ペットとの散歩や外出が楽しい季節になりました。今回は少し先取りして「ペットの暑さ対策」について考えてみようと思います。
目次
熱中症の発生
熱中症予防とか暑さ対策なんて気が早いと思われていませんか?近年は5月のGW前でも夏日になることはそう珍しくありません。
発生しやすい季節
ペットの熱中症の発生時期はやはり夏場が主体になります。まずは診療統計を見てみましょう(アニコム家庭どうぶつ白書 2015年)。
6月~9月の初夏から盛夏の時期に全体の90%近くが集中しているのが判ります。私たちペットオーナーは、5月にはその準備に入っておく必要があるということになります。
発生しやすい場所
ヒトの熱中症は、炎天下での野外スポーツや仕事中によく起こるというイメージがあります。ペットではどうでしょうか?
イヌの場合、散歩中の発生率が全体の50%、リビングでのそれはほぼ同じく45%という報告があります(アニコム 2013年)。なお、ヒトでは40%が住宅内、次いで24%が道路や交通施設において発生しているとのことです(東京消防庁 2014年)。
このようにヒトと同様にペットでも部屋の温度管理は、熱中症予防において非常に大切であることが改めて判ります。
外出時の対応
みなさんは夏場の外出でペットに留守番をさせる時、部屋の温度管理はどうされていますか?空調機器メーカーのダイキン工業が次のようなアンケート調査を行いました(2013年)。
・アンケートのテーマ
「人間とペットが共存する室内環境と空気の課題」に関する意識調査
・対象
全国の室内でペットを飼育しているオーナー600人(20~70代男女)
調査の結果、夏場に外出する際にペットのいる室内に対して76%のオーナーが何かしらの対策を実施していると回答しています。この中でエアコンをつけているというオーナーは全体のおよそ30%でした。
また扇風機を利用する方もおられまました。しかし扇風機やサーキュレーターは空気を循環させるだけで、部屋の温度を下げる効果はありませんのでご注意下さい。
今や閉め切った部屋でペットに留守番をさせる際には、適正温度でのエアコンの利用は必須となっています。この場合、設定温度の目安は25~28℃くらいが良いでしょう。
パンティングと飲み水
呼吸数
愛犬が暑さストレスを感じていたらどのような反応を見せるのかを知っておくことは大切です。一番に思いつくのは「パンティング」です。
パンティングとは1分間に200~400回頻度で行う、浅く早い開口呼吸のことをいいます。暑さストレスの他に運動後にもよく観察されます。
イヌは室温がどれくらいになるとパンティングを行うのかという実験報告がありますので紹介しましょう(鹿児島大学 藤田省吾ら 1980年)。
・供試動物
実験用ビーグル犬5頭(12~15か月齢)、自由飲水
・室温条件
13、23、33℃(湿度50~70%)の室温環境で10日間観察
イヌの標準的な呼吸回数は20~30回/分です。室温13℃と23℃ではこれをやや下回る結果でしたが、室温33℃においては翌日に277.3回/分、10日目には336.0回/分まで増えていました。室温が30℃を超えるとパンティングが確認されるようです。
体温
パンティングを行うということは、おそらく体温も上昇しているのだろうと思われます。しかし、この実験結果ではどの室温条件でも10日間の体温は標準体温(38~39℃)の範囲内でした。
室温33℃というと真夏で冷房を入れていない閉め切った室内といったイメージです。このような厳しい環境下でも、今回のビーグル犬はなんとか体温調整を行っていました。
イヌは全身からの汗をかくことができない代わりに、湿気を含んだ呼気を吐き出して体温を低下させています。もうお判りのように、パンティングによる体温調整には十分な飲み水が必要ということです。
夏場の散歩
イヌの熱中症のおよそ半分は散歩中に発生しています。しかし、いくら暑くても健康管理として散歩には連れて行きたいものです。最後に夏場の散歩と暑さ対策の注意点を確認しておきましょう。
輻射熱(ふくしゃねつ)
散歩をする場合、「ヒトとペットは体感温度が違います」とよくいわれます。私たちヒトの顔の高さよりもペットは地表面に近いため、「地面から伝わる熱=輻射熱」の影響が大きいというものです。
この輻射熱によって真夏の散歩中、ペットはヒトより少なくとも+10℃以上の温度を感じていると考えられます。
天気の良い日で外気温が25℃くらいなら、ペットの体感温度は35℃以上ということです。それでは夏場の散歩や遊び場としてはどこが良いのでしょうか?
散歩場所の暑さ指数
ヒトの熱中症対策の一つとして「暑さ指数」というものがあります。これは気温と湿度と輻射熱をそれぞれ10%、70%、20%の割合で加味して、いろいろな環境の暑さを数値化したものです。
夏の晴天時で5か所のいろいろな場所でこの暑さ指数を測定した調査結果があります(和歌山大学 山田宏之ら 2000年)。
樹木の日陰を基準として比べた時、最も暑さが激しいのがアスファルトの道路、比較的過ごしやすいのは芝生でした。愛犬の散歩や外での遊び場としては、やはり草や芝生があり地面からの熱の伝わりが優しい公園などが適しています。
また、水田のあぜ道が意外と高い値でした。これは湿度が大きく関係しているためです。地面からの輻射熱に加えて湿気にも気を配りましょう。(暑さ指数は湿度割合を70%で計算します)。
住宅街vs幹線道路
愛犬を連れて自宅から涼しい公園まで行くのに次の2ルートがある場合、みなさんはどちらを選びますか?
Aルート:住宅街や商店街を通って公園へ
Bルート:自動車の交通量が多い幹線道路沿いを通って公園へ
千葉工業大学の河野恭佑らは、同じアスファルトの地面上の暑さ指数を比較した結果、幹線道路沿いよりも住宅街・商店街の方が高い値であったと報告しています(2017年)。
意外な感じがしますが、この結果のポイントは住宅や商店のエアコンの室外機でした。ここから排出される熱や水蒸気が暑さ指数をアップさせていました。
愛犬の体高は室外機の高さとちょうど同じくらいです。私たちヒトよりも散歩中のイヌは、室外機からの熱気や湿気を直接受けてしまうことになります。
夏場の公園までの散歩コースとしては、できるなら住宅街や商店街を避けるのが良いでしょう。
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ヒトとペットは同じ環境で生活しています。夏場では両者は同じように暑さにさらされますが、ペットの場合は室内・室外共にヒトよりもダイレクトに暑さストレスを感じています。オーナーのみなさんは動物の特性をよく理解して、早めの暑さ対策をスタートしてあげて下さい。
執筆獣医師のご紹介
本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。