獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「バナナをクッキングしましょう」

バナナの魅力について話をしています。バナナは私たちが最も食べている果物No.1の地位を20年間キープしています。また運動時のエネルギー補給食としても人気が高く、育ち盛りのペットにも食べさせたい果物です。

【目新しいバナナ】

バナナは通年輸入されているため、常にスーパーに並んでいます。このバナナ、よくよく見るとちょっと気になるラベルが貼られたものがあります。

クッキングバナナ

朝食やおやつとして手軽に食べられているバナナですが、私たちがいつも食べているのは生食用の「デザートバナナ」です。これとは別の種類で加熱調理して食べる「クッキングバナナ」というものがあります。

 東京税関の報告によるとデザートバナナの年間輸入量は約100万トンです。対するクッキングバナナは2016年(640トン)、2021年(1,000トン)とおよそ1/1,000の量しか流通していません。バナナの種類は1,000種以上あり、世界のバナナ生産量に占めるクッキングバナナの割合は4割程度もあるということです。海外でバナナは料理食材としても広く利用されているようです。

高地栽培種バナナ

スーバーやコンビニに並ぶデザートバナナの中に「高地栽培種バナナ」とか「スウィーティオバナナ」とラベルされたものを見かけます。通常のバナナは平地で栽培され10カ月程度で収穫・輸出されますが、高地栽培種バナナとは標高500~800mの山の中で1年以上かけて育てられるものです。

高地栽培種バナナは育成期間が長く、収穫後の輸送コストがかさむことから値段は高くなります。反面、標高が高いと気温差が大きくなるためその分、甘みが増すとされます。通常のデザートバナナに付加価値を付けたものが高地栽培種バナナということです。

食べ比べの結果

より甘いという触れ込みの高地栽培種バナナですが、食べた時本当に甘いのでしょうか。20~80代の男女消費者173人をモニターとして、従来種のバナナと食べ比べをした報告があります(飯島久美子ら お茶の水女子大学 2005年)。

結果は普段食べている従来種バナナを好ましいと答えた人は全体の23%、高地栽培種バナナを選んだ人は40%、違いを識別できなかった人37%となりました。では高地栽培種バナナの方が好きと回答した40%の人達はどのような味や食感に魅力を感じたのでしょうか?

【好みのバナナはどちら?】

食べ比べ試験の続きを見てみましょう。従来種を選んだ40人と高地栽培種を選んだ68人にそれぞれのバナナを好ましいと答えた理由を選んでもらいました。

味のちがい

まず味に関して確認しましょう。従来種バナナで回答率が高かったものには甘い(16.1%)、さっぱりしている(14.1%)、甘すぎない(11.2%)がありました。対する高地栽培種バナナでは甘い(21.1%)、味が濃厚(15.3%)、香りが良い(12.7%)が高い回答を得ていました。

バナナですのでどちらも甘いという回答が多いのは当然ですが、触れ込み通り高地栽培種の方がより甘いと評価されていました。

食感のちがい

食べた時の食感が良いという回答は従来種が15.1%、高地栽培種では15.9%とほぼ同率でした。ではこの食感について詳しく見てみましょう。それぞれのトップの回答は、従来種バナナは軟らかい(25.7%)、高地栽培種バナナでは硬い(50.0%)でした。これに加えねっとり/なめらかという評価はほぼ同じ、もしくは従来種の方がわずかに高いという結果でした。

以上、味と食感の評価をまとめると従来種バナナは「軟らかくあっさりとした甘さ」、高地栽培種バナナは「硬く濃厚な甘さ」となります。オーナーの皆さんはペットの年齢/噛む力、味の好みに合わせてこの2種類のバナナを選んではみてはどうでしょうか。

【糖度をアップさせる方法】

バナナは青い状態で収穫され、そのまま日本に輸送されます。到着後は室(むろ)という温度・湿度が管理された熟成室で数日間保管され、ここで黄色に変わります。この間バナナの炭水化物は糖に置き換わり、甘いバナナになります。

追加熟成

バナナは室(むろ)の中で熟成させます。では私たちがお店で買ってきたバナナをすぐに食べず、もう少し置いておくとさらに甘くなるのでしょうか?この追加熟成の実験を行った報告があります(伊藤聖子ら 弘前大学 2013年)。

市販の2種類のバナナ(従来種、高地栽培種)を室温で追加熟成させ、可食部100gの糖含有量を測定しました。実験開始時の全糖量は従来種(7.5g)、高地栽培種(9.6g)と差がありましたが、追熟期間が進むにつれて共に糖量は増加し、5日目には従来種(12.1g)、高地栽培種(12.6g)とほぼ同等になりました。

購入後の追熟により従来種バナナは約60%、高地栽培種バナナは約30%の糖度アップが得られることが判りました。ただし5日間以上の追熟は皮の黒ずみ、果肉のくずれなどの傷みが進みます。みなさんもバナナをもっと甘く食べたい時は、この期間内で追加熟成させると良いでしょう。

焼き調理,/h3>
冒頭でクッキングバナナを紹介しました。日本では馴染みがない調理用のバナナですが、普通に食べているバナナ(=デザートバナナ)も加熱することで糖量はアップします。従来種バナナと高地栽培種バナナを180℃のオーブンで20~40分間加熱調理し、可食部100gあたりの全糖量を比較しました。

結果は元々甘みが強い高地栽培種はほぼ変化はありませんでしたが、従来種バナナでは糖度の上昇が確認され、調理前12.0gが30分間焼き調理では12.8gにアップしました。

蒸し調理

海外でのクッキングバナナの調理法には直火で焼く、油で揚げる、茹でるなどがあるそうです。そこで次の加熱調理実験ではバナナを蒸してみました。2種類のバナナを蒸し器に入れ、10~30分間蒸しました。実験では全糖量は10~20分間では上昇しましたが、30分間蒸すと逆に低下することが確認されました。

この理由はバナナの炭水化物は加熱により糖に変わりますが、加熱が続くと生成された糖がアミノ酸と結合してしまうためと考えらました。この変化はアミノ・カルボニル反応(またはメイラード反応)と呼ばれるものです。加熱により糖度が増すバナナですが、ちょうど良い時間を過ぎると逆に甘みは低下するため注意が必要です。

以上より、そのまま食べる一般のデザートバナナは加熱調理することで糖度がアップすることが判りました。加えてこの時の調理方法は焼き(30分間)よりも蒸し(10~20分間)の方が効果的でした。これは蒸し器を用いることで、より速くより全体に熱が加わるためです。

バナナの魅力は高い栄養価を持ちながら、皮を剥いてさっと簡単に食べられる点です。その反面食べ方としてはそのまま食べる、またはジュース/スムージーにするくらいと思われます。

少し手間はかかりますが、バナナを料理食材と考えると食べ方レパートリーがぐっと広がります。まだまだクッキングバナナは普及していませんが、通常のバナナを料理してみるのもおもしろいでしょう。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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