獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの病気編: テーマ「血尿」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
尿や便は私たちのペットの健康状態を確認する大切なツールです。

今回は赤いオシッコ「血尿」がテーマです。

オシッコが赤い

 毎日のペットの世話の1つとしてペットシーツの交換があります。この時、シーツに赤いシミを見つけるとオーナーのみなさんは大変驚き慌てることと思います。

私たちヒトやペットの尿は通常、透明~うすい黄色をしています(ネコの場合はもう少し濃い黄色です)。この尿が赤~ピンク~茶色をしている場合、体のどこかに支障があることは明らかです。

尿が赤っぽいとすべて「血尿」と呼んでしまいがちですが、原因や赤色の正体によって3つに分かれます。少々乱暴ですが主な原因でみると次のようになります。

●血尿 …出血(膀胱炎や尿石症)
●血色素尿 …溶血(中毒やフィラリア症)
●筋色素尿 …筋肉の損傷(激しい運動、挫傷)

血尿

血尿とは文字通り尿に血液が混じった状態をいいます。血液が混じるということは毛細血管が破れているということですので、泌尿器のどこかで炎症が起きていたり、傷があるということになります。

泌尿器の炎症

病気の名前で肺炎とか肝炎など「○○炎」というものがたくさんあります。泌尿器の炎症では膀胱炎や尿道炎がその代表でしょう。泌尿器の内側の粘膜が炎症によって充血して毛細血管が破れて出血します。

尿石症

尿石(尿路結石)については少し前に詳しく説明しました。膀胱などの中でできた尿石が尿路の粘膜を傷つけて出血させてしまうものです。

また成長した尿石が尿道に詰まることによって、充血・出血するというパターンもあります。

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その他

他にも泌尿器の内側で出血する原因として次のようなものがいくつかあります。

●尿路感染症 …糞便由来の菌の侵入により炎症が起きる
●打撲、事故 …打ち身によって腎臓や膀胱に内出血が起きる
●腫瘍 …腫瘍の増殖により血管の成長や損傷が起きる

血色素尿

血色素とは血液の赤色色素、すなわち赤血球の中に入っているヘモグロビンのことです。血色素尿とは尿に(血液そのものではなく)ヘモグロビンが混じったものをいいます。

尿にヘモグロビンが混じるということは、赤血球が壊れているということになります。ではどうして赤血球が壊れるのでしょうか?

赤血球の寿命

当然のことですが赤血球にも寿命があります。100~115日間の寿命を終えて古くなった赤血球は脾臓で壊されます。その後ヘモグロビンも処理されて、肝臓を経由して最終的には腸管内に排出されます。

このように通常ヘモグロビンは尿中に流れ込むことはありません。問題は赤血球が何かの理由でたくさん壊れてしまい、処理が間に合わなくなった場合です。

では次に赤血球が異常に壊れてしまう(=溶血)の事例の1つとしてタマネギ中毒を紹介しましょう。

タマネギ中毒

みなさんの中にはペットに手作りフードやおやつを与えている方も少なくないと思います。この時、注意しなければならないのが「与えてはいけない食材」です。

イヌに与えてはいけないものはいくつかありますが、その代表はチョコレートです。ではタマネギによる中毒についてどれくらいのオーナーが認識されているでしょうか?

ペットオーナー3,313人を対象にしたアンケートがあります。このうちイヌの中毒としての認知度はネギ類が98%、チョコレートは91%と大変高い結果でした(アニコム 島村麻子 2012年)。

イヌにネギ類(タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラなど)を与えてしまうと、その中の成分によって赤血球が壊されてしまいます。すなわち溶血が起こり赤血球の中からヘモグロビンが出てきます。脾臓や肝臓で処理できる量を超えてしまう場合、血色素尿となります。

実際にはネギ類そのものを愛犬に与えることはまずありません。タマネギ中毒のほとんどの場合は、食材としてちょこっと入っているハンバーグやピラフなどを与えたり、ちょっと目を離した隙に愛犬が食べてしまったというものです。

ちなみにネギ類に含まれる有害成分は加熱調理によってもその作用は失われませんのでくれぐれもご注意下さい。

筋色素尿

筋色素とはあまり聞き慣れないことばですが、私たち動物の筋肉の赤色の素になっている色素「ミオグロビン」のことをいいます。したがって、筋色素尿はミオグロビン尿とも呼ばれます。

ミオグロビン

ミオグロビンはヘモグロビンと同様に鉄(Fe)を含むタンパク質で、共に酸素と結合する性質をもっています。ヘモグロビンは赤血球の中にあり、酸素を体中に運びます。ミオグロビンは筋肉の中にあって、運ばれてきた酸素を貯蔵する役目をしています。

筋肉が動くには大量の酸素が必要です。動物が走り終わった時にハーハーと激しい息をしたり、イヌではパンティングを行うのはこのためです。「呼吸→肺→血流→筋肉」というルートで酸素が供給されています。

運動量が多い動物(ウマ、シカ、クジラなど)や魚(マグロ、カツオなど)の肉の色が赤く濃いのはこのミオグロビンを多く含んでいるためです。常に酸素を筋肉中に貯めているわけです。

酸素の供給と消費

通常、私たちヒトや動物が運動をしても「呼吸(肺)→筋肉」というルートで十分な酸素が供給されます。しかし、とても激しい運動や長時間の遊びなどで酸素の供給が追い付かなくなる場合もあります。

この時はどうなるのでしょうか?不足分を補うために筋肉(ミオグロビン)に貯蔵しておいた酸素を取り出して使用することができます。したがって、日頃からの適度な運動を行い、筋肉を維持するのはとても大切なことです。

筋肉の損傷

このように筋肉中の赤色色素であるミオグロビンは大切なタンパク質であることが判りました。この筋肉が事故(挫傷、圧迫)や筋炎などの理由で損傷し、ミオグロビンが漏れ出して尿に混じったものが筋色素尿です。

事故に遭遇する率自体は大変低いものですし、激しい運動といっても公園やドッグランで走り回る程度では筋色素尿が発生することはほぼありません。あまり神経質になることはなく愛犬との運動を楽しんで下さい。

冒頭でも述べましたがペットシーツに赤色やピンク、チョコレート色のオシッコを見つけらすぐに動物病院で見てもらって下さい。簡単な検査で血尿か血色素/筋色素尿かを判定してもらえます。

次に大切なことは獣医師にしっかりと情報を提供することです。昨日~おとといに何を食べたか?どこでどれくらい遊んだか?何かケガはしなかったか?などです。

日頃からオーナーのみなさんはペットの生活をしっかり観察して、もしも赤いオシッコを見つけても慌てず対応してあげて下さい。

執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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