獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「フード食材のセレンSe」

あまり馴染みがないセレンというミネラルの健康作用を紹介しています。ここで興味がわいてくるのは、ペットの食事/食材では何を与えればセレンが多く摂取できるのかという点です。今回はフードとペットの体内セレン濃度についてお知らせします。

【動物性食材と体内セレン】

前回、セレンは土壌や海水中に含まれ(無機セレン)、これが取り込まれて植物や動物にも存在(有機セレン)しています。従って食材では野菜からも肉からも、どちらからでも取り入れることができます。

菜食者vs一般食者

医師の指導による菜食療法というものがあります。生活習慣病などの対応として豆類・緑黄色野菜・果物をメインとし、動物性食材を厳しく制限する食事メニューです。この菜食療法を受けている患者42人(平均年齢58.8歳)と一般食を食べている71人(平均年齢52.7歳)の血中のセレンおよび亜鉛濃度を調べた報告があります(小田切美保ら 同志社女子大学 2008年)。

両グループの血清中総タンパク量とアルブミン量はそれぞれ7.4g/dl、4.6g/dlと同じ値でした。続いてセレンと亜鉛の濃度を測定し、一般食グループの値を100とした菜食者グループの相対値を見ると、セレン(89.6)、亜鉛(90.2)とおよそ10%低い値となっていました。

野菜や肉に含まれるセレンはアミノ酸と結合した有機セレンという形態になっています。この有機セレンには穀類ではセレノメチオニン、卵や肉類ではセレノシステインというようにいくつかの種類があります。同じように摂取された有機セレンでもその種類により、体内への吸収率に差があるのかもしれません。

これより野菜中心のある意味偏った食事よりも、肉・魚・卵・牛乳など動物性食材も含む幅広い材料から成る食事メニューの方がセレン摂取という面では適しているといえます。

ペットの血中セレン量

愛犬・愛猫は雑食/肉食中心という食事メニューですので、セレンと亜鉛に関して不足する心配は少ないと考えられます。ではイヌとネコの体内濃度はそれぞれどれくらいでしょうか。大学および一般家庭で飼育されているイヌ(10頭)、ネコ(6頭)を対象にした測定データがあります(椚山 巌ら 北里大学 1994年)。

血清1g中の測定値を見るとセレンではイヌ(0.26μg)、ネコ(0.70μg)、亜鉛はイヌ(1.00μg)、ネコ(1.78μg)でした。セレンも亜鉛もイヌよりネコの方が高い結果でした。

ペットの被毛中セレン量

次は被毛中の濃度です。被毛1g中のセレンはイヌ(1.05μg)、ネコ(1.76μg)、亜鉛はイヌ(217μg)、ネコ(159μg)でした。体内セレン濃度に関してはイヌよりもネコの方が高いことが確認されました。これは給与されているフードに理由があるようです。

供試動物のフード中のセレン含有量を調べるとイヌ用(0.6μg/g)、ネコ用(0.7~2.5μg/g)と大きな差がありました。ネコ用フードにはタンパク源として魚を使用しているものが多く、これがネコの体内セレン濃度が高い背景になっていると思われます。

以前もお話しましたが、血液や尿は現時点の栄養状態、被毛は過去から現在までの長期間の栄養状態をモニターするのに適しています。イヌはネコよりもセレンが不足傾向にあると短絡的に判断するのではなく、フードの内容や動物種による違いと考えるのが適当でしょう。

【生肉フードとドライフード】

多くのオーナーの皆さんの話を聞くとペットに与えている食事は様々です。ドライ/ウエットフードを与えている方や手作り派、または市販フードに時々何かをトッピングしているなどなど・・・。ここでは愛犬の食事タイプと体内セレン量との関係を確認しましょう。

血中セレン量

生肉フードまたはドライフードを食べているイヌではどちらが体内セレン/亜鉛量が多いのか?という大変興味深い調査報告があります(海外論文 2022年)。設定は次のとおりです。

●供試動物 健康な一般飼育のイヌ50頭(平均年齢4.5歳)
●グループ
  生肉フード群 …内容の80%以上が肉と臓器・副産物から成る
  ドライフード群 …内容の80%以上が市販品から成る
  混合フード群 …生肉とドライフードを混合したもの

●測定項目
  血液と被毛中のセレンおよび亜鉛濃度

ここでは上記フードを6か月間給与後のセレン測定データを紹介します。供試犬全体の平均血中セレン濃度は0.39μg/gでした。これを100として3グループの相対値を計算すると生肉フード群(97.8)、ドライフード群(102.6)、混合フード群(100.3)となりました。

被毛中セレン量

次は被毛中のセレン濃度です。供試犬全体の平均セレン濃度は0.53μg/g、同様にこれを100とする相対値を算出すると生肉フード群(118.9)、ドライフード群(84.9)、混合フード群(84.9)でした。

生肉フードとドライフードを比べると、血中と被毛中では濃度関係が逆になっていました。血中濃度とは消化吸収、被毛中濃度は体内蓄積を意味しますので、イヌにおいてセレンの消化吸収ではドライフード、体内蓄積では生肉の方が良好ということになります。

【生肉と加熱肉】

前回、セレンの健康機能としては水銀の体外排出促進やアレルギー性疾患の発症抑制などを紹介しましたが、本来のしごとは抗酸化作用です。これはセレンが活性酸素を消失させる酵素グルタチオンペルオキシダーゼの構成ミネラルであるためです。体内のセレン量が多いほどこの酵素が多く産生され、より高い抗酸化作用が得られることになります。

体内のセレン量

血中セレン量では市販のドライフードと比べやや低い成績であった生肉ですが、ズバリ生肉または加熱肉から作られたエサを食べた場合、どちらの方が臓器中濃度は高くなるのでしょうか?これを調べた研究報告を紹介します(由上文子ら 関西大学 2017年)。

●供試動物 ラット
●グループ
  生肉エサ給与群 …生牛肉を凍結乾燥/粉末化して作製
  加熱肉エサ給与群 …ロースト牛肉を凍結乾燥/粉末化して作製
●測定項目
  主要臓器中のセレン濃度、グルタチオンペルオキシダーゼ活性

上記のエサを4週間給与された両群ラットの血液、肝臓、腎臓中のセレン濃度を測定しました。加熱肉エサ給与群ラットの測定値を100として生肉エサ給与群ラットの相対値を算出した結果、血液(81)、肝臓(83)、腎臓(89)となりました。加熱肉と比べ生肉エサ給与では主要臓器中のセレン濃度が10~20%低いことが判りました。

セレンの抗酸化活性

酵素の働きには「量」が大切ですが、もう1つ「酵素活性」もポイントになります。活性とは今回のグルタチオンペルオキシダーゼの場合、活性酸素を消去する「能力」をいいます。そこで血液・肝臓・腎臓中のセレン濃度に対するグルタチオンペルオキシダーゼ活性値を測定しました。

同様に加熱肉エサ給与群ラットの測定値を100として生肉エサ給与群ラットの相対値を算出したところ、血液(119)、肝臓(136)、腎臓(114)と逆に15~35%アップしました。これは生肉のエサ給与は臓器中のセレン濃度は低いものの、濃度あたりの活性酸素を消去する能力は加熱肉のエサよりも高いことを意味しています。

今回のテーマはペットフードの食材とセレンの関係でした。野菜に偏った食事よりは、肉・魚・卵・牛乳などを取り入れたバランスの良い食事メニューの方がセレンは多く摂取できることは確実でした。しかし生肉と市販のドライフードでは甲乙つけがたい結果であり、また生肉と加熱肉においてもそれぞれに優れた面がありました。

以上の点からセレンに注目したペットの食事管理の最善策は市販のドライ/ウエットフード、動物性食材を使った手作りフード、生肉のトッピングといった異なるタイプのメニューを巡回させて与える「ローテーション給与」となります。

1つのタイプに偏らないフードは栄養、水分、セレン他の健康機能成分を過不足なく摂取することができます。幅広い食材を通し有用なセレンを大いに活用しましょう。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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