獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編:テーマ「エシカルなペットライフ」

新しい年を迎えました。皆様いかがお過ごしでしょうか?年末年始は何かと買い物が増える時期で物価高の中、少しでも安くて良いもの探したいものです。このような今日の生活において「エシカル消費」という考え方が広がりつつあります。

【エシカル消費とは】

気が付けば近頃、「サステナブル」「ジェンダー」「ヴィーガン」などカタカナワードが蔓延していますが、その1つに「エシカル」という言葉があります。エシカル(ethical)とは「倫理的な、良識的な」といった意味です。

3つのカテゴリー

エシカル消費とは「良識的に作られた物品を購入・使用する行動」というものです。値段や機能だけでなくその商品がどのような経緯で作られたのかも加味して消費しようという考え方です。そしてその経緯には「人・社会、環境、地域」の3つのカテゴリーがあります。

少し具体的に説明しましょう。「人・社会」とは、国内外を含め適切な賃金の元で製造された商品(=不当に安い労働力により作られたものではない)というものです。「環境」は農地や海、大気などの自然環境を損なわずに収穫・製造された商品、「地域」は地産地消・地域を応援する消費というものです。

エシカル消費の認知度

言われてみると、これら3つのワード「人・社会、環境、地域」と商品との関わりについては近頃ニュースでよく聞きます。では今回のテーマであるエシカル消費という言葉はどれくらいの人が知っているでしょうか?

消費者庁が全国の15歳以上の男女5,000人を対象に行った消費者意識調査(令和6年)というものがあり、この中でエシカル消費についての認知度を報告しています。言葉もしくは内容、言葉/内容共に知っているとする回答は全体の27.4%でした。前年は29.3%、前々年は26.9%でしたので認知度としては横ばい状態の25~30%といった現状です。

拡がるエシカル消費

まだまだパッとしないエシカル消費ですが、私たちは気付かず何気なく実行しています。同じく消費者庁の調査ではエシカル消費を実践している人の割合(よく実践している+時々実践している)は36.1%でした。年代別では10歳代(32.7%)、60歳代(41.2%)、70歳代(48.1%)が比較的高くなっています。

また別のアンケートによると、人や環境に優しい消費活動として購入しているものでは地元の産品(46.5%)、産直商品(33.1%)、オーガニック食材(14.4%)という回答がありました(日本生活協同組合連合会 2021年)。

前回紹介した有機/オーガニック食材の購入はこのエシカル消費の1つであったということです。このように私たちの生活の中にエシカル消費は少しずつ浸透してきていることが判ります。

【エシカル消費の関心度】

日々の生活の中でSDGsという言葉や文字を見ない日はありません。SDGsとは2015年の国連で採択された「持続可能でよりよい世界を目指す17の国際目標」というものです。エシカル消費はこのSDGsとも深く関連しています。

SDGsとの関連

持続可能な社会を目指すために設定されている17の目標の中には、エシカル(倫理的・良識的)な消費行動とリンクするものがあります。判りやすいところでは「目標2:飢餓をゼロに」、これは食品ロス/食材ロスの削減につながります。また「目標3:すべての人に健康と福祉を」では有機/オーガニック食材の栽培・利用促進、「目標11:住み続けられるまちづくりを」では省エネやゴミの削減が該当します。

これらの他にも「目標12:つくる責任 つかう責任」「目標14:海の豊かさを守ろう」「目標15:陸の豊さを守ろう」などもエシカル消費に大きく関係しています。

高まる関心度

エシカル消費はあらゆる産業において意識され始めています。例えば日用品、衣料品、家電、自動車、エネルギーなどですが、最も身近なジャンルとして食品があります。エシカルな取り組みをしている食品関連商品の購入経験について調べた報告結果を見てみましょう(㈱電通 2022年)。

全国の10〜70代の男女合計2,500人の回答によると購入経験あり(51.2%)、購入意向あり(75.2%)となっています。これを同じ質問を行った2年前のデータと比較すると、購入経験は14.0ポイント増、購入意向は27.4ポイント増となります。

私たちは衣・食・住において毎日さまざまな消費を行っています。その中で「食」に関するエシカル消費は特に関心が高まってきていることがよく判ります。

【エシカルなペットフード】

では最後にペットとの生活におけるエシカルな行動を考えてみましょう。ペットにとっての衣・食・住でその中心となるのは食=ペットフードです。そして手作りフード派の方では食材の購入と調理にエシカルという考え方が関係してきます。

家庭から出る食品(食材)ロス

フードの食材選びでは地元食材の利用や有機/オーガニック食材の活用があります。そして調理においては今日大きなテーマになっている食品(食材)ロスとゴミの削減があてはまります。本来は食べることができるのに廃棄される食べ物が食品(食材)ロスですが、これを見直す事により排出されるゴミの量も減ります。

令和4年度農林水産省の報告では年間472万トンの食品(食材)ロスが発生しているとのことです。このロスは発生由来により大きく事業系と家庭系の2つに分けられます。事業系とは製造業や小売業、外食産業などの会社から出されるもの、家庭系とは食事や調理時に発生するものをいいます。

ここで意外なデータを紹介しましょう。1年間に排出される食品(食材)ロスの半分は家庭から出ており、そしてその約1/3は食材の過剰除去によるものです(環境省 平成30年報告)。

家庭に由来する食品(食材)ロスは、直接廃棄:賞味期限切れなどより廃棄されるもの、過剰除去:野菜/果物の皮など食べられない部分を除去する際に過剰にカットされる部分、そして食べ残しの3つから成ります。あまり意識されませんが、この過剰除去が食材ロスの多くを占めているのです。

食材の過剰除去

食材の過剰除去とは具体的には野菜や果物を厚く剥いた皮やヘタ、葉や太い芯部分などをいいます。2021年に生協が行った食品(食材)ロスを削減する家庭内の取り組みは?というアンケート結果では、必要な分だけ購入する(58.9%)、なるべく家にあるもので献立を考える(56.6%)、食べ残さないように作る分量など工夫をしている(46.7%)というのがトップ3でした。

そして順位は少し下がって、野菜の皮や茎など食材は無駄にせず使い切る(42.6%)という回答があり、これがちょうど過剰除去対策にあたります。このように私たちは家族やペットの食事作りの時に直接廃棄、過剰除去、食べ残しの3つの家庭から出る食材ロスを減らす工夫を実践できます。

近頃は市販のペットフードにおいて材料にこだわったものがたくさん出回っています。その代表が国産食材、有機/オーガニック野菜などです。これらは安心感や健康という点がアピールされていますが、広い目でみるとエシカル(倫理的・良識的)という意味も含んでいます。

これからはペットとの暮らしに関しても「人・社会、環境、地域」への貢献が求められてきます。次回はもっとも簡単なエシカルな行動として、手作りフードの調理時に出るゴミの削減について考えます。

(以上)

執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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