獣医師が解説

【獣医師が解説】ドライフードという食事

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。

仕事柄、今どのようなフードが売れ筋なのかを調査するために、よくホームセンターのペットコーナーを訪問します。
今回はドライフードのメリットとデメリットについて話をしましょう。

ドライフード

ドライフードの水分量

フードの中でいわゆる主食にあたるものを「総合栄養食」と呼んでいます。栄養的にはこの総合栄養食と水を与えておけばOKというものです。ではフードにはどれくらいの水分が含まれているのでしょうか?フードをおよその水分量で分けると次のようになっています。

○ドライフード…10%
○ソフトドライ(セミモイスト)フード…25~35%
○ウェットフード…75%

私たちの食品でいうとドライフードはスナック菓子、ウェットフードはシチューといった感じになります。

ドライフードの利用率

みなさんは愛犬や愛猫にドライとウェットではどちらのタイプのフードを与えていますか?
ドライフードの利用率調査の報告がありますので見てみましょう(ペットフード協会2017年)。

市販のドライフード利用率はイヌではおよそ85%、ネコでは90%以上でした。
この結果は複数回答ですので、これらの中にはウェットフードも与えているという方々も含まれます。与えやすさ、日持ち、価格面などドライフードは大変便利なフードであるといえます。

ドライフードの製造方法

ではこのドライフードですが、いったいどのようにして作られているのでしょうか?
製造方法を簡単に説明しましょう。

製造のながれ

ドライフードはある程度の硬さがあるのでビスケットのように生地を型抜きして焼いて作っている、と思っている方が多いのではないでしょうか。

国内外の大手ペットフードメーカーでのドライフードの製造工程は次のようになっています。(もちろんこれとは別の方法で製造されているメーカーもあります。)

ざっくりとした流れとして「原料の混合」→「エクストルージョン」→「乾燥」→「冷却」→「コーティング」→「包装:完成」となっています。

エクストルージョン?

ここで聞きなれない言葉が出てきました。
エクストルージョンとは直訳すると「押し出し」という意味になります。

ドライフードは穀類、肉類、魚介類、ビタミンなどいろいろな原料から出来ています。
これらは粉状にされた後、ミキサーでよく撹拌されてエクストルーダー(加熱加圧押出機)という機械に運ばれます。

エクストルージョンとは次の3つの工程をいいます。

①加熱…水を加えて120~130℃くらいで加熱殺菌する
②加圧…圧力をかけて小さな穴のあいたプレートから押し出す
③成型…押し出した原料をカッターで連続カットする

エクストルーダーは巨大な「ところてんの押し突き器」といったイメージです。

カリカリ感

ドライフードをペットに与えるとカリカリッと音をさせて食べてくれます。
このカリカリ感やサクサク感はどこからくるのでしょうか?

先ほど、エクストルージョンの②加圧の工程で小さな穴のあいたプレートから押し出すと述べました。
この時、原料に含まれていた水分は高い圧力から開放されるため一気に水蒸気になります。
これによって加熱されたフードは膨張して、蒸気が抜けたあとが無数の穴になります。

このようにしてドライフードにカリカリ感が生まれます。

このようなカリカリ感の原理ですが、私たちの身近な食品に似たものがありますよね。
答えはスナック菓子の『カール』です。エクストルーダーは元々食品製造に幅広く活用されている機械です。

エクストルーダーのペットフード製造への応用は今から50~60年ほど前からで、フードの大量生産や加熱処理など様々な点において画期的な意味を持ったといわれています。

炭水化物の消化

ドライフードの原材料のうち、大きな割合を占めているものが穀類(炭水化物)です。
具体的にはトウモロコシや小麦がよく使用されています。
穀類はつなぎとして形状をつくる役割をしていますので、ドライフードには不可欠です。
ここではイヌやネコにとってのデンプンの消化について考えてみましょう。

デンプンは苦手

デンプンは炭水化物の1つであり、動物の大切なエネルギー源です。
これを利用するには消化酵素でブドウ糖にまでばらばらにしなければなりません。
ヒトの場合、まずは唾液中にあるアミラーゼという酵素で消化しますが、イヌやネコにはこの唾液アミラーゼがありません。

イヌやネコは口の中でデンプンを消化できないため、腸において膵アミラーゼという酵素ではじめてブドウ糖に分解して利用します。
これからも判るようにイヌやネコはあまりデンプンの利用が得意ではありません。

デンプンのα化

ドライフードには炭水化物(デンプン)が40~50%ほど含まれています。デンプンは頑丈な構造をしていて、そのままでは消化されにくいという特徴があります。
そこで考えだされたのが「水を加えて加熱する」という方法です。これによってデンプンの構造が緩まり、消化酵素が作用しやすくなります。この処理を「α(アルファ)化」とか「糊化(こか)」といいます。

「ごはんを炊く」ということは、お米のデンプンをα化して消化しやすくしているということです。同様にドライフード中のデンプンもエクストルーダーの中での加水加熱によってα化されています。

ではα化によりドライフード中のデンプンはどれくらい消化しやすくなっているのでしょうか?海外の試験報告がありますので見てみましょう(イリノイ大学Murrayら 2001年)。

●実験材料のデンプンはトウモロコシ、米、大麦、小麦
●これらのデンプンとイヌの腸の消化液を混合して5時間加熱した
●加熱処理により各種デンプンの消化率は大きく向上した

エクストルージョンという製造工程はドライフードの殺菌、膨化だけでなく、デンプンの消化率向上の役目も果たしているということになります。

ドライフードと飲水量

お菓子の『カール』を食べるとのどか乾きます。
同じように私たちのペットもドライフードを食べると水をたくさん飲みます。ここではフードと飲水量の関係について考えてみます。

フードと飲水量

イヌやネコにとって新鮮な水を自由に飲める環境は大切です。
一般的に必要とする飲水量は乾物フードの2~2.5倍といわれています。
(フード1gに対して水2~2.5mlという意味です。)しかし飲水量は気温や運動量、フードの種類によっても増減します。

ドライフードは水分量が10%前後ですので、ウェットフードに比べ飲水量は多くなることが想像されます。
しかしこれは本当でしょうか?ネコを用いたフードの種類と飲水量、尿量との関係を調べた興味深い報告がありますので概要を紹介します(帝京科学大学櫻井富士朗ら 2013年)。

●ネコ7頭(1~8歳)を試験に使用

●ドライフードを給与した場合
…少ないフード水分量+多い飲水量→合計の水分摂取量は少ない
…尿量も少ない(=濃い尿)

●ウェットフードを給与した場合
…多いフード水分量+少ない飲水量→合計の水分摂取量は多い
…尿量も多い(=薄い尿)

ネコとドライフード

以前の『愛犬・愛猫の腎臓疾患を考える』のコラムにおいて、ネコが腎臓疾患にかかりやすい理由を説明しました。

ネコは濃い尿を少ししか出さないため尿石症のリスクが高い動物です。従って予防のためには十分な量の水を飲ませたいと考えがちですが、大切なのは「飲水量」ではなく「体内に入る合計水分量」です。

櫻井らの報告によりドライフードを与えると確かにネコの飲水量は増えますが、体に入る合計水分量(=フード水分量+飲水量)は逆に少ないことが判りました。

ネコオーナーの90%以上はドライフードを利用されています。下部尿路疾患(FLUTD)や尿石症の対応には、ドライフードよりウェットフードの方が適していると考えられます。

メリットとデメリット

最後にドライフードのメリット、デメリットをまとめましょう。

メリット

フードメーカーにおいては多彩な原料を利用できることがあげられます。これにより、高齢ペット用や腎臓ケア用など多様に細分化された製品の開発製造ができます。
また大量生産や紙袋包装が可能なため、全体のコストダウンにつながっています。

ペットオーナーにおいては計量が簡単で開封後の日持ちがよい点が評価されています。
また今回は話ができませんでしたが、ウェットフードに比べて歯に付着しにくいため歯垢ケアにも好評です。

デメリット

デメリットとしてはどうしても炭水化物(デンプン)の配合量が多くなること、また嗜好性はウェットフードに劣る点などがあります。
しかし一番の注意点は飲水量の確保です。特にネコの場合はご注意下さい。

ドライフードは様々な知恵と工夫をもとに作られています。
オーナーのみなさんはメリットとデメリットをよく理解して、愛犬や愛猫の健康管理のために上手にドライフードを利用して下さい。

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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