ペットとの生活に関する記事

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「ブレインフード(3)ビフィズス菌」

ヒトもペットも生き物ですから年をとることは避けられません。しかし加齢による記憶力や認知機能の低下はさまざまな工夫により、ある程度抑制できることが判ってきました。脳の健康維持を応援するブレインフードとして、今回は乳酸菌の仲間であるビフィズス菌を取り上げます。

【腸内フローラと健康】

大腸に棲む多種多様な腸内細菌の集まりを腸内フローラ(腸内細菌叢)といいます。私たちヒトはもちろんペットにおいても、腸内細菌は健康状態に深く関わっています。

腸内細菌の健康機能

腸内細菌がもつ健康機能と聞いてまず頭に浮かぶのは、下痢や便秘といった便の状態(腸管機能)です。また腸内細菌の中には食物繊維を消化発酵するものがあり、肥満との関係も確認されています(代謝機能)。さらには冬に見かける機会が増えるのが乳酸菌による免疫力アップのCMです(免疫機能)。

テレビや雑誌で腸内細菌が体の免疫力と関係があるという話を見た時はけっこうな驚きでしたが、現在さらに大きな話題となっているのが脳機能への影響(脳神経機能)です。もはや腸内細菌の活躍の場はお腹だけではありません。

脳腸相関

脳(精神状態)と腸が密接に関係しているという考え方を「脳腸相関」といいます。判りやすい例では緊張・ストレスを感じるとお腹が痛くなるといったもので、皆さんも経験があると思います。

この影響の方向は脳→腸だけでなく、逆に腸→脳という場合もあります。近年この脳腸相関の考え方を元に、腸内環境を整えることによって認知症の進行を抑制するという研究が進んでいます。

【認知症と腸内細菌】

アルツハイマー病は認知症の1つであり、脳にアミロイドβという物質が蓄積し、少しずつ脳が萎縮してゆくことがよく知られています。アルツハイマー型認知症における脳神経機能の低下には、この2つが背景にあります。

アミロイドβの蓄積

脳へのアミロイドβ蓄積が起こりやすく、認知機能が低下するアルツハイマー型認知症のモデルマウスがいます。このマウスを使い腸内細菌と認知症の関係を明らかにした報告があります(海外文献 2017年)。

認知症モデルマウスの脳に沈着するアミロイドβ量を基準値100とした時、このマウスの腸内細菌を取り除くと沈着量はおよそ20に減少します(無菌処置)。次に無菌処置したマウスに通常の老齢マウスの腸内細菌を移植すると約50に、そして再び認知症モデルマウスの腸内細菌を移植すると沈着量は約80まで戻ってしまうという試験結果が得られています。

どうやら認知症の背景にある脳へのアミロイドβ蓄積には腸内細菌が深く関与しているようです。同時に腸内フローラを良い方向へ持って行けば、認知症の進行を抑えられるのでは?とも考えられます。

ビフィズス菌とアミロイドβ

腸内フローラを改善するする方法として、ヨーグルトなどの乳酸菌食品の摂取があります。乳酸菌とは1種類の菌の名前ではなく、発酵により乳酸を産生する細菌の総称です。よく聞くところでは乳酸桿菌(ラクトバチルス)や乳酸球菌(ラクトコッカス)がありますが、ビフィズス菌もその仲間です。

ビフィズス菌摂取による記憶力/認知機能の改善の可能性を探った実験報告があります(道川 誠ら 名古屋市立大学 2022年)。アルツハイマー型認知症モデルのマウスにビフィズス菌(MCC1274)を4か月間投与した群と生理食塩水を給した対照群の脳に沈着するアミロイドβ量を比較しました。

対照群マウスの脳に沈着したアミロイドβの面積割合を100として、ビフィズス菌投与群マウスの値を算出すると約80まで減少していました。実験では記憶を担当する海馬という部位のアミロイドβ沈着量を測定しています。この結果からビフィズス菌(MCC1274)にはアミロイドβの蓄積を抑え、認知症の記憶障害を改善する作用があると期待されています。

【ビフィズス菌の脳機能改善作用】

認知症はある日突然発症するものではありません。実際には症状が確認されるまでの前段階があり、記憶力や認識力の低下徴候がみられます。この期間をMCI(軽度認知障害)といい、アミロイドβの蓄積と脳萎縮が少しずつ進行します。ではMCI患者に対するビフィズス菌の作用を見てみましょう。

脳萎縮を緩やかに

MCIの疑いがある65~88歳の高齢者にビフィズス菌(MCC1274)を24週間摂取してもらう試験群とプラセボ群に分け、脳萎縮進行度を比較した報告があります(Asaokaら 順天堂東京江東高齢者医療センター 2022年)。

24週後の脳萎縮領域の変化割合を見ると、プラセボ群+0.16、試験群-0.07となりました。すなわち、プラセボ群は脳萎縮が少しずつ進行していたのに対し、ビフィズス菌(MCC1274)を摂取した試験群ではこれが抑えられていました。

記憶力を応援

アミロイドβ蓄積や脳萎縮が抑えられるのは心強いことですが、日常生活においては具体的な脳機能、特に記憶力の改善が気になるところです。MCIの疑いがある50~80歳の中高齢者をプラセボ群(40人:平均年齢60.9歳)とビフィズス菌(MCC1274)を16週間摂取する試験群(40人:平均年齢61.3歳)に分けて脳機能検査を行ったデータを見てみましょう(森永乳業㈱ 2020年)。

検査では記憶、空間認識、言語、注意の項目があり、この中で両群において有意差が確認されたのは記憶と空間認識でした。検査項目の記憶にはその場で聞いた言葉をすぐに思い出す「即時記憶」と一定時間経過後に思い出す「遅延記憶」の2つがあり、両方において16週後の検査スコアの改善が大きかったのはビフィズス菌摂取グループでした。

認知機能を改善

上記の検査結果では特に記憶の向上が確認されましたが、空間認識、言語、注意を加えた総合評価でも試験群の方が良好な成績となりました。以上より、認知症発症前のMCI患者に対してビフィズス菌(MCC1274)は脳の認知機能を改善・向上させることが期待されます。

今回紹介した試験結果はビフィズス菌(MCC1274)を使用したものでした。この「MCC1274」とは株名(=固有番号)のことであり、同じビフィズス菌でも株名が違えばその遺伝子や能力は異なります。しかしMCC1274以外にも同様の作用をもつ株がある可能性は考えられるため、ビフィズス菌は脳の健康に役立つブレインフードであるといえるでしょう。

加齢に伴う脳機能低下対策としてブレインフードを活用するのは科学的に意味があります。ただしこれを治療目的として認知症発症後に利用を開始しても期待は低いと思われます。ヒトの場合、脳へのアミロイドβ蓄積開始から認知症発症まではおよそ20年といわれます。やはり、ヒトもペットも若い頃からの予防という考え方が大切です。

(以上)

・乳酸菌で腸内環境を整え、健康なうんちに
・消化不良に
・免疫力をサポートして強い体の維持
・口臭・歯周病に
・皮膚被毛を健康維持に


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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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