ペットの健康を守りたい、というのはオーナーすべての願いです。そのためには食事、運動、生活環境、定期検査などの各種ケアが大切ですが、中でもフード食材の安全性は重要視されています。今回は安全で健康に寄与するとされる有機食材・オーガニック食材について考えます。
目次
【ペットフードのキーワード】
スーパー、ドラッグストア、そしてネットショップのサイトを見るとさまざまなペットフードが並んでいます。この中で皆さんの購入の決め手となるキーワードは何でしょうか?
テーマの変遷
日本でドッグフードが発売開始されたのは1960年ということです。それから現在まで60年以上の間に様々な商品が開発・販売されてきました。その中でフードは大きく次の3つのテーマで発展してきたと分析されています(石橋佳法 北海道大学 2012年)。
まず1つめは1960~70年で「市販フードの開発」です。発売当初はマッシュ(粉末)でしたが、後にペレットタイプになりました。2つ目のテーマは1980年頃からのペットブームに対応した「美味しさ」です。原材料に牛肉や鶏肉を使い、そしていかに食べやすくするかという点から小粒にしたり、やわらかさの改良が進みました。
3つ目のテーマはこの20年ほどの「細分化・プレミアム化」です。フードは犬種別、体格別(小型犬用/大型犬用)というように分かれてゆきました。また肥満、整腸、アレルギー対策、関節強化などのように目的化されました。現在では健康・長生きを目指し、国産食材や有機/オーガニック食材を採用した安全性の高いプレミアムフードが登場しています。
3つのキーワード
ペットフードに関するアンケート報告があります(アニコム 2009年)。これによると与えているフードの種類では39.3%のオーナーが市販フード、対して手作りフードは16.7%とのことです。またフード選びで重要視するポイントでは原材料、栄養バランス、原産国がトップ3です。
次に手作り派オーナー343人へ自分でフードを作る理由を尋ねると、自分で作ると安心(59.8%)、ペットの健康に良い(52.8%)、市販フードより手作りの方をよく食べる(40.8%)と回答しています。
このようにペットの食事に関しては市販フード、手作りフードに関わらず「安心・安全・健康」がキーワードになります。ではこの3つに貢献する食材としては何があるでしょうか?それが先ほどフードのプレミアム化で登場した有機/オーガニック食材です。
【オーガニック食品】
オーガニック食品とは有機農業によって栽培された食材、またはその食材で作られた加工食品という意味です。近頃スーパーには有機野菜やオーガニック食品のコーナーがあったり、街では自然食品専門店といったお店を見かけます。
有機野菜の印象
20代から60代の男女合計1,000人に「有機野菜に対してどのような印象をもっていますか?」と尋ねた報告があります(国際環境NGO グリーンピース・ジャパン 2016年)。結果では安全(58.0%)、健康に良い(56.7%)、環境にやさしい(28.6%)がトップ3、この他に美味しい、新鮮と続きます。
このように私たちは有機野菜・オーガニック野菜に対して安全・安心という強いイメージをもっているようです。
食べる頻度
最近、見聞きする機会が増えたオーガニック食品ですが、実際皆さんは週に何回くらい食べていますか?農林水産省が令和元年に実施した「有機食品等の消費状況に関する意向調査」によると、オーガニック食品をほとんど毎日食べるという回答は5.9%でした。
これに続き、週に2~3回 程度(12.1%)、週に1回程度(16.7%)、月に2~3回程度(18.4%)、月に1回程度(12.9%)となっています。そして最も割合が多かったのは月に1回未満で全体の34.0%でした。現在、気になる存在であるオーガニック食品ですが、実際の飲食頻度はさほど多くはありません。
食べるきっかけ
次はオーガニック食品を初めて飲食したきっかけについてです。これには広告や家族の購入、知人の勧めなどがありますが、トップの回答は自分や家族が病気にならないため(22.6%)です。なお、この回答をほぼ毎日オーガニック食品を食べるとした人に限定して集計すると41.5%にまで上昇します。
他に割合は小さかったものの自分や家族がアレルギー疾患・病気になったため(5.6%)という回答もありました。健康管理という点において、私たちは有機食品・オーガニック食品に対して大いに期待していることがよく判ります。
【有機JAS制度】
「有機○○」とか「オーガニック□□」と銘打った商品を目にします。皆さんはこの有機やオーガニックという表示を使用するには国の決まり事があるのをご存知でしょうか。
有機JASマーク
事業者が勝手に有機/オーガニックという言葉を使うと消費者が混乱してしまいます。そこで農林水産省は定められた栽培ルールに則った有機農業で作られた生産物にのみ有機/オーガニックという表示を使用許可しています。
第三者機関である登録認証機関から栽培ルールの適合検査を通過した生産物には有機JASマークが付与され、「有機○○」「オーガニック□□」の表示ができるという仕組みです。これが有機JAS制度です。
有機JAS生産物
有機JASマークは国が定めた正当な有機/オーガニック食材の目印です。イメージとして有機JAS=野菜・果物といった感がありますが、実際には有機農産物、有機加工食品、有機飼料、有機畜産物、有機藻類といった規格があります。
もう少し具体的に紹介しましょう。有機農産物とは野菜、米、茶葉、果物などです。これらの農産物を原材料に作られたものが有機加工品で豆乳、豆腐、みそ、しょうゆ、茶系/野菜飲料があります。また有機畜産物とは有機飼料(牧草、大豆、トウモロコシ)を食べた家畜から生産された生乳や卵のことです。
有機JAS農産物の内訳
有機/オーガニック食材には意外と多くのものがあります。この中で有機農産物の生産内訳を見てみましょう。農林水産省令和3年度の報告によると全体の60.4%を占めているのは野菜です。そして米(12.0%)、緑茶(11.2%)、果物(3.8%)、大豆(1.8%)と続きます。
このように有機JAS農産物のおよそ90%は野菜、米、緑茶(茶葉)です。今後はこれらの他に果物や牛乳、卵の生産量ももっと増えて欲しいと思います。
野菜や米、果物、牛乳、卵といったフード原料としてお馴染みの食材には有機JASマークが付いたものがあります。手作りフード派の皆さんは一度試してみてはいかがでしょうか。次回は有機/オーガニック農産物の美味しさ、栄養価について紹介します。
(以上)
執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。