老犬

愛犬・愛猫の死を迎えたときにすべきこと

「生」を受け、命あるものに平等に与えられているのは「死」です。
「生」が喜びならば「死」は悲しみと表現されるように、命の儚さを痛感することほど切ないものはありません。
さて、今、あなたの目の前にいる愛犬や愛猫もいつかは死を迎える場面に遭遇します。
いつどのような状況で最期の日が来るのかは、誰にもわかりません。
老犬や老猫の時期を経て「その日」を迎えるのか、病気を患ったり突然不慮の事故に遭遇したり……、いつかは訪れる「その日」を心のどこかで覚悟しなければなりません。
「そんな予想もつかないことを考えるなんて、ナンセンス!」とばかりに避けてしまうことは、どうでしょうか。
人も犬も猫も誰の身にも起こる死を現実のこととしてしっかりと受け止め、もし「その日」を迎えたら少しでも冷静に対処できるように、心の準備をしておくことが必要のように思います。

ということで、今回は愛犬・愛猫が亡くなった時、飼い主であるあなたがすべきことをいっしょに考えていきましょう。

愛犬・愛猫との別れ

犬の平均年齢は14.36歳、猫の場合は15.04歳(平成28年度調べ)で犬は7歳前後から、また猫は10歳前後から高齢期に入ると環境省やペット食品協会のHPに記載されています。
高齢期に入ると病気にかかりやすくなりますが、犬や猫によっては平均寿命よりも短命であったり長寿だったりと個体差があります。
平均寿命を生ききることなく、生まれてすぐに命を亡くすこともありますし、成長期の活発な頃に突然亡くなるケースもあります。
また、交通事故や災害で亡くなるなど…死を迎える時期も状況もさまざまです。

「そんな悲しいことは考えたくないわ」と思う気持ちも十分に理解できますが、辛くて悲しいことでも現実問題として受け入れざるを得ません。
愛犬や愛猫と過ごしたたくさんの有意義な時間が与えられたからこそ、最期はそのお返しに感謝の気持ちを込めてお見送りしてあげたいものですね。
飼い主であるあなたが愛犬や愛猫にしてあげられるお別れの仕方がきっとあるはずです。
「ああしてあげればよかった」「あんなことはしたくなかった」と後悔するようなことがない「我が家らしい」お見送りの仕方で天国に送り出してあげましょう。

愛犬や愛猫が亡くなったときの安置方法

では、愛犬や愛猫が亡くなってしまったら、ご遺体を前に飼い主さんは何をすればいいのでしょう。

死後硬直

命が果てて亡くなると同時に筋肉がその機能を失うことで起こる現象が、死後硬直です。
犬や猫の場合、季節や気温、状況や個体の大きさにもよりますが、死後数十分から2時間ほどすれば死後硬直
が起きてきますので、硬直しきらない間にご遺体の処置をしてあげましょう。
心臓、横隔膜、咬筋、前足、後ろ足へと硬直していき24時間ほど続きます。
またその後、硬直は解け始め体が柔らかくなってきますが、明らかに内臓などは腐敗してきますので、手元に置いておける時間は限られています。
手術後や怪我をして亡くなった場合は、傷口からの腐敗が通常よりもはやく進むと考えてください。

また、個体によっては死後硬直がほとんどないケースもあります。

ご遺体のお手入れ

①瞼や口元を閉じる
●目や口を開けたまま亡くなる場合があるので瞼や口を閉じる
(この場合、瞼は簡単に閉じない場合があるので、無理に閉ざす必要ありません)
●口元はやわらかい布製の紐などでくくっておき、閉じたのを確認したら紐をほどく

②体を身ぎれいにする
●堅く絞ったタオルなどで体を拭く
●やさしくブラッシングをして被毛を整える
●水分が体毛などに残ると体の腐敗をはやめてしまうことがあるので、できる限り水分を取る

③肛門などに脱脂綿を詰める
●死後硬直が解けると体はまた柔らかくなるが、その際、体液が体から漏れ出すので肛門に脱脂綿をしっかり詰めて、棺となる箱などの底に体液が浸透しないようにする

④手足を曲げる
●手足が伸び切った状態の場合は、手足をやさしく胸の方に折り曲げて寝ているときのような状態にする
(土葬や火葬にする場合に箱に入れますが、その際に手足が伸びたままだと上手く収まらないため)

⑤保冷剤やドライアイスなどで体を冷やす
●室温などにもよるが、ご遺体の腐敗がなるべく進まないようにする
●腐敗の進みやすい頭やお腹を冷やすことで、安置の時間を少なからず伸ばすことができる
●ドライアイスを使用する場合、2日に1度の交換をした場合で夏場は4~7日くらい、冬場で7~10日くらいが安置の目安となる
●保冷剤は頻繁に交換する
(冬場に室内を暖房などで暖めた状態にしておくと、ドライアイスや保冷剤の使用時間は通常より短い)

⑥ご遺体を収納できる棺になるものを用意する
●棺に適しているのは、厚手のしっかりとした箱・ダンボール・木箱など
●新聞紙・シーツ・バスタオルなどを準備する
《棺に納める手順》
◇箱(棺となるもの)の内側の底に新聞紙を引く
◇新聞紙の上に保冷剤もしくはドライアイスを置く
◇ドライアイスの上にバスタオルを敷き、その上にご遺体を置く
◇ご遺体のお腹側とお尻側にタオルで包んだ保冷剤もしくはドライアイスを置く
◇ご遺体の上にシーツもしくはバスタオルを掛ける

⑦添え物
●愛犬や愛猫が好きだったおやつやお花を添えてあげる
※ただし、火葬をする場合は、燃やすことができないものがありますので注意。
 ゴム・プラスティック製のおもちゃ
 缶・プラスティック・ガラス製の食器など
(火葬をご依頼される際に、業者の方にどのようなものを入れることができるのか事前に確認してください)

愛犬・愛猫が亡くなったときは、土葬?それとも火葬?

亡くなったときに、いちばん気になるのは「ご遺体」の取り扱い方です。
どのような方法でご遺体を処理すればよいのか、ご遺体を目の前にして悩まれる方も多いと思います。
自宅にずっと置いておくわけにはいかないですし、庭の片隅に埋めればよいのか、はたまた庭の無い戸建てやマンション住まいとなると、どうすればよいのか悩むところですね。
一般的にご遺体の処理として行われているのは、土葬と火葬です。

土葬の場合

ペット(犬・猫・鳥・うさぎ・金魚)などは、死後「一般廃棄物」として取り扱いされます。
自宅の私有地ならば埋葬することは可能です。
しかし、いつもの散歩で立ち寄っていた公園、遊び慣れた河川敷、いっしょに行ったアウトドアの森など、思い出の場所に埋めてあげたいと思う飼い主さんがおられるかもしれませんが、実は、それらはすべて不可能です。
先ほども述べましたが、「一般廃棄物」として称されるものは、私有地以外に埋めると「不法投棄」として処罰されます。

しかしながら、いくら私有地に埋葬できるからと、そのまま土に埋めると腐敗臭などの問題が生じます。
また、よほど深く穴を掘って埋葬しないことには、腐敗臭の問題に加え寄生虫の発生や、野良猫やカラスなどに掘り返されるケースも考えられます。
ですので、ご遺体をそのまま埋めるケースは現在ではかなり減っています。

土葬以外の方法となると、やはり一般的なのが火葬です。

火葬の場合

・お住まいの地方自治体
一例:「飼い犬・飼い猫などの死体の収集」は、各担当の環境事業所へ電話で申し込む。
※(各自治体での担当部署の名称には違いがありますので、地域の行政にお問合せください)
受け渡し:ご遺体の引き取りもしくは直接持ち込みなど
焼却方法:一般廃棄物として他のゴミと一緒に焼却される場合が多い
骨上げ:不可
返骨:不可
費用:数千円程度

一般的な自治体のペットの火葬は上記のような実態です。
ペット専用の火葬をする自治体の存在自体が現時点でとても少ないです。
そのような中、ペットの火葬を取扱っている自治体がありましたので、ご紹介しておきます。
宮城県仙台市と神奈川県横浜市をひとつの事例として参考にしてください。

仙台市環境整備公社が運営
宮城県仙台市自治体のペット専用斎場(HPより抜粋)
●仙台市内で飼われていて亡くなったペットの火葬を受け付けている
●個別火葬と合同火葬を行っている

手数料(1頭につき)

※ペットの遺骨は、仙台市愛玩動物納骨堂に有料で納めることができます。

横浜市自治体健康福祉局(HPより抜粋)
●個別火葬の場合は、すべて戸塚斎場に直接持ち込む
●火葬時間は30分から80分程度、ペットの重量により異なる
●焼骨は、個別火葬の場合は持ち帰ることが可能
●合同火葬は、持ち帰り不可。ただし、焼骨は一般社団法人横浜ペット霊園協会が管理運営する共同埋葬施設に埋葬される

【個別火葬料金】

【合同火葬料金】

・ペット火葬業者、ペット霊園の火葬
ペットの火葬依頼といえば、自治体以外の取り扱い以外にもっとも多いのが、ペット火葬業者やペット霊園です。

業者によってシステムに多少の差がありますので、依頼する際にはよく相談されて納得したうえで申し込まれることをお勧めします。
下記は大阪府下の某ペット霊園の火葬の参考例です。


                     

・「訪問火葬(出張火葬)」
●ペット火葬業者、ペット霊園などが行っている火葬方法
●火葬炉を搭載している特殊車で、自宅や指定された場所へ出向むき、無煙無臭で有害物質も発生させにくい構造の車で火葬を行う

筆者の知人は、先日、20年来の家族である猫を亡くしました。
火葬は、ホームセンターのサービスコーナーで受け付けてもらい、ご遺体の収集、個別火葬、ご自宅へお骨を納めてもらって3万円ほど。
「丁寧に扱ってもらえて安心できた」ということでした。

特に、火葬後、返骨してもらえるものと思っていたらご遺骨を戻してもらえなかったという例も多数ありますので、依頼をするときはトラブルが発生しないように、しっかりと事前打ち合わせをしておきましょう。

個別火葬の場合は、個体ごとに火葬しますので返骨の希望があればご遺骨を手元に引き取ることができますが、
合同火葬の場合は、他の動物たちとともに火葬しますので、骨が混ざってしまうこともあり返骨されることはまず不可能です。

「ペット葬」

家族と同じように過ごしてきた愛犬や愛猫を簡略的なお見送りではなくて、人が亡くなった時と同じようにお葬式をあげたいと思っている飼い主さんも年々増えているとのことです。
そこで、そんな飼い主さんのニーズに応えているのが、ペット葬祭業やペット霊園が執り行う「ペット葬」です。
亡くなった時点で業者に連絡を入れると、棺を用意してくれたりお葬儀の段取りを進めてくれたりと、飼い主さんの負担を少しでも軽減できるようにサポート体制で取り組んでいるところが多いようです。

依頼できる内容
●ご遺体を持参もしくはお迎えの段取り
(霊園へ直接持ち込むか、もしくは霊園スタッフがご遺体のお迎え)
●葬儀・火葬・納骨・埋葬・供養
(お寺さんと連携し、読経・法要などをして供養)
●本堂、火葬炉、収骨室、待合室などの設備の整った霊園での見送り
ご返骨、個別墓地や納骨堂納め、共同墓地など選択可
●法要
四十九日、一回忌、三回などの法要可能
共同墓地に埋葬されたペットに関しても僧侶を伴う方法を執り行っている
  
※葬儀一切の料金や内容については業者によって異なりますので、個別にお問い合わせください。

業者や霊園をどのように探せばよいのかわからないときは、電話帳・インターネット検索、さらには、動物病院や寺院などでも火葬業者や霊園と連携しているところもあるようですから尋ねてみるのもいいですね。
また、ネットなどの口コミサイトを参考にしてみるのも一考です。
愛犬や愛猫が亡くなって慌ててしまい、安易にどこでもいいからと申し込み、「こんなはずじゃなかった」と後悔する声もありますから、そこは慎重に選ぶことをお勧めします。
できれば、事前に信頼のおける業者をリストアップしておくとよいでしょう。

お骨上げをしたご遺骨、どうすればいいの?

さて、火葬したあとのお骨をどのようにすればいいのか参考例を記しておきましょう。

*埋葬
・ペット霊園などの建物内に納骨やお墓を購入して埋葬する
・ペット霊園などの納骨堂にお骨を預けて永代供養する

*骨壺を自宅に置いておく(いつもそばに置いていたいと思う場合)
・小さな仏壇や祭壇に水、写真、おやつ、花などを飾ってあげる
・仏壇が無くてもいつも目につく場所に飾り、生前のように話しかけたり祈ったりしてあげる

*アクセサリーとして身に着ける
・お骨の一部をペンダントロケットの中に遺骨を入れて、いつも身に着ける

*散骨
・ペットの散骨を規制する法律はないが、適していない場所もあるので十分に配慮すること
・散骨の意味は、「自然に還る」というものなので、骨のままではなく粉骨して撒くこと

散骨の場合は、海や森、山や木々の根元などに撒き、自然とともにこれからも生き続けていくのだという気持ちでいてあげましょう。

犬は亡くなってからの届け出が必要!

*市区町村への届け出
お見送りも終わると、寂しさがドッとこみ上げてきそうですが、犬の場合は亡くなってから30日以内に
犬を登録した市区町村に死亡届けを提出する義務があります。
届け出を怠ると「狂犬病」の予防注射のお知らせが例年と同じように郵送されてきます。
死亡届けの提出がないと継続して犬を飼っているという判断をされてしまい、狂犬病の注射をしなかったとみなされ罰則を科せられることがありますので、必ず届け出をしましょう。
 
届け出に必要なもの
・飼い主さんの住所、氏名
・犬の死亡年月日
・登録番号
・犬鑑札、狂犬病予防注射済み票
・死亡届け(各市区町村の申請書に記入する)
 
*登録団体への届け出
ジャパンケネルクラブ(JKC)などの犬種登録団体の血統書を持っている犬の場合は、亡くなったことを伝え、血統書を返却する必要があります。

愛犬、愛猫とお別れしたあとの気持ちの整理

愛犬や愛猫の死に直面し、どのようにお別れをすればよいのかを考えたとき、業者さんにお願いしてペット葬で送ってあげたいとか、静かにひっそりと見送りたいとか・・・・・・それは、飼い主さんお一人おひとりによって違います。
何が正しいのか、どのようなやり方がよいのかという決まりごとは何もありません。
飼い主さんが愛犬や愛猫のことを思いやりながら、お見送りしてあげることにルールなどは無いのです。
ただ、文中にも記しているように、私有地以外にご遺体を埋めるということはしてはいけないことですし、ずっとご遺体を手元に置いておくということは、無理です。

天国に旅立つ愛犬や愛猫に「今までありがとう!」という感謝の気持ちをもって、心穏やかに見送ってあげたいですね。
そんなふうにつつがなくお別れができるように、納得できるやり方がみつかることを願っています。

愛犬や愛猫が亡くなったあと、すぐに立ち直ってふだん通りの生活に踏み出せる飼い主さんはそういるものではありません。
家族として絆を深め、パートナーとして寄り添い暮らした日々をそうあっさりと拭い去れるものではありません。
「時間が解決してくれる」とはよく耳にしますが、それは人それぞれです。
深い悲しみに包まれる日々、苦しい思いを抱える人、これからどう日々を過ごせばいいのか心の迷路に入ってしまったり、また、寂しさを抱えながらなんとか毎日を乗り切ろうとしたり……と、なかなか立ち直ることはむずかしいかもしれません。
けれど、あなたの心の真ん中にはいつも愛するあなたの犬がいます、猫がいます。
思い出がいつもあなたを包んでくれています。
愛犬や愛猫が生きられなかった日々を一日でも長く生きて、思い続けてあげましょう。

そして、今、あなたのそばで元気な姿をみせてくれている愛犬や愛猫たちがいるのなら、どうぞ、楽しい思い出をいっぱい作ってあげてください。

あなたの愛犬や愛猫が、いつまでもあなたのそばで元気に暮らせますように。

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愛犬に生肉を与え続けて10年の川瀬隆庸が監修

株式会社帝塚山ハウンドカム
代表取締役 川瀬 隆庸

  • 社団法人 日本獣医学会 正会員 会員No.2010172
  • 財団法人 日本動物愛護協会 賛助会員(正会員)No.1011393
  • ヒルズ小動物臨床栄養学セミナー修了
  • 小動物栄養管理士認定
  • D.I.N.G.Oプロスタッフ認定
  • 杏林予防医学研究所毛髪分析と有害ミネラル講座修了
  • 正食協会マクロビオティックセミナー全過程修了

愛犬の健康トラブル・ドッグフード・サプリメントなどアドバイスをいたします。

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