れ、腸を健康にすることを始めましょう。
乳酸菌とは、発酵によって炭水化物を分解して糖類から多量の乳酸を産生し、悪臭の原因になるような腐敗物質を作らない乳酸を合成(乳酸発酵)する細菌類(微生物)の総称です。
ヨーグルト、乳酸菌飲料、そしてぬか漬け、納豆、味噌などの植物性の食品にも含まれている乳酸菌ですが、特定の菌種を指すものではありません。

乳酸菌の効果

料理好きの方なら、「お肉をヨーグルトに漬けておくと柔らかくなる」といったテクニックをご存じではないでしょうか。

では、なぜお肉をヨーグルトに漬けておくと、柔らかくなるのでしょうか。
お肉にはたんぱく質が多く含まれています。
一方、ヨーグルトに含まれる乳酸菌には、たんぱく質分解酵素である「プロテアーゼ」が含まれていて、この酵素がお肉のたんぱく質を分解して柔かくします。
これこそが、乳酸菌の効果です。

犬の体内には、「消化酵素」と呼ばれている酵素が存在します。
これは、体内に摂取した栄養素を分解して取り込み易くする働きをしています。
消化酵素には、たんぱく質を分解する「プロテアーゼ」の他にも、でんぷんを分解する「アミラーゼ」などがあります。

また、犬の体内には、「代謝酵素」呼ばれている酵素も存在しています。これは、吸収した栄養を体の様々なところに運ぶ役割を担っており、老廃物の排出や皮膚の新陳代謝など身体の様々な機能と関わっています。

そして、消化酵素と代謝酵素は、相関関係にあります。
これは、消化酵素を使い過ぎると代謝酵素が減り、代謝酵素を使い過ぎると消化酵素が減るという関係になっています。

乳酸菌に含まれるプロテアーゼが、たんぱく質の分解(消化)を助けてくれることで、体内に存在する消化酵素の利用を節約して、代謝酵素を増やすことができます。
そして、代謝酵素が増えると新陳代謝が促進され、皮膚のターンオーバーも活発になり、皮膚の健康維持や皮膚病の改善にも繋がっていきます。

プロバイオティクス

乳酸菌の中でも、「腸まで届く乳酸菌」として注目されている「プロバイオティクス」で、腸内環境を整えてあげることをお勧めします。
プロバイオティクスとは、他の病原微生物と拮抗することで、腸内フローラ(腸内菌叢)のバランスを改善し、有益な作用をもたらす生きた乳酸菌のことです。
つまり、お腹の腸内細菌のバランスを整え、腸内の異常状態を改善し、健康に良い影響を与えてくれる善玉菌です。

プロバイオティクスで腸内環境を整えることによって、免疫力が上がり、様々な愛犬の健康問題を予防し、アレルギーによる皮膚トラブルの緩和のみならず、その他の疾患の改善をも助けることが分かってきています。

愛犬のアレルギー対策には、薬や食事療法食(処方食)に頼る選択肢もあります。
しかしながら、直ぐにこれらの方法に頼るのではなく、愛犬の身体に負担を掛けずに、動物に本来備わっている自然治癒力を高めていくことが、アレルギー改善の第一歩です。

既に、アンティバイオティクスと呼ばれているステロイドなどの抗生物質を処方された副作用で、消化管の善玉菌が殺されてしまっている場合にも、プロバイオティクスの摂取が有効となります。

健康管理のバロメーター

皮膚のトラブルは、皮膚や被毛の状態などの外観からも見つけ易いため、愛犬の健康管理のバロメーターとして役立ちます。
また、普段とは少し違った愛犬の行動からも早期発見に繋げることができる場合もあります。

愛犬の行動観察

たとえば、季節の変わり目に、散歩中の愛犬が道端の草を食べて、草のツンツンした刺激で吐き出そうとしていることはないでしょうか。
もともと肉食動物である犬は、獲物の草食動物の胃の中の草から必要な栄養素や酵素を摂取していたため、何かしらの酵素を欲して草を食べてしまっている場合があります。

また、身体の一部をしきりに舐める、しきりに引っ掻く、しきりに噛む、そしてしきりに擦りつけるなどの行動をし始めたのに気づいたら、痒い、痛い、そしてストレスを感じているなど、皮膚に何らかの違和感があることを訴えている可能性があります。

これらの愛犬の行動変化に気づいたら、注意深く皮膚の状態を観察し、赤いブツブツができている、炎症を起こしている、フケのようなものがみられる、そして、はげている(円形脱毛症ができている)などの何らかの症状がないかを確かめてみましょう。
これらの症状がみられるときには、皮膚病を発症している可能性があります。
そして、その遠因として、消化器系疾患などのさまざまな病気が関係している場合もあります。

また、前足をしきりに噛む、しきりに肉球を舐めるという行動がみられるときには、ストレスが原因になっている場合もあります。
更には、これらの原因が重なって、複合的に影響している場合もあります。

すぐに原因を判明させるのは難しいですが、何気なく受け流してしまうのではなく、日頃から、かけがえのないワンちゃんの行動変化に目配りをして、ぜひ、愛犬の健康管理に役立てていきましょう。

皮膚・被毛の健康にはコレがおすすめ!

生きたまま腸まで届く乳酸菌 イーストスリム

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腸内にすみつきやすいフェカリス菌を使用。乳酸菌やビタミンB群をバランス良く配合。腸の健康を考え抜いたサプリメント。

発酵野菜パウダー 酵素パワー元気

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発酵野菜なので野菜の栄養をスムーズに吸収。繊維質が豊富で腸内環境のケアに適しています。

健康オメガ3オイル

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酸化しないオメガ3オイルで皮膚・被毛の健康維持

愛犬に生肉を与え続けて10年の川瀬隆庸が監修

株式会社帝塚山ハウンドカム
代表取締役 川瀬 隆庸

  • 社団法人 日本獣医学会 正会員 会員No.2010172
  • 財団法人 日本動物愛護協会 賛助会員(正会員)No.1011393
  • ヒルズ小動物臨床栄養学セミナー修了
  • 小動物栄養管理士認定
  • D.I.N.G.Oプロスタッフ認定
  • 杏林予防医学研究所毛髪分析と有害ミネラル講座修了
  • 正食協会マクロビオティックセミナー全過程修了

愛犬の健康トラブル・ドッグフード・サプリメントなどアドバイスをいたします。

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