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【獣医師が解説】ペットとの生活編: テーマ「問題行動」

 獣医師が解説  

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
みなさんと一緒に生活をしているペットたちですが、かわいい反面時々困った事をするなぁと感じることはありませんか?今回のテーマはペットの問題行動です。

動物の行動

ペットはもちろん、動物園のライオン、牧場のウシなども含めて動物の行動にはそれぞれ意味があります。まずは少し動物の行動について見てみましょう。

維持行動

維持行動とは生命を維持するための行動をいいます。エサを食べ水を飲む、トイレをする、眠るなど生活の中のごく一般的な行動です。

社会的行動

社会的行動とは動物が仲間どうしでとる行動のことです。子イヌや子ネコがじゃれ合って遊んだり、散歩中に対面したイヌが互いのにおいを嗅ぎ合うなどです。

生殖行動

生殖行動には発情時のマウンティングや交尾があります。

異常行動

異常行動とは通常では見ることがない行動をいいます。ずーとクルクル回ったり(旋回運動)、部屋の中の狭い隙間に入り込む(認知障害)といった行動があげられます。

他にもいろいろありますが、動物行動学という学問的には今回のテーマである「問題行動」は含まれていません。

異常行動と問題行動

同じようなことばですが、異常行動と問題行動はまったく別物です。

異常行動とは

異常行動とは正常行動の反対語になります。動物医療の立場からみて、通常では観察されない行動をいいます。

脳腫瘍や神経疾患、認知機能の低下など脳の疾患・障害を原因とするものが主になります。

問題行動とは

問題行動は「飼い主が容認できない行動、動物自身または飼い主の財産を傷つける行動のいずれかに該当する行動」と定義されています。

表現が硬いのでかみ砕いていいますと「オーナーが困ったなぁと思う行動」となります。すなわち問題行動の判定者は獣医師ではなく、オーナー自身です。

オーナーが判定者ということは、同じ行動をとっているペットでもオーナーによっては判定結果が異なる場合があります。

例えば、訪問者に対して必ず吠える子イヌAとBがいるとします。
子イヌAのオーナーは「ごめんなさい…」と対応しました。 
→この場合、問題行動として認識されています。
子イヌBのオーナーは「うちの子、元気でしょーっ!」と対応しました。 
→この場合、正常行動として認識されています。

このように同じ行動でもオーナーの感性(センス)によって問題行動か否かが決定します。このことがしばしば、ペット絡みのご近所トラブルに発展することになります。

イヌの問題行動

では、実際にはどれくらいの割合でオーナーはイヌの問題行動に困っているのでしょうか?

問題行動の認識率

麻布大学の立石佳奈子が東京都および神奈川県において、犬の飼育状況に関するアンケートを実施しています(2014年)。

調査結果として「問題あり」と回答したオーナーの割合は36.9%でした。

問題行動の内容

問題行動を認識しているオーナーが、困ったなぁと感じている行動として最も多いものは「ムダ吠え」で半数以上の56.7%でした。次いで「分離不安」や「咬みつき」などがありました(複数回答あり)。

海外との差

どうやら日本では30~40%のオーナーがイヌの問題行動を認識しているようです。これに対して、海外(米国、英国、オーストラリア)では、オーナーの80%以上が問題行動ありと回答しています(Voith 1985年、Campbell 1986年、Adamsら1989年)。

これついて報告者の立石は、飼育されている犬種の違いの他に「飼い主の問題行動に対する認識の違いの現れである」と考察しています。

日本と海外のペットオーナーの感性(センス)の差が、問題行動の認識率の差となって現れているのかもしません。

なぜイヌは吠えるのか

先ほどのアンケート結果において、イヌの問題行動のトップはムダ吠えでした。そもそもなぜイヌは吠えるのでしょうか?

欲求不満

まずは自分の欲求が満たされない場合、そのアピールとしてイヌは吠えます。散歩に行きたいとか、一緒に遊んでほしいといった要求の表現です。

分離不安

分離不安とはオーナーとのふれあいが無く、寂しく不安がる状態をいいます。部屋で留守番をする、庭につなぎっ放しで飼われているなどの場合です。

外出から帰ってきたら、部屋の中の家具やクッションが壊されていたり(破壊行動)、トイレを失敗していたりといった事はありませんか?これらも吠えることと同様に不安な気持ちの表現の1つです。

その他

ほかにもイヌが吠える理由はさまざまあります。

・別のイヌの吠え声につられて吠える(社会的促進)
・家の窓越しに誰かを見つけて吠える(縄張り意識)
・来客のチャイムや知らない人に対する恐怖心
・病気やけがの痛み
・老犬の夜鳴き  など

オーナーにとっては「ムダ吠え」と感じますが、イヌにとっては何かしらの理由があり、ムダに吠えている訳では無いようです。あくまでも問題行動の判定者はオーナーです。

問題行動の背景

オーナーが問題行動と感じるかどうかはさておき、ペットがそのような行動を身に付けるには2つの背景があります。

生得的因子

生得的(せいとくてき)とは「先天的な、生まれつき」という意味です。具体的には小型犬種は吠えやすいとか、性ホルモンの作用によるマウンティングなどです。

習得的因子

これに対して習得的とは「経験や学習により身に付けたもの」という意味です。従ってここではヒトの作用が大きく関係してきます。

オーナーが我が家流のしつけを行った(学習)、逆に何もしつけをしなかった(社会化不足)というものがこれにあたります。

社会化の重要性

最後に動物の社会化についてまとめてみます。

社会化

社会化とは動物が「適切な社会的行動を学習すること」です。この社会的行動とは冒頭にも出ましたが、仲間との遊びなどを通して、その動物間でのルールを身に付けることをいいます。

野生動物においては同じ動物だけで社会が形成されていますが、ペットの場合はそこにヒトとの関係が加わります。すなわち、イヌやネコは人間社会で暮らしてゆくためのルールも同時に身に付ける必要があります。

社会化期

動物が社会的行動を学習するのには時期が決まっており、これを「社会化期」とよびます。この時期を逃してしまうと、後からルール学習のやり直しはできません。動物の社会化学習は期間限定ということです。

この社会期ですがイヌでは生後4週齢~12週齢、ネコでは3週齢~10週齢といわれています。(ただし、別に法律で決まっているものではありませんので、出典により社会化期の表記には少々のばらつきがあります。)

ペットの場合、社会化期には子イヌどうし、子ネコどうし、そしてヒトとの正しいふれあいが重要になります。

社会化期にはどこにいる?

では、この社会化を身に付ける大切な時期をペットたちはどこで暮らしているのでしょうか?答えとしてほとんど場合、ペットショップで生活しています。

環境省が「全国ペット小売業協会アンケート調査」というものを実施しています(H18年度)。その結果の一部を紹介しましょう。

●ペットショップへの平均仕入れ日齢
…イヌ(42~43日齢)、ネコ(43~44日齢)
●ペットショップでの平均販売日齢
…イヌ(60.1日齢)、ネコ(62.1日齢)

このことから子イヌや子ネコはペットショップで平均して2~3週間ほど飼育されていることが判ります。

すなわち社会化期の大部分はペットショップで過ごしており、私たちがペットを購入した時点では、社会化を学習する時期はほとんど終わっていることになります。

問題行動の背景には、ペットショップでのヒトとの正しく十分なふれあい(=社会化学習)の有無が大きなウエイトを占めていたようです。

ペットの問題行動はオーナーの飼育放棄を招くことも少なくありません。このことから近年はペットショップの役割の重要性が指摘されています。

今回はペットの問題行動について解説をしました。確かに困った行動は動物が行っているのですが、その責任は100%ペットにあるわけではないことが判って頂けたと思います。

ペットの問題行動には2人のオーナー、すなわちペットショップオーナーとペットオーナーの知識と感性(センス)が大きく関係しています。

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(以上)

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