獣医師が解説

【獣医師が解説】愛犬・愛猫になぜ尿石が多いのか?

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とにかく痛い病気ということで「胆石、すい炎、結石」の3つは「3大激痛」と呼ばれています(他にも諸説ありますが…)。今回のテーマは結石の1つである尿石症です。

尿石症の診療

結石と尿石

体の臓器や管の中にできる硬い凝固物を「結石」といいます。その中で泌尿器系にできる結晶状のものを「尿石(尿路結石)」と呼びます。

泌尿器系臓器には腎臓や膀胱などがありますが、尿石はできる場所によって腎臓結石、膀胱結石のように名前が付けられています。

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受診順位と手術順位

私たちのイヌやネコには尿石症の発生が多いイメージがありますが、実際にはどれくらいの順位なのでしょうか?

アニコム家庭どうぶつ白書2016年版によりますと、尿石症の受診順位はイヌで第26位、ネコでは第11位および21位です。これが手術順位になると次のようにグッと上がります。

●イヌ:膀胱結石(第10位)
●ネコ:膀胱結石(第3位)、尿石(第14位)

尿石症は手術処置を必要とするとても大変な疾病といえます。(調査頭数:イヌ456,822頭、ネコ65,305頭)

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尿石症の背景

次は尿石がどのような背景でできるのかを大きく4つに分けて見てみましょう。

ミネラルバランス

尿石は尿に溶けているミネラルが結晶化したものです。したがってこのバランスが崩れると尿石が形成されてしまいます。

具体的に尿石の材料となるものとしてはCa(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、P(リン)がその代表です。

飲水量の減少

飲水量が減少すると尿の量も減り中身は濃くなります。逆に飲む水の量が増えると薄い尿がたくさん出ます。たとえ尿石ができたとしても、小さいうちに尿と一緒に排泄すれば大事にはならないわけです。

飲水量が少なくなる場面としては水が冷たいとか水が汚いなどの他に、運動不足でのどが渇くことがあまりない事などもあります。

尿のpH

一般的にイヌの尿はpH7.4前後、ネコの尿はpH6.9前後ですので共に中性といえます。これがアルカリ性や酸性に傾くと、ミネラルの結晶化すなわち尿石が形成されやすくなります(くわしくは後ほど)。

その他

以上の他にも次のような大切なことがあります。

●尿石の核 …結晶化のきっかけ
●ビタミン不足 …特にビタミンA
●肥満 …脂肪の蓄積による尿路の狭窄

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尿石の材料

尿石はカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが主成分であることは間違いありません。しかしこれだけではなかなか結晶はできません。

突然ですがここで問題です。天然真珠を2つに割ると中には何が入っているでしょうか?答えは小さな砂粒です。

天然品でも養殖品でも、真珠は貝の中で真珠層というものが何層にも重なって丸く成長します。しかしその中心には「取り巻くきっかけとなる核」が必要です。天然真珠では貝の中に偶然に入り込んだ砂粒がその核になっています。

では尿石の核は何でしょうか?最も可能性が高いものとして、尿管や膀胱の内側の細胞があります。この細胞が剥がれて尿石の核になります。

尿道をさかのぼって膀胱に菌が侵入すると膀胱炎になります。膀胱内で菌が増殖すると、内側の細胞や免疫細胞が負けて剥がれて尿中に浮かんできます。この細胞が真珠の砂粒と同じ役目をはたして尿石が成長するわけです。

ミネラル

飲水量が減少して尿が濃くなったり、他の理由で尿中のミネラルバランスが崩れると核を中心として結晶化が始まります。このようにして出来上がった尿石の代表にストラバイトとシュウ酸カルシウムがあります。

ストラバイトならP(リン)やMg(マグネシウム)、シュウ酸カルシウムならCa(カルシウム)です。

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では代表的な2つの尿石ができる仕組みを説明しましょう。

ストラバイト結石

ペット雑誌を読むと「ストラバイトは尿のアルカリ化によってできる」とよく書いてあります。先程、イヌやネコの尿はだいたい中性であると述べました。ではなぜ尿がアルカリ性になるのでしょうか?

尿素分解菌

タンパク質を摂ると有害なアンモニアができます。アンモニアは肝臓で解毒されて無害な尿素というものに変わり尿中に排泄されます。(前回のおさらいです)

世の中にはいろいろな細菌がいるもので、尿素をアンモニアに変えるはたらきをする「尿素分解菌」と呼ばれるものがあります。この場合の尿素分解菌とは細菌の名前ではなく、「尿素を分解する酵素をもっている菌」という意味です。

この菌はペットの糞便中に何種類か存在し、また膀胱炎の原因菌でもあります。

アルカリ尿

尿素分解菌によって作られたアンモニアはアルカリ性を示します。そしてアンモニアはアルカリ尿の中で剥がれた細胞を核としてP(リン)やMg(マグネシウム)と一緒にリン酸アンモニウムMgという結晶を作ります。すなわちこれがストラバイトです。

このようにして尿がアルカリ性の場合、『核+アンモニア+ミネラル=ストラバイト』という関係が出来上がります。

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シュウ酸カルシウム結石

シュウ酸といっても私たちの生活にあまり馴染みはありません。料理をされる方では、山芋の皮むきで手が痒くなることがあります。これはこれから話を進める尿石と同じ成分のシュウ酸カルシウムの結晶によるものです。

シュウ酸(蓚酸)

シュウ酸はホウレン草やブロッコリー、タケノコなどに多く含まれています。これらは茹でると灰汁(アク)が出ます。シュウ酸の「蓚」とは「苦味、エグ味」とかいった意味です。

食品から摂ったシュウ酸はCa(カルシウム)と仲が良く、腸管内で結合します。そして通常は何の問題も無く糞便と共に体外へ排泄されます。

しかし脂肪分を多く摂り過ぎると、Caはシュウ酸よりも脂肪と結合してしまいます。これはシュウ酸と比べ脂肪の方がCaの親和性が高いためです。

ペアを組む相手がいなくなったシュウ酸は腸管壁から再吸収され、血液と一緒に体中をぐるぐる回り、そして尿中に移ります。

酸性尿

さて今回のポイントはここです。体液が何かの理由で酸性に傾くことがあります。これをアシドーシス(アシッドacid=酸)といいます。

体がアシドーシスになった場合、尿中のCa濃度が上昇します。するとシュウ酸は尿の中で大好きなCaと出会えてシュウ酸カルシウムという結晶を作ります。そしてこれがどんどん成長して尿石となります。

したがって尿が酸性の場合、『核+シュウ酸+ミネラル=シュウ酸カルシウム』という関係が出来上がるというわけです。

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愛犬・愛猫になぜ尿石が多いのか?は非常に問合せの多いテーマです。今回は尿石の形成として「核」に注目してみました。核の正体の一つに膀胱炎によって供給される「剥がれた細胞」がありました。

ここでもう一度、図「尿石症の診療理由順位」を見てみましょう。膀胱炎の受診理由はイヌで第8位、ネコでは堂々の第1位です。イヌやネコに尿石症が多い理由として、この膀胱炎の高い発生率があげられることは確かといえます。

次回は尿石症の再発防止策について考えます。

執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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