甘いバナナはエネルギー補給食として広く食べられています。これはたっぷりの炭水化物(糖質)を含んでいて、また消化も良いためです。現在では朝食やおやつとして大人気ですがとても高価であった昔、バナナは病気の時ぐらいしか食べられなかったといいます。今回はバナナがもつ健康機能について紹介します。
目次
【バナナへの期待】
皆さんはバナナにどのような健康機能を期待して食べていますか?日本バナナ輸入組合が全国16歳以上の男女1,442人から聞き取ったアンケート結果を見てみましょう(2024年)。
免疫力と抗酸化力
「あなたが気になるバナナの効果・効能は?」という質問に対し「免疫力を高める」26.8%がトップでした。他に健康関係の回答では第4位に「抗酸化作用により体内の活性酸素を取り除く」14.1%、第5位に「腸内環境を整える効果がある」13.7%というのがありました。
回答の上位にあがっていた免疫力と抗酸化力という健康機能ですが、過去4年間のアンケート結果を遡ってみると免疫力は2020年から第1位の座を守っています。また抗酸化力に関しては3位~5位をキープしています。このようにバナナは甘く美味しい食べ物という評価に加え、私たちの健康に関しても大きく期待されている果物であるようです。
免疫強化作用
「バナナは免疫力を強化して病気に罹りにくくする」という話は時々テレビで紹介されます。この根拠の1つとして、血液中で免疫を担当している白血球を増やすという実験データがありますので紹介します(岩澤晴代ら 帝京大学 2009年)。
●供試動物 マウス
●バナナ抽出液
従来種および高地栽培種バナナの果肉から作成した抽出液
●グループ
対照群 …未処理
試験群 …マウスの腹腔内にバナナ抽出液を注射(0.05ml、0.5ml)
●測定項目 腹腔内の白血球数
以上の条件でバナナ抽出液を0.5ml注射し6時間後の白血球(好中球)をカウントしたところ、対照群は約300万個、対して従来種バナナ群は約1,900万個(6.5倍)、高地栽培種バナナでは約2,600万個(8.8倍)と大きな増加が確認されました。ここで登場した高地栽培種とは一般のバナナよりも標高の高いところで栽培されたもので、より甘くより歯ごたえのあるバナナの種類のことです。
好中球は白血球の1つで体内に細菌などが侵入してきた時、真っ先に登場してこれら異物を食べて処理する細胞です。この働きを自然免疫といい、私たちやペットが生まれながらにしてもっている免疫機能です。バナナの果肉の中にこの免疫を担当する白血球数を増加させる物質が含まれているということになります。
【バナナのビタミンC】
次はバナナへの期待が大きい抗酸化作用についてです。抗酸化作用とは体内に発生する活性酸素を抑える働きのことであり、その代表物質がビタミンCです。私たちはビタミンCと聞くとレモン、レモン=すっぱいと連想します。では甘いバナナにすっぱいイメージのビタミンCが含まれているのでしょうか?
ビタミンC含有量
日本食品標準成分表(八訂)によるとバナナの可食部100g中に含まれるビタミンC量は16㎎です。トマトとアスパラガスが共に15㎎でほぼ同量、スイカとサクランボは10㎎ですので、これよりやや多いというイメージになります。またライバル関係にあるリンゴは6㎎であり、バナナは消費者の人気と共にビタミンC含有量においてもリンゴよりも勝っているといえます。
ビタミンCを多く含む果物といえば柑橘系ですが、レモン100㎎、イチゴ63㎎、ミカン32㎎となっています。これらに比べるとやはり少量とはいえ、バナナは意外と抗酸化力を示すビタミンCを含んでいるのです。
ビタミンCを含む部位
バナナは皮を剥いて中の果肉部分を食べますが、この時少々気になるのがスジです。バナナのどの部位にビタミンCが含まれているのかを調べた報告があります(西川陽子ら 茨城大学 2015年)。
バナナ4本を用いビタミンCの平均含有量を求めたところ果肉部分14.23㎎に対し、スジ部分はこれの約77%、皮の内側部分は約82%という結果でした。バナナの皮を食べることはありませんが、スジ部分にも意外とビタミンCが含まれています。
日本には台湾やフィリピンなどいろいろな国からバナナが輸入されています。バナナのスジの抗酸化力を調べた別の研究報告によると、産地別ではフィリピン産のものが最も高い数値を示していました(津川研一 昭和女子大学 2010年)。これより特に支障がなければスジ部分を除かず、バナナは丸ごと全部食べるのが健康に良いでしょう。
【ビタミンC量の変化】
前回、お店で購入したバナナを5日ほど保存すると糖度がアップし、より甘くなるというデータを紹介しました。この追熟ですが含まれるビタミンCについて何か影響はないのでしょうか?前出の西川は保存期間や保存方法とビタミンC量の変化についても報告しています。
追熟期間
バナナの果肉部分に含まれるビタミンC量を購入直後、食べ頃(25℃、3~4日保存)、過熟(25℃、5~6日間保存)の3つの時期で比較測定しました。結果は購入直後のバナナ100gあたりのビタミンC量14.23㎎は追熟3~4日後に約60%、そして5~6日後には約33%にまで減少していました。
室温で追熟させることにより炭水化物が糖化しより甘くなるのはうれしいことですが、抗酸化機能の源であるビタミンCが減少するのは困ってしまいます。糖度と抗酸化力の両方を得たいとするならば、過度の追熟は避けて購入後3日くらいには食べ切るとするのが良いでしょう。
保存方法
バナナは一房3~5本くらいで売られています。家族で食べるならよいのですが、一人暮らしの方では食べ頃を逃がして過熟させてしまうこともあるでしょう。栄養価、中でも今回のテーマであるビタミンCを保持させる保存方法として何が良いでしょう。
バナナの果肉を1㎝の厚さにカットし冷蔵(4℃)、冷凍(-33℃)、蜂蜜漬け(4℃)の3パターンで10日間保存しビタミンCの変化量を測定しました。結果はどれも期間の経過に伴い低下しましたが、残存割合が最も多かったのは冷凍保存で10日後でも約60%が保持されていました。バナナをたくさん買って食べ頃を逃しそうな場合は、まだ少々硬い購入直後にカットして冷蔵しておくとビタミンCはキープされるということです。
果物の魅力はビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な点です。これに加えバナナはエネルギー源として炭水化物(糖質)がたっぷりで運動時の即効性の栄養補給食品としても人気です。そして今回意外なことにビタミンCも含まれており、免疫強化作用や抗酸化活性といった健康機能があることも確認されました。
皆さんのペットに健康食材としてのバナナを使ったフードやおやつを作ってあげるのはいかがでしょうか。この時果肉部分をカットし冷凍保存しておくとビタミンCの減少が抑えられ、好きな時にペットに与えることができ便利です。
(以上)
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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。