川瀬隆庸の「こだわり対談」

「こだわり対談」デンタルケア編(1)

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帝塚山ハウンドカム・トリマー(道内鈴夏)

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帝塚山ハウンドカムの川瀬隆庸(かわせ・たかつね)社長がさまざまなテーマでワンちゃんやネコちゃんとの快適な暮らしを考える「こだわり対談」の第2弾をお届けします。
今回のテーマは「デンタルケア」です。入社3年目のトリマー、道内鈴夏(みちうち・すずか)さんと、効果的な歯周病の予防や、同社スタッフの仕事への姿勢などについて語り合っていただきました。
カットやシャンプーでワンちゃんの外見だけをきれいにするのではなく、体調や気持ちも含めてトータルに心を配るハウンドカムならではの「ホリステックトリマー」の“役割”についても理解していただけるよう3回に渡って対談の内容をご紹介していきます。
(岡崎秀俊)

入社の動機は会社の雰囲気

――まず、道内さんのことから、うかがいます。なぜトリマーになられたのですか?

道内 高校1年生のときからトイプードルを飼い始めまして、初めてトリミングサロンに出したときに、すごくきれいになって帰ってきて感激したんです。
自分でもたくさんのワンちゃんをきれいにしたいな、と思って高校を卒業して大阪ビジネスカレッジ専門学校の「トリマー専攻」に入って2年間、勉強しました。

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川瀬: ワンちゃんは何歳ですか?

道内: うちに来たときは生後3~4カ月で今は7歳です。
トイプードルにした理由は毛があまり抜けないからです。
マンション住まいなので、ご近所の方に、抜け毛で不快な思いをさせたくなかったのです。
オスで名前は「フィッチ」といいます。
父が「アバクロンビー&フィッチ」というブランドがすごく好きなので、そこから取りました(笑)。
体重は最初900グラムで、今は4.6キロです。
体格はトイプードルとして大きい方なのですが、細めです。
私が「飼いたい」って言い出したのですが、マンションだし、散歩も大変だし…ということで最初は反対されました。
でも4歳上の従姉がトイプードルを飼い始めたんです。
何度も遊びに行くうちに一緒に行っていた母が、そのワンちゃんをとてもかわいくなってきたみたいで、許してくれました。

川瀬: ハウンドカムを勤め先に選んだ理由を教えてください。

道内: 専門学校の卒業を控えてインターンシップに行っていまして、ここが3社目でした。
対応されている頭数もスタッフも多かったので、充実した仕事ができるかな、と思いました。
何よりも雰囲気がよかったのです。
トリミング室に入ったときにすぐに話しかけてくれましたし、働きやすいかな、と思いました。
1週間お世話になりましたが、それ以降はインターンシップに行かず、ここに決めて2015年4月に入社しました。

学校で教えない「デンタルケア」

――今回のテーマは「デンタルケア」ですが、専門学校で「デンタルケア」は教えてくれるのですか?

道内: 歯のことは学校では習わなかったので、入社してから教えていただきました。

川瀬: 獣医さんの仕事に近いので職域の問題もあって学校も遠慮しているのかもしれませんね。とはいえ、私たちの業界でも注目されてきています。
すでに2005年ごろにはワンちゃんの歯磨きをする店も出始めてきていました。
私もデンタルケアの必要性を感じていたので従業員のトリマーと2人で獣医さんが指導するペットショップでできるデンタルケアの講習会に参加しました。
当然、ペットショップでは動物医療のラインを越えることができないので、その講習で私たちができることを学んで、すぐにうちの店でもやり始めました。
動物病院ではないハウンドカムがデンタルケアをしていることについて、公的な機関に「問題がないか調べてほしい」という第三者からの要請があったらしく最近も照会がありましたが、デンタルケアを始めた経緯や、やっている内容を説明したら「気をつけてやってください」と言われました。
知り合いの獣医さんに聞いても歯石を取ることも問題はないという見解でした。
ペットショップによるデンタルケアについて違法性などを指摘する裁判の例もないそうですし、厳密にすると、ワンちゃんの爪を切ってもいけないという非現実的なことにもなってくるかもしれません。
お客さまに喜んでいただけるグルーミングをしたいという思いがあるだけで、医療行為をするつもりはありません。
東京では本格的にデンタルケアを打ち出しているショップも出てきているようですので、流れとしては医療行為ではないデンタルケアが定着する流れにあるのではないでしょうか。

まず落ち着かせることが基本

――どのような方法でスタッフはデンタルケアを習得するのですか?

川瀬: 経験を積んだチーフトリマーや先輩トリマーから新入社員に伝授します。
口で技術を伝えるのも大切なのですが、犬との接し方や扱い方がうまくならないとどうしょうもないんです。
暴れられると事故の原因にもなりますから、まずは犬におとなしくしてもらえるように接することからスタートします。

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道内: そうですね。
それに入社するまで歯石がつくということすらも、よく知らなかったので、デンタルケアはあまり気にもしていませんでした。
そんな状態で最初デンタルケアの現場を見たときはスゴいなと思いました。
シャンプーやカットだけで、きれいにするのではなくて、歯まできれいにする、お店なので、お客さまに安心されるトリマーになれるとも感じましたね。
初めは、ずっと見て覚えるだけで、次第に店の看板犬の「いわて」の歯を1本だけとか、後ろから先輩に手を添えてもらってという感じでした。
やはり、そのワンちゃんがどういう性格なのか判断するところから始まりました。
怖がりの子もいるので、そういう子は最初、声をかけながらやさしくしてあげるといった工夫が必要だとわかってきます。
そして先が尖っているスケラーという器具で歯についている細かいものを取ったり、先がアイスクリーム用のスプーンのような平型スケラーで歯全体の細かい汚れを取ったりします。
大きい歯石は専用のペンチで取り除きます。
デンタルケアに慣れている場合は、すぐに、おとなしくなる子が多いのですが、慣れていても嫌がる子もいますから、動かないような保定の仕方をしっかり考える必要もあります。
たとえば、嫌がる子は、前からではなく、後ろから優しくやらせてもらうといった配慮もします。
小型犬はトリミングテーブルの上に座ってもらってできますが、大型犬はテーブルに乗らないので床でやることになります。
力が強いうえ、床なので、どうしても逃げ場ができてしまうところが大変です。
とはいえ大型犬も怖がらないように落ち着かせることを心がけるのは同じですから、小型犬と同じように名前を呼んだり撫(な)でたりして「大丈夫よ」と声をかけます。

川瀬: 怖いので暴れるし、不安なので逃げようとしますから、まず恐怖とか不安を鎮めるような接し方をしているわけですね。
歯石がつきやすい子の特徴や傾向はありますか?

道内: 小型犬は、お口が小さくて歯の間隔が狭いのですよね。
だから隙間に汚れがたまりやすいので歯石がつきやすいようです。
中型犬、大型犬は口が大きくって歯の隙間にも余裕がある子が多いので歯石がたまりにくいと思います。
唾液の量が多い大型犬は歯石がつきにくい印象があります。

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川瀬: 実際、現場でやっていってもらっているなかで、苦心していることはありますか?

道内: 口を触られることに慣れていないワンちゃんが多いのでどれだけ負担をかけずにケアをしていくかを一番に考えないといけません。
苦心しているのは、そこですね。
ワンちゃん一頭一頭それぞれに合った保定の仕方というのもあるので、そこを工夫して、なるべく早くきれいにして終わらせることに努めています。

川瀬 やはり、あんまり負担をかけると余計に嫌がるのでしょうね。

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