「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
今回は良質なサプリメントはどんなものかについてお話させていただきます。
目次
ペットサプリメント
サプリメントとは本来「補足、補充」という意味です。
「不足している栄養素を補うもの」がサプリメントですので栄養補助食品とも呼ばれます。
食品の3つの機能
食品には3つの機能があります。食品であるサプリメントをペットに与える目的としては、食餌で不足している栄養素の補充(栄養機能)や老化などによって低下する身体機能の応援(調節機能)ではないでしょうか。
位置づけ
サプリメントはフードの1つとして健康の保持増進を目指すものです。
これに対して医薬品は疾病の治療・予防・検査を担うものです。サプリメントを利用する場面は「健康な状態」であり、医薬品では「病気の状態」となります。両者はスタートラインがまったく異なっています。
また法律的にもサプリメント(フード)はいわゆる「ペットフード安全法:環境省」、動物用医薬品は「医薬品医療機器等法:農林水産省」などにより規制されています。
ペットサプリメントの位置づけを誤解しないように注意しましょう。
ペットサプリメントの使用状況
利用率は?
マーケティング調査会社であるインテージが国内のペットサプリメント事情について報告しています(首都圏のペットオーナー1,000名対象 2013年)。
調査結果では愛犬へのサプリメント利用率は28.6%とのことでした。
利用目的は?
ペット保険のアニコムも同様のアンケート調査を実施しています(2010年)。
こちらでもペットサプリメントの平均利用率はおよそ30%、そしてその割合は加齢に伴い上昇しています(0歳で14.2%→9歳では38.4%)。
サプリメントを与える目的の上位5つは次のとおりでした。ペットの高齢化に伴う生活の質(QOL)の維持を目的とされているオーナーが多いことがよく判ります。
1位:関節ケア
2位:免疫力強化
3位:お腹のケア
4位:毛並み、毛づや]
5位:皮膚のケア
良質なサプリメント
良質なサプリメントに求められるいくつかの条件について「フードとしてのサプリメント」という点から考えてみます。
嗜好性(形状、味)
私たちヒトでは1度にいくつものサプリメントを飲んでいる方がいます。
しかしペットの場合、1つでも飲ませるのは一苦労です。飲んでくれたと思っていたら後で吐き出していたり、食道につまって炎症の原因になったり…。
薬と違いサプリメントは長期にわたる継続摂取が基本になります。ペットが嫌がらず毎日摂取するためには、自分から進んで食べてくれる形や味が一番大切な点です。
形状としてタブレットタイプよりは舐めやすい粉末や細粒のものがよいでしょう。
麻布大学獣医学部の阿部又信 氏がイヌとネコの味の好みについて次のように報告しています(1999年)。
イヌに比べてネコはとても味にはうるさいことが判ります。
サプリメントにとっても味は重要なポイントです。フードにふりかけたり混ぜたりした時にその味を変えないことが大切です。
犬 | 猫 | |
---|---|---|
○ | 甘味 | (感受しない) |
○(発酵) | 酸味 | × |
△ | 酸味 | × |
△ | 塩見 | △ |
× | 苦味 | × |
○:好む、△:好まない、×:嫌う
研究情報
私たちは現在の健康状態を保持増進させる目的でサプリメントを活用しています。したがって次の2点が前提となっていなければなりません。
①栄養成分Aが不足すると生活の質Bが低下する
②栄養成分Aを補給すると低下していた生活の質Bが回復する
この2点の研究情報がどれくらいそろっているかが良質なサプリメントに求められる2つ目の条件です。
研究情報といってもその信頼性にはいくつかのレベルがあります。
対象となるペット(イヌ、ネコなど)を用いた試験成績を元に発表された科学論文が多いほど、その栄養成分を含むサプリメントは有用であるといえます。
信頼度 | 学術情報の場合 | 試験成績の場合 |
---|---|---|
★★★ | 科学論文 | イヌなどの対象動物を用いた試験 |
★★ | 学会発表 | マウスなどの実験動物を用いた試験 |
★ | 専門家の話 | 実験室・試験管レベルの試験 |
品質(有害物質の検査
ペットサプリメントはフードですからいわゆる「ペットフード安全法」の規制対象になっています。
この法律においてペットフードは原材料中に含まれる農薬や汚染物質、添加物の上限値が設定されています。
最近のサプリメントは天然素材を主原料にしたものが多い様です。
しかし、逆に考えると農産物では農薬、魚介類では重金属(鉛、水銀、ヒ素など)などの有害物質が含まれている可能性も否定できません。
製造元による品質検査データの公開は良質なサプリメントの判断ポイントとなります。
アドバイザリースタッフ
今回のテーマ「獣医師が考える良質なサプリメントとは?」の条件として
①嗜好性
②研究情報
③品質
の3つを述べました。しかしペットオーナーのみなさんがこれらの情報を入手したり確認するのは難しいと思います。
このような場合、サプリメントのショップに説明をしてくれるスタッフがいたら心強いのではないでしょうか?
ヒトのサプリメントにおいて「アドバイザリースタッフ」という方々がいます。
民間団体での養成を受けて、「健康食品について消費者に正しい情報を提供し、身近で気軽に相談できる人材」をいいます。
アドバイザリースタッフは次のような仕事をされています。
・健康食品の適正な使用方法のアドバイス
・有用性や安全性についての学術情報の収集と解説
・健康と栄養に関する情報の提供 など
ペットサプリメントにおいてもオーナーの方に解りやすく情報提供ができ、親身な相談相手であるアドバイザーが増えることが望まれます。
これにより今後良質なサプリメントが普及してくると考えます。
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執筆獣医師のご紹介
本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。