「ウチのワンちゃんには、どんな食べ物がいいのでしょうか?」。
お客さまから相談されると「帝塚山ハウンドカム」の川瀬隆庸(かわせ・たかつね)社長は馬や鶏(ニワトリ)、鹿などの生肉を一番にお勧めしています。
狼(オオカミ)を祖先とする犬の食生活として自然で、ビタミン・ミネラルをはじめ消化や新陳代謝に必要な酵素が含まれているからです。とはいえ、それだけでは栄養が完全ではないため骨や野菜の成分も与えることが必要ですし冷凍・冷蔵庫で大きなスペースを占めので保存も大変…。
そんな事情でドライフードがワンちゃんのごはんの主流になっているのが現実です。
そこで川瀬社長がハウンドカムで販売するドライフードのひとつに選んだのが「トライプドライ」です。この製品をカナダから輸入している「リードバディー」社(神戸市)の森伸一郎専務を「ハウンドカム」にお招きし、川瀬社長とペットの食事と健康などをテーマに対談をしていただきました。
愛犬家の森専務と川瀬社長はなぜ「トライプドライ」に注目したのでしょうか? 4回にわたって、おふたりのお話をお届けします。
【略歴】森伸一郎(もり・しんいちろう)
1974年和歌山県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、化粧品会社、外資系保険会社、ペットフード輸入代理店を経て独立しリードバディ株式会社専務取締役に就任。
ハードルを越えて
――まず、おふたりは、いつからお知り合いになったのですか?
森: 1昨年からですね。今年で3年目になります。弊社が「トライプドライ」の輸入を始めたのが2年半くらい前で、それからしばらく経ったころでした。
川瀬: もう20年くらいつきあいのあるペット用品のメーカー兼卸問屋さんを通じてでしたね。もともと興味のあったフードでした。取り扱っている会社につないでいただいたら、森さんが担当しておられたわけです。
森: 社長は、もう商品はご覧になっていましたね。そのメーカー兼卸問屋さんとは私も親しかったので、その方の仲介で川瀬社長からお電話を頂戴して私がハウンドカムにうかがったのが、おつきあいの始まりました。
――川瀬さんは「トライプドライ」のどのような点に関心を持たれたのですか?
川瀬: まず成分が気に入りました。当時、店の商品構成を変えたくて、それまで置いていたドライフードに代わってメーンで取り扱える良いものはないか探していたんです。そこで、うちの方向性や理念に合いそうだったのが「トライプドライ」だったので、詳しく、お話を聞きたいと思いました。
――森さんは「帝塚山ハウンドカム」という存在はご存じだったのですか?
森: もちろんです。正直言っていいですか?ハードルがすごく高いっていうイメージがありました。それは、この業界でもよく言われるていることです。商品を選ぶ基準が高いので、むやみに飛び込んでも無駄だ、という印象を持っていました。「ハウンドカム」さんでお取り扱いいただくと、この業界ではステータスがひとつかふたつ上がるっていうイメージですね。ですから「ハウンドカム」さんがうちの商品に関心を持たれていると聞いたときは「ラッキー!」って思いましたよ。ガッツポーズです。
川瀬: ええ、そうやんたんやぁ(笑)
求めたのは「食いつき」
森: 一方で「えーっ!」っていう意外な感じもありました。「どこで知っていただいたんだろう?」「どこに関心を持っていただいたのか?」という疑問や不安が入り混じった複雑な気持ちですね。「トライプドライ」に関しては輸入を始めて4、5カ月とか、まだそんなレベルでしたからね。もちろんお声がけいただいたのは光栄でしたが、まだ弊社としても、この商品に関わって立ち上がりのところだったので、商談が成立しても「ハウンドカム」さんが要望される物量・販売量を確保できるか、っていう供給面での対応が充分にできるかどうかも心配でした。
ペットフードは、いきなりすごく売れるものではなくてジワジワ売れていくものなんですよね。特に輸入品はそれが普通です。賞味期限のあるものなので、過剰に在庫を抱えるのは難しい。ですから、その時々に適した量を在庫として確保するようにしていました。ですから「ハウンドカム」さんからお声がけいただいたときは、我々のキャパで、対応できるのかどうかは一番の悩みだったわけです。
川瀬: やはり商品には自信があったわけですね。確か初めてお会いしたときは、材料のことなどを詳しく質問しましたよね。即答してもらえなかったものは後日確認して返事をいただいただき、だいだい期待通りだとわかりました。森さんはなぜ「トライプドライ」を扱うことにしたのですか?
森: 私も犬と暮らしていますが、ワンちゃんの一日の動きを見てると、まず半分以上寝てます。もちろん飼い主さんと遊んでもらうのは楽しいと思うんですけど、やっぱり一番の楽しみは、ごはんなんですよね。ごはんのときが一番幸せそうです。ものすごく食欲を掻き立てるうえ、健康にも良くて、と考えっていったときに、飼い主の自分としても、おいしそうに食べるフードって「いいな」って感じるんですよ。
何か体にトラブルがあるワンちゃん、猫ちゃんは別にして、おいしそうに、よく食べるっていうのが何にも勝る良いフードの条件だなって思ってるんですね。とはいえ、特にドライフードがそうなんですが、ワンちゃんに食べさせるのはそんなに難しいことではないんですよ。フード自体にちょっと脂(あぶら)分を多くすれば、だいたい犬は食欲を掻き立てられますからね。ただ、そういう方法ではなくて、何か素材の内側から来るような魅力のあるものはないか、と考えました。犬の寿命が延びていますが、長生きさせるだけはなくて、健康に長生きさせたいという気持ちがあって、それには食べ物が大切に違いないですよね。犬自身が自分の体に良いことが本能でわかるような感じのフードがいいと思ったわけですね。つまり犬本来の自然な「食いつき」の良さって言うんでしょうか。「食いつき」をキーワードにして探したわけです。
まずカナダありき
川瀬: そこで「グリーントライプ」という原材料に着目したわけですか?
森: はい。詳しいことは、あとで話しますけど、「トライプ」って何かご存じない方も多いでしょうからまず簡単に言いますと「トライプ」とは牛、羊など反すう動物の胃のことです。未洗浄、未漂白、胃の内容物ごとそのままのものをグリーントライプといいます。ここ数年ですごく注目されるようになっていて、犬の食欲を掻き立てると言われていますが、私自身も最初はトライプ原料のフードだけを狙って商品を探していたわけではありませんでした。フードを探すときの第一の条件としては、まず生産・製造国を限定したんです。それはカナダでした。
川瀬: なぜカナダだったんですか?
森: カナダって聞いても工業系の企業名って日本で暮らす人間にはほとんど思い浮かびませんよね。航空機や鉄道車両などのボンバルディアくらいじゃないですか。私としては先進国のなかでは第1次産業の農林業や畜産業の存在感が大きいという印象を持っていました。世界有数の穀物輸出国ですから農産品の品質管理が丁寧で安全性が高く自己管理されているイメージが強かったんです。ナチュラルな印象もカナダの“売り”だと感じました。ペットフードは嵩(かさ)張るので海上コンテナ輸送となります。つまり、どうしても海上で潮(しお)や気温の変化の影響を受けます。カナダからなら日本へは赤道をまたがなくて済み、在庫が揃っていれば、オーダーから2週間で荷物が到着するので、品質の劣化も軽減できるんじゃないかな、ということで决めました。
川瀬: もともとカナダとは何かの縁があったのですか?
森: 全くありません(笑)。観光で訪れたこともなかったです。でも日本のカナダ領事館に「海外マーケットも意識し、品質が高いペットフードを作っている会社はないか」と問い合わせました。すぐに反応がありまして3社紹介いただきました。その3社に、まず商品概要の資料を送っていただき、各社の製造現場などを訪問すためにカナダのバンクーバーへ行きました。2015年です。その中でトライプを原料にしていた「ペットカインド」社の「トライプドライ」に注目したわけです。
1962年和歌山市生まれ
同志社大学文学部美学及芸術学専攻卒業
1985年産経新聞社入社
神戸支局、社会部(大阪本社)、文化部(同)、産経デジタル(東京)の記者、デスク(部次長)、デジタルメディア専門委員などをつとめ2015年9月末に退社。海外向けセールスプロモーション会社取締役に就任する一方、フリーで編集業務などを行っている。