獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの病気編:テーマ「絶食と臓器のグリコーゲン」

「グリコ」というキャラメルがあります。この名前は「グリコーゲン」が語源であることはよく知られています。絶食が体にどのような影響を与えるのかを紹介しており、今回は臓器中に保存されているグリコーゲンという物質に注目します。

【消費されるグリコーゲン】

スマホやパソコンなど、今や家電に広く使用されているのがリチウムイオンバッテリーです。通常の電池と大きく違うところは充電ができるという点です。体内で電気にあたるブドウ糖も同じようにどんどん消費されてしまうため、バッテリーに相当する臓器の中にグリコーゲンという形で貯められています。

筋肉の運動

筋肉の運動にはエネルギーが必要です。直接のエネルギー源はブドウ糖であり、このブドウ糖が多数結合して貯蔵用という形になったものがグリコーゲンです。ここで絶食させた実験動物を使ったグリコーゲンの消費に関する試験データを見てみましょう。

24時間の絶食負荷を与えたマウスに水中運動をさせ、体内のグリコーゲン消費の動きを調べた試験報告があります(堀江登ら 武庫川女子大学 2001年)。運動を行う前の筋肉1g中のグリコーゲン量はおよそ0.5㎎でした。これを100として運動開始後の相対量を計算したところ20分後は51、40分後には17にまで減少していました。

食餌を摂らず持続運動を行った場合、筋肉内に蓄えられていたグリコーゲンはどんどんブドウ糖に変換/消費されていくということです。

血糖値の変化

「血糖値」と聞くと、糖尿病→病気→体に悪いものとイメージしてしまいます。しかしこれは誤解で血糖値とは血液中のブドウ糖濃度のことで、日常生活に使えるエネルギー量を表しているものです。イヌの標準血糖値を80~100mg/dLとして200mg/dLを超えると糖尿病のサインとされていますが、これはあくまでも目安です。ペットの健康診断の結果はかかりつけの獣医師とよく相談しましょう。

血糖値は日々の生活で普通に使えるエネルギー量(=ブドウ糖量)のことですので、使用して補給しないと減ってしまいます。ではエネルギーを補給しない状態では血糖値はどれくらい低下するのか見てみましょう。絶食前マウスの血糖値はおよそ200mg/dLでした。この値を100としての相対値は絶食24時間後で約76、48時間後では約55となりました。

このように絶食により血糖値は大きく低下しますが、0(ゼロ)になることはありません。24~48時間何も食べない状態で、ブドウ糖はいったいどこから供給されているのでしょうか?その答えは肝臓に貯められているグリコーゲンです。

肝臓と筋肉のグリコーゲン量

グリコーゲンはブドウ糖が多数結合した多糖類で動物の体内、特に肝臓や筋肉に蓄えられています。先ほどの絶食負荷を課せられたマウスの肝臓と筋肉内のグリコーゲン量の変化を比較しましょう。

絶食前の値を100とした相対値をみると、肝グリコーゲン量は24時間後48時間後共に約3.3、一方筋グリコーゲン量は24時間後48時間後共に約50と大変大きな違いがありました。どうやら同じようにブドウ糖からできているグリコーゲンでも肝臓と筋肉とではその利用先に違いがあるようです。

【グリコーゲンの役割】

ブドウ糖の貯蔵体という意味ではデンプンもグリコーゲンも同じ役割をしています。その違いを判りやすくいうとデンプンは植物(コメ、イモなど)に、グリコーゲンは動物(肝臓、筋肉など)の体内に貯蔵されているというイメージです。

肝臓のグリコーゲン

穀類やイモ類を食べると中に含まれるデンプンが消化されてブドウ糖ができます。ブドウ糖の血中濃度が血糖値であり、体内の細胞のエネルギー源となっています。このブドウ糖がたくさん産生され使い切れない時、臓器の中にグリコーゲンという形で貯蔵されます。

グリコーゲンの貯蔵臓器の代表が肝臓です。肝グリコーゲンは肝機能のエネルギー源として消費されるのと同時に血中に移行し、血糖値の維持にも使われます。前出の絶食マウスの血糖値が0(ゼロ)にならず、肝グリコーゲンが24時間後に3.3まで激減したのはこの働きによるものです。

筋肉のグリコーゲン

もう1つのグリコーゲン貯蔵臓器は筋肉です。肝臓と違って筋グリコーゲンは基本的に筋肉の運動のみに消費され、血糖値の低下を応援することはありません。逆に運動が長時間にわたり筋グリコーゲンの消費が激しい場合、血中からブドウ糖を補給してもらっています。

肝臓と比べて絶食マウスの筋グリコーゲンの消費割合が軽度であったのは、肝臓→血液(血糖値)→筋肉へとブドウ糖が補給されていたためでした。

【糖質の補給効果】

デンプンと炭水化物は同じものか?という質問をよく受けます。詳しくは「炭水化物=糖質+食物繊維」となり、デンプンは糖質メンバーの1つです。糖質にはデンプン、ショ糖(砂糖)、麦芽糖、ブドウ糖などたくさんの仲間がありますが、最後に体内臓器のグリコーゲン補給にはどの糖質が最も効果的かという試験データを紹介します。

血糖値の回復

24時間絶食させたマウスにいろいろな20%糖液を経口投与し、時間経過と血糖値の推移を調べました(堀江 登ら 武庫川女子大学 2003年)。ここではブドウ糖(単糖類)、乳糖(二糖類)、デンプン(多糖類)の3つに絞りその結果を確認しましょう。

糖質補給30分後にはすべて血糖値は急回復し、60分後には少し値にばらつきがみられました。全体としてどの糖質にも大きな差はなく、補給後短時間で血糖値を回復させる効果がありました。

肝グリコーゲンの回復

次は肝臓のグリコーゲン量です。肝グリコーゲンは肝臓自身のエネルギー源に加え血糖値の応援にも消費されるため、24時間の絶食直後には含有量はほぼ0(ゼロ)という状態でした。ブドウ糖およびデンプン投与マウスは補給30分後に3~4mg/g、60分後には11~12mg/gにまで回復しました。

二糖類である乳糖投与マウスの回復効果はあまり良好ではなく、糖質の種類による差が確認される結果となりました。全体として肝グリコーゲンは絶食による消耗ダメージが大きいため、どの糖質も回復させるまでに時間が必要であることが判りました。

筋グリコーゲンの回復

運動器官である筋肉のグリコーゲン量を確認しましょう。筋グリコーゲンは投与30分後には回復が見られ、肝臓とは異なる結果となりました。これは血液(血糖値)を経由して筋肉にブドウ糖がどんどん補給され、グリコーゲンの貯蔵が再開されたことを示しています。

加えて筋グリコーゲンの回復効果が高いのはブドウ糖(単糖類)>乳糖(二糖類)>デンプン(多糖類)の順でした。グリコーゲンはブドウ糖からできており、二糖類や多糖類を摂取すると一度ブドウ糖に消化・分解する必要があります。このため単糖類であるブドウ糖には即効性があるというわけです。

今回は体内のエネルギー源であるブドウ糖とその貯蔵体のグリコーゲンの関係について話をしました。疲れた時には甘いものが欲しくなるというのは、体がブドウ糖の補給を求めているということです。

ペットも同じように散歩や運動時にはブドウ糖が消費され、肝臓・筋肉のグリコーゲンも減少します。ペットの食事には肉(タンパク質)と共に穀類・イモ類(炭水化物)も必要であり、大切なのはいろいろな食材を幅広く与えるということになります。

(以上)

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獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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