
毎日行う散歩のような軽い運動/軽いストレスは、起床後の食欲を応援するという話をしました。ヒトは1日のおよそ1/3(7~8時間)、ペットは1/2(12~15時間)を眠っていますが、今回は睡眠時間の長さと目覚めた時の食欲との関係を探ります。
目次
【睡眠時間と肥満】
昔から「寝る子は育つ」といいます。これは成長ホルモンが睡眠中に分泌されるためですが、体重が増えすぎて肥満になるのは困ります。まずは睡眠と肥満度との関連性を確認しましょう。
肥満レベルとの関係
15~23歳の学生(男女合計33人)を対象に睡眠時間と肥満レベルの関係を調査した報告があります(高山直子ら 阿南工業高等専門学校 2011年)。モニター学生の肥満レベルはBMIを元に標準(18~25:48.5%)、軽度肥満(25~30:15.2%)、高度肥満(30~:36.3%)に分けられました。
これら3グループの平均睡眠時間を調べると標準(403.9分間)、軽度肥満(395.3分間)、高度肥満(376.6分間)となりました。どうやら肥満学生には睡眠時間が短い傾向がある様ですが、これには起きている時間が長い→夜更かしをしている(寝る時間が遅い)→夜食やおやつを食べる機会が増える→体重が増える、という流れがあるのかもしれません。

肥満リスク
次は幼児の睡眠時間と肥満との関係です。米国睡眠学会が推奨する睡眠時間は1~2歳児で11~14時間、3~5歳児では10~13時間とのことです。ここで3歳児8,941人を対象とした幼児の睡眠時間と肥満との関係データを見てみましょう(関根道和ら 富山医科薬科大学 2002年)。
各睡眠時間グループの肥満幼児の割合は9時間未満(10.7%)、9~10時間(9.0%)、10~11時間(8.1%)、11時間以上(6.7%)とここでも時間が短いほど肥満率は高い傾向がありました。この関連性を計算し睡眠時間11時間以上の幼児と比較したところ、9時間未満の幼児は1.57倍肥満リスクが高いという結果になりました。
スライド原稿②「短時間睡眠と肥満リスク(3歳児)」を挿入
将来の肥満リスク
もう1つ3歳幼児が10年後に肥満になるリスクと睡眠時間の関係を調査した報告があります。睡眠時間を9時間未満、9~10時間、10~11時間、11時間以上に分け、各グループの幼児の10年後の肥満割合を追跡調査しました(井上文雄 京都女子大学 2025年)。
このデータを元に肥満と睡眠時間の関連性を計算し、11時間以上の幼児と比較したところ、9時間未満の幼児が将来肥満になるリスクは1.59倍となりました。以上2つの調査報告から幼児における短時間睡眠は現在/将来の肥満要因であるといえます。
前出の15~23歳の学生と違い3歳児の場合、夜更かしをして夜食やおやつを食べるということはないでしょう。短時間睡眠は小腹が空くというよりは、目覚めた時/朝の食欲と何か関係があると考えられます。

【食欲調整ホルモン】
睡眠時間が短いと太りやすいという現象の背景には食欲を調整しているホルモンがあります。前回ストレス時に産生されるコルチゾールが食欲を亢進させることを述べましたが、これに加え今回はレプチンとグレリンという2つのホルモンを紹介します。
抑制ホルモン:レプチン
レプチンは脂肪細胞から分泌され脳に作用して食欲を抑えるホルモンです。30~60歳のボランティア1,024人をモニターとして、睡眠時間と血中レプチン量の関係が調査されました(海外文献 2004年。)
6時間睡眠グループのレプチン量は約15ng/mlでした。これが睡眠時間が長くなるにつれて値は増加し、9時間睡眠グループではおよそ19ng/mlとなりました。このようにレプチンは睡眠時間が長いとたくさん分泌されるため、目覚めた時は食欲が抑えられる(=さほど食べたくはない)という現象が起きます。

亢進ホルモン:グレリン
グレリンは胃から分泌される食欲を亢進させるホルモンです。上記と同様に睡眠時間ごとの血中グレリン量を測定したところ、5時間睡眠グループは約950pg/mlと高く、これが徐々に低下して8時間睡眠グループでは約820pg/mlとなりました。先程のレプチンとは逆に食欲亢進作用があるグレリンは睡眠時間が短いほど多く分泌されるということです。
学生や幼児は睡眠時間が短いほど肥満になりやすいというデータを紹介しました。これには短時間睡眠→レプチン減少、グレリン増加→起床後の食欲亢進→食事量アップ→体重増加という流れがあるためと考えられます。

【朝の食欲】
朝、目が覚めて食卓に向かう時、日によって食欲にばらつきを感じるという経験はありませんか?今朝はやたらお腹が空いている/今朝は朝ごはんはいらない…といったその背景には睡眠時間の長短があるのかもしれません。
夜更かしと食欲
前出の海外の大規模調査結果を元に、睡眠時間が短くなった場合の食欲調整ホルモンの変化量が計算されています。ヒトの平均睡眠時間である8時間を5時間に短縮した場合、レプチン(食欲抑制ホルモン)は15.5%減少、対するグレリン(食欲亢進ホルモン)は14.9%増加すると算出されました。
このように夜更かし明けの朝は、いつもと比べて少し食欲がアップしている可能性があります。

ペットの朝の食欲
オーナーの皆さんにとってペットの朝の食欲は大変気になるものです。しっかり食べている姿を見ると「今日も元気だな」と思い、あまり食べたくない様子だと「どこかおかしいのかな?」と心配になるでしょう。
このような場面を目にした時、一度昨夜のペットの睡眠時間を考えてみましょう。夜遅くまで一緒に遊んでいつもより寝る時間が遅かった(睡眠時間が短い)とか、公園でたくさん運動したため疲れて早く寝た(睡眠時間が長い)などです。
睡眠時間が短いとグレリン分泌量が多いために食欲は上がり、朝ごはんをしっかり食べるとなります。これに対して睡眠時間が長いとレプチンの分泌量が多くなるため食欲は下がり、朝ごはんを食べたくない反応を見せることになります。
(ただしこれらはあくまでもペットは病気・ケガをしていない、フードはいつも食べているメニューであるという条件での話ですのでこの点はご注意下さい。)

食事、なかでも朝ごはん時の食欲の有無は健康のバロメーターで、これはヒトもペットも同じです。ペットでは1日2食というのが一般的であるため、特に朝ごはん時の食欲は体調チェックにとても有用です。
病気・ケガ・フードメニューなど何も変わった点はないのに、朝の食欲にムラがある。皆さんのペットにこのような場面が見られた時、昨日の睡眠時間が関係しているかもしれません。
(以上)
厚手でしっかりした弾力で、ふかふか幸せな寝心地
人の布団と同じ製法で1つ1つ手作りで仕上げたペット用の布団です

【愛犬愛猫用】至福のふかふか夢ふとん【国産】の購入はこちらから
執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。





























