獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編: テーマ「シニアオーナーの散歩」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
いつもこのコラムでは、ペットの健康管理についていろいろと話をしています。今回は視点を変えて、ペットオーナーの健康づくりについて考えてみようと思います

愛犬との散歩

散歩はイヌの健康維持に大切であることは、みなさんも十分にご存知です。と同時に、私たちオーナーの健康管理にも大変役立っています。

以下、ペットフード協会の調査結果(2017年)をもとに、愛犬との散歩についてのデータを見てみましょう。

イヌを飼うきっかけ

みなさんがイヌを飼うようになったきっかけは何でしょうか?一番多い理由は「生活に癒し・やすらぎが欲しい」で32.6%でした。

これを「運動不足の解消のため」と回答した世代別の割合を見てみるとおもしろいことがわかります。全世代の平均は7.2%とさほど高くはなく、20代~60代ではおよそ5%前後しかありません。

しかし70代では13.0%にもなっています。どうやらシニアオーナーは、自身の健康管理を愛犬とリンクさせて生活されているようです。

では実際に70代のシニアオーナーは、愛犬との散歩にどれくらいの時間をかけているのでしょうか?

散歩の頻度

愛犬との散歩は楽しいものですが、みなさんは一週間に何回くらいの割合で散歩に連れて行っていますか?アンケート結果の平均は週あたり7.3回となっていますので、ほぼ1日に1回の頻度のようです

これに対して70代オーナーでは次のような回答になっています。

○3回未満(16.5%) 
○3~7回(41.0%) …1日に1回かそれ以下
○7~14回(6.0%) …1日に1~2回
○14回~(36.5%) …1日に2回以上

毎日の散歩は当然ながら、1日に2回以上の散歩をしている70代オーナーは全体の1/3以上もおられました。

散歩の時間

次は1回の散歩時間についてです。全体平均は25.6分間ですので、だいたい30分間という感じです。

70代オーナーでは30分間未満(40.5%)、30~60分間(44.5%)、60分間以上(15.0%)という回答でした。1時間以上かけてゆっくりと愛犬との散歩を楽しんでおられるようです。

このようにシニアオーナーは散歩頻度、散歩時間ともイヌと接する時間が長い傾向が認められます。愛犬との散歩を通じて自分自身の健康を意識されているということが判ります。

シニア層の筋肉量

私たちヒトは健康のために、毎日何かしらの運動をすることが勧められています。ここでは運動と筋肉の関係を紹介しましょう。

ロコモティブシンドローム

近頃テレビで「いつまでも元気に歩きたい」といったコピーで筋肉維持を応援するサプリメントのCMを見かけます。そして商品名には「ロコモ▲▲▲」というのが多い気がします。

ロコモとはロコモーション、すなわち「歩行」のことです。ロコモティブシンドロームとは足腰の衰えによって歩行が困難になり、要介護のリスクが高まる状態をいいます。

運動と筋肉量の関係

大阪医科大学の谷本芳美が70代のシニア男女合計394人を対象に定期的な運動と筋肉量の関係を調べています(2005年)。

定期的に運動を行っているシニアと行っていないシニアとの体の筋肉量を比べた結果、男性ではなんと四肢(腕と脚)で1.2㎏、全身では2.4㎏もの筋肉量の差がありました。

●四肢の筋肉量
  …運動をしている(19.1㎏)、していない(17.9㎏)
●全身の筋肉量
  …運動をしている(43.2㎏)、していない(40.8㎏)

なお、女性では筋肉量の差はほとんどありませんでした。これは毎日の家事や買い物などの作業がシニア女性の定期的な運動になっているということかもしれません。

体の筋肉は加齢に伴って減少します。筋肉量の減少は毎日の生活を送る上で基礎体力や歩行能力の低下を招きます。すなわち定期的な運動を行うことは、ロコモティブシンドロームの予防に役立つということになります。

イヌとの散歩の効果

定期的な運動といってもスポーツジムに通ったり、スイミングを行うのは億劫なものです。手軽なところとして愛犬との散歩の運動効果を確認しましょう。

脚筋力のアップ

ロコモティブシンドローム予防の第一は脚の筋力アップです。立命館大学の岡本直輝らが愛犬家にとってとてもうれしい報告を行っています(2001年)。調査概要は次のとおりです。

 ●対象 52~59歳の主婦 合計26人
 ●3つのグループに分けて調査を実施
非運動群(11人)、イヌとの散歩群(6人)、ウォーキング群(9人)
 ●1日の歩行数
非運動群 …約5.000歩
イヌとの散歩群 …約7,000歩
ウォーキング群 …約7,500歩
 ●脚筋力測定
非運動群 …14.5回
イヌとの散歩群 …18.2回
ウォーキング群 …18.9回

ここでの脚筋力はチアーテストという方法で測定しています。これはイスに座って素早く立ってまた座るという繰り返し動作を30秒間で何回できるかというもので、15回以下は脚筋力不足と判定されます。

1日の歩行数ではイヌとの散歩群はウォーキング群より500歩ほど少なかったのですが、脚筋力では同等の運動効果が得られていました。

これはイヌとの散歩には止まったり動いたりするステップワークが求められるため、オーナーは敏捷性(びんしょうせい)が向上し、その結果として脚筋力が強化されたためと岡本は考察しています。
  

骨密度のアップ

加えて岡本は骨密度も測定しています。一般的に骨密度が低いとされる基準値は1,490(m/sec)ですが、非運動群が約1,500、イヌとの散歩群とウォーキング群では約1,540と同等の値でした。

骨密度とは骨のスカスカ度合のことで、骨粗しょう症の判定に用いられます。骨密度を高く維持するにはカルシウムなどの栄養補給と、骨への適度な負荷・刺激が必要です。イヌとの散歩は骨へのちょうど良い刺激になっているということです。

愛犬との散歩はスポーツウェアーに着替えなくても気軽にできて、ウォーキングと同じくらいのトレーニング効果が得られる大変優れた運動であるということでした。

シニアオーナーの健康づくり

今や「人生100年時代」と言われるようになりました。このためには生活習慣病の予防は欠かせません。

生活習慣病

生活習慣病とは食事、運動、休養、飲酒喫煙などの生活習慣が発症や進行に深く関係している疾病をいいます。糖尿病・がん・高血圧症などがその代表で、以前は「成人病」と呼ばれていました。

生活習慣病発症の3大原因として①老化 ②体質 ③生活習慣があります。この生活習慣の中に「運動不足」が含まれており、厚生労働省では日常生活での目標歩数を「1日1万歩」としています。

目標歩数

現状として日本人の1日平均歩数は、男性がおよそ8,200歩、女性が7,300歩とのことです。1日1万歩と言われてもなかなか難しいものですので、国は「プラス1,000歩」を当面目標として定めています。

この1,000歩ですが、歩行時間としてはおよそ10分間ですので「プラス10分間の散歩」で十分目標達成となります。

無理のない楽しい散歩

先ほど述べました統計では、愛犬との平均散歩時間は30分間でした。毎日散歩をされている方や、1日2回ほどの散歩を楽しんでいる70代オーナーは十分な歩数を確保されていると考えられます。

しかしここでご注意です。「今日は雨降りだけど散歩は毎日行かなければ…」とか「朝から少し膝が痛むけど散歩に連れて行かなければ…」などの「行かなければ散歩」は禁物です。

シニアオーナーにとって、歩数目標の達成が散歩の目的ではありません。ゆったりとした気持ちで愛犬との散歩を楽しんで下さい。

公園を歩いている間に散歩仲間との会話もはずみます。散歩はオーナーの健康づくりだけでなく、あなたの愛犬にとっても筋力アップと骨の強化に役立っているのです。

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