獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの病気編: テーマ「ヘルニア」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
最近の人気の犬種は小型犬ですが、中でも胴が長く脚が短いビーグルやコーギーはなんとも可愛いものです。今回はこれら胴長の犬種によく見られる椎間板ヘルニアなどの「ヘルニア」がテーマです。

ヘルニアいろいろ

ヘルニアといいますと椎間板ヘルニアが最もポピュラーですが、実はこの他にもいろいろな種類があります。

ヘルニアの種類

○食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニア
…腹腔にある胃が横隔膜の隙間から胸腔に入り込むもの

○臍(さい)ヘルニア
腹圧によっておへその部分が外側に膨らむもの、「でべそ」のこと

○鼠径(そけい)ヘルニア
鼠径部の隙間から腹部の腸が飛び出るもの、いわゆる「脱腸」

○会陰(えいん)ヘルニア
肛門周囲(=会陰)の筋肉の隙間から腸や膀胱が押し出されるもの

○椎間板ヘルニア
背骨と背骨の間の椎間板が飛び出して神経を圧迫するもの

ヘルニアとは?

ここで何かに気付かれた方はいらっしゃいませんか?どれも共通点として臓器の一部が他の部位に押し出されていたり、はみ出ていたりしていますね。

 実はヘルニアとは疾病の名前というより、『臓器の一部が裂け目や隙間から飛び出ている状態』を指すことばでした。

椎間板ヘルニア

ここで改めて椎間板ヘルニアについて確認しましょう。椎間板とは背骨と背骨の間にある板状の軟骨のことをいいます。ちょうど背骨の衝撃吸収クッションのようなものです。

 このクッションである『椎間板の一部が飛び出して神経を圧迫する状態』を椎間板ヘルニアと呼んでいます。

ヘルニアいろいろ

椎間板ヘルニアの好発犬種といいますと、やはり胴長系が頭に浮かびます。Kyoto AR獣医神経病センターの中本裕也らが椎間板ヘルニアの発生状況について報告しています(2018年)。

発生率と好発犬種

中本らは2009年~2016年の期間に神経病関連の検査を実施したイヌ4,131頭を対象に調査を行いました。その結果、椎間板ヘルニアと診断されたのは1,856頭で全体の44.9%ということでした。

 椎間板ヘルニアはイヌの神経系疾病のおよそ半分近くを占めているということになります。

 また好発犬種のベスト3は次のとおりです。2位以下を大きく離してミニチュア・ダックスフンドの発症率が圧倒的に高く、全体の半分以上の結果でした。

   第1位:M・ダックスフンド(54.1%)
第2位:トイ・プードル(5.0%)
第3位:チワワ(4.3%)

 この調査結果では、椎間板ヘルニアは小型犬の病気にように見えますが、そのようなことはありません。日本では小型犬の飼育頭数が多いという背景があるためで、海外では大型犬の罹患率の方が高いという報告があります。

軟骨異栄養性犬種

ペットの健康雑誌で椎間板ヘルニアの特集記事を読みますと、「軟骨異栄養性犬種」ということばが出てきます。何やら難しい響きです。

 私たち動物は体が成長する時期に骨も同時に伸びます。骨は先端部に成長する部分があり、まずはここで軟骨が増殖します。そして軟骨にカルシウム(Ca)が沈着することで硬い骨になってゆきます。

 生まれつきこの軟骨の増殖のしくみに障害があり、結果として骨が伸びにくいという遺伝性の疾病を「軟骨異栄養症」といいます。見た目として手脚が短いという特徴を示します。

イヌにおいてこの疾病の原因となる遺伝子をもっているものにダックスフンド、ビーグル、コーギーがあります。すなわち、これらが「軟骨異栄養性犬種」です。

ちょうど脚が短くてちょこちょこ歩くしぐさがかわいい軟骨異栄養性犬種は、生まれつき軟骨である椎間板の変性が起こりやすいというリスクをかかえているわけです。

2タイプの椎間板ヘルニア

先ほど、椎間板ヘルニアは小型犬でも大型犬でも発生する疾病であると述べました。椎間板ヘルニアは原因や背景の違いによって、2つのタイプに分けられます。

急性型:小型犬

イヌの骨の成長期は生後2か月~2歳くらいです。ちょうどこの期間に椎間板の変性が進み、2~7歳の成犬期に発症のピークをむかえるものがこのタイプです。

 好発犬種は前述のダックスフンドなどの軟骨異栄養性犬種であり小型犬が中心です。いわゆる「ハンセン1型」といわれるものです。

慢性型:大型犬

これに対してイヌの老化に伴って、椎間板の柔軟性や弾力性の低下が背景となるものが慢性型です。「ハンセン2型」といわれるもので、椎間板の劣化は高齢期に入る8歳くらいからじわじわと進行します。

 このタイプは遺伝とは関係なく、どのような犬種にも発生します。小型犬に限らずボルゾイやラブラドール・レトリバーなどの大型犬でも見られます。

椎間板ヘルニアの症状

 
神経の圧迫による激しい痛みと脚の麻痺を主徴とする椎間板ヘルニアですが、発症のはじまりではあるサインが見られます。

初期の症状

この頃の特徴として、背中を触ると驚いて「キャン!」と鳴く、とよくいわれます。これは、外部からの圧によって飛び出している椎間板が神経に触れて痛みが発生するためです。

 これにより、今までとても好きだった抱っこや散歩を嫌がるようなしぐさを見せます。また、触られると痛いために近寄ってくるヒトを咬んだりする場合もあります。

 オーナーのみなさんにとっては、突然愛犬のキャラクターが変わってしまったように見えるため、とても心配になられるのではないでしょうか。

重度の症状

背骨の神経の麻痺が進行すると主に後脚の麻痺が重度になります。これにより起立不能や歩行困難、さらにはトイレまでの移動ができないため、その場で排泄してしまうことになります。

進行レベル1~5

椎間板ヘルニアの進行に合わせて、次のような5段階の症状レベルが設定されています。みなさんの愛犬に何か該当する点はありませんか?

 レベル 1: 運動を嫌う、背中を丸める、背中を触ると痛がる
  〃  2: 後肢がふらつく
  〃  3: 後肢を引きずり前肢だけで前進する
  〃  4: 尿のモレを確認する
  〃  5: 後肢の感覚が消失する(つまんでも無反応)

背景と予防策

最後に椎間板ヘルニアの発生背景とそれに対する予防策を考えましょう。

背景と原因

 遺伝的に軟骨の変性が起きやすい犬種があること、これ以外にも背骨の老化が関係していることは述べました。

 直接的な発症のきっかけとなるのが激しい運動です。体をねじるとか、ジャンプ後の着地の衝撃などがあげられます。このような背骨への過大な負荷は椎間板だけでなく、背骨自体の損傷にもつながるため十分な注意が必要です。

 なお、毎日の散歩などの日常生活レベルの運動には問題ありません。椎間板は高性能クッション材として、その役目を十分果たすようにできていますのでご安心下さい。

予防策

 椎間板ヘルニアの予防策としては、背骨への負担の軽減という点から肥満の防止が大切です。必要以上のカロリー摂取(特におやつの与え過ぎ)に注意して、日常生活内での規則正しい運動を行いましょう。まさに肥満は万病の元です。

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今回は馴染み深い椎間板ヘルニアを中心に解説しました。他の疾病と同様に、ヘルニアも早期発見・早期対応が愛犬の負担軽減につながります。そのためにもオーナーのみなさんには愛犬への観察力がますます求められます。

執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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