「帝塚山ハウンドカム」の川瀬隆庸社長が「リードバディ」専務の森伸一郎さんをゲストにお招きした対談の続きをお届けします。第3回目となる今回は森さんにペット業界に関われたきっかけや、愛犬の「四丁目」について語っていただきながら、さらに2人による、こだわりのドッグフード論議となりました。
健康に長生きの大切さ実感
川瀬: 森さんのことも教えてください。
もともとペット業界の仕事をされていたのですか。
森: いえ。
大学を卒業して、まず大阪にある化粧品メーカーに入り、そのあと外資系の保険会社に転職しました。
完全歩合で、収入もよかったのですが、生命保険の会社なので、毎日、お客さまが亡くなったときの話をしないといけません。
それがけっこうストレスでした。
方向転換を考えて転職先を探していたとき、候補の中の1社にペットフードの輸入代理店があったのです。
その会社のフードがウチの犬にとても良くて、こんな商品を扱っているのであれば、良い会社に違いないと思って入社を决めました。
これが十数年前で、ペットの業界と関わったきっかけです。
その後、独立して仲間と2011年6月「リードバディ」を設立しました。
川瀬: ワンちゃんは昔から飼われていたのですか?
森: 小さいころに雑種の犬を拾ってきて、飼育していたことがあるんですけど、大人になって初めて自分で飼ったのが今年で16歳になった柴犬です。
生まれた直後から一緒に暮らしていて、名前は「四丁目」といいます。
川瀬: なぜ「四丁目」なんですか?
森: ごめんなさい。
実は、よく憶えてないんですよ。
一緒に暮らすことが決まって、クルマを運転しながら「なんていう名前にしようかな」と考えていたんです。
僕は名字が「森」なんで「ビル」っていう名前にして、六本木ヒルズなどで有名な会社と同じ「森ビル」にしようかという冗談も思い浮かんでいたんです。
それで車内から道路の「○○何丁目」という表示が見えるじゃないですか。
「四丁目」という響きが気に入って名づけたような気もするんですが、確かじゃないんです。
ちなみに「四丁目」は女の子です。
川瀬: オスかと思ってました(笑)。
森: 一昨年(おととし)、緑内障で、両目とも見えなくなりました。
腰も弱くなって散歩にも行けない状態で、動物病院に行く以外は外にも出られません。
部屋のレイアウトを変えないので、どこに水があるかトイレがあるか、ごはんがあるかというのは、感覚でわかるみたいで、うまく生活はしてます。
自分の犬が“おばあちゃん”になって、健康に長生きする、ということがどれだけ大切か、を実感しています。
野外飼育が理想だけれど…
川瀬: 犬と一緒に生活していかがですか?
森: そこにいてくれるだけでいい。
すべての飼い主さんは自分の犬が一番かわいいと思ってるんですよね。
冷たくされてもかわいいですし、寄ってきてくれてもかわいい。
家族ですよね。
しかも、私たち飼い主に100%依存している家族です。
だから僕らがいなくなると、生きていけないので、100%守ってあげないといけない。
だけど、「四丁目」と暮らせるのは、あと1年か2年かなぁ。
2年はたぶんないのかなぁと思っていて、ペット業界で仕事をしている人間としてはダメなのかもしれませんが、「四丁目」が亡くなってしまうと、ペットロスになると思います。
川瀬: かわいさもそうですが、一途さも魅力ですね。
やっぱり我が子同然に生活している方が多いんじゃないですか。
今は鎖(くさり)につながれて、外で飼われている犬をあまり見なくなりましたけど、自分の家の犬への思い入れは昔も今もほとんど変わらないでしょうね。
森: この間、信州だったかな、雪のなかで外飼いされているチワワを見たときはびっくりしました。
外で鎖につながれて勝手に散歩へ行って帰ってきたらご飯に家族の残り物っていうのは見なくなりました。
川瀬: 本当は外で飼ったほうが健康的やと思うんです。
ただ犬ってヒトに依存していて、寂しがったり、遊んでほしがったりするんで、一度、家の中に入れて3日経てば、もう出せないでしょうね。
出すと「入れろ入れろ」って泣き叫ぶし、飼い主の方もそれは耐えられないんで、外飼いなら、ずっと、それをを通さないといけません。いったん家の中に入れてまた出すというのは難しいですね。
ですから災害時に避難しなければいけない場合などはキツいです。
犬にとっては過酷な環境になることがあるので、せめて栄養はきちんと確保したい。
そういう意味でもドライフードは非常食としても有効なので、質の高い製品が求められるわけですね。
多い「食べてくれない」悩み
――ペットフードに話が戻ってきました。
森さんは川瀬社長から納入を求められる「トライプドライ」の量に対応できるかどうか不安だった(対談第1回参照)とおっしゃいましたが、実際にはどうだったのですか?
森: 最初はちょっと、量を控えていただきながらスタートしていただき、ハウンドカムさんの売り上げの増加に合わせて供給できるように努力しています。
つまり納めさせていただいている量は右肩上がりで、使っていただいているワンちゃんが増えています。
初めのほうにも申し上げたようにカナダに発注して2週間で入ってはくるのですが、どこかで齟齬が生じて少し遅れる場合もありますので、ギリギリのところでやっているのが現実です。
必要以上に在庫を抱えて商品の賞味期限を短くしたくないのです。
置いておくだけでも商品は劣化していきますからね。
お客さまにはできる限り賞味期限に余裕のある状態で届けたい。
川瀬: おっしゃるように「トライプドライ」の売り上げは徐々に伸びていまして、お客さんからは「毛艶が良くなった」「涙焼けが改善された」という声はたくさんいただいています。
それ以外にも扱っているドライフードはありますが、「トライプドライ」の割合が一番多くて売り上げも一番です。
当社としては、やはり生肉をお勧めはするのですが、完全に生肉という方はほとんどいらっしゃいません。
ベースはドライフードにして生肉や手作りフードを与えるという方が多いんです。
ですからドライフードはやはり大事だと思っていますので、お腹の調子が悪いとか、結石の悩み、涙焼けが気になるといった相談をされたときには消化にいいし栄養もとりやすく作られていると説明して「トライプドライ」をお勧めしています。
飼い主の方は、食いつきを気にされます。
「食べてくれない」という悩みを聞くことが多いのですが、当店が扱っているドライフードの中で、一番食いつきがいいのは「トライプドライ」だということは、お客さんの反応などからもわかります。
これを食べないのなら、どれも食べないというか、与えるものがないくらいです。
90%以上の方から「よく食べた」「美味しそうに食べた」と喜んでいただいています。
森: 「トライプドライ」の製造元の「ペットカインド」社は3人の兄弟が経営するファミリー企業で、創業者は彼らのお母さんなんです。
お母さんは元々、ドッグショーに出す犬を育てるショーブリーダーでした。
お肉屋さんからもらってきたトライブを犬にあげると、毛艶がよくなって、筋肉量や骨の密度が上昇して体に張りが出てショーに勝てることが経験則として分かったみたいなんです。
その話が広がり始めたらしくて、周りの仲間の方々からも「ほしい」と言われたようです。
でも生のまま送るのは難しいので缶詰を作ったことが会社として成り立つきっかけです。
お腹にいいとか、乳酸菌が云々というのはおそらく後付だと思います。
商品開発をしてから検査機関で乳酸菌の量などを確認したようなので、ブリーダー時代の経験と、野生の肉食動物は内臓を食べているということから学んで生まれた結果が「トライプドライ」だったようです。