獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編: テーマ「おすすめの夜フード」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
愛犬にとって食事は1日2回ですので、夜ごはんはとても楽しみなものです。今回は夜フードにおすすめの栄養成分がテーマです。

夜フードの心配事

ペットオーナーのみなさんにとって、愛犬の夜フードの心配事は「肥満」ではないでしょうか。

肥満の原因は?

肥満の原因となる栄養成分と聞くと、まず脂質(脂肪)が浮かびます。答えとしては正解ですが、もう1つとして炭水化物があります。

炭水化物を摂取すると血糖値が上がります。これを受けて膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、次に血糖値は下降して元の値に戻ります。

前のコラムで「夜中はインスリン抵抗性が高い」ことをお知らせしました。これは、夜はインスリンの効き目がやや弱いため、昼よりも多くの量が分泌されているということでした。このインスリンが肥満にも関係しているのです。

インスリンの分泌指令

インスリンは膵臓で産生されますが、その膵臓に分泌指令を出しているのは小腸です。食後に血糖値が上昇すると小腸にあるセンサーが作動し、膵臓に対して「インスリンを出しなさい」という指令ホルモンを分泌します。

この小腸から分泌される指令ホルモンを「インクレチン」といい、GLP‐1(グルカゴン様ペプチド‐1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の2種類があります。

インクレチンのしごと

この指令ホルモンであるインクレチンですが、大きく分けて次の3つの働きがあります。

インスリン分泌促進

インクレチンの中心となる作用はインスリンの分泌促進です。イヌを用いた試験ではGLP‐1およびGIPともに、血中濃度は食後2~3時間でピークを示し、その後ジワリジワリと低下してゆきます。

このパターンに沿ってインスリンが分泌され、血糖値も調節されています。

食欲抑制

インクレチンの内GLP‐1は、脳に直接作用して食欲を抑える作用があります。また胃に働いて、食べた物を腸へ送り出すスピードを遅くします(胃排泄抑制作用)。

このようにGLP‐1は食欲全体を抑えることにより、肥満を防止してくれる働きがあります。

肥満促進

対してもう1つのインクレチンであるGIPには、腸管から吸収したエネルギーを脂肪に供給する作用があります。これにより、体脂肪は効率よく成長・蓄積するため、肥満を応援する結果となります(脂肪蓄積作用)。

このようにフード中の炭水化物は即効性のエネルギー源であるだけでなく、小腸から分泌されるインクレチンというホルモンのおまけの作用により、肥満を誘導する原因の1つにもなっているのです。

夜中の肥満リスク

日本獣医生命科学大学の小田民美らは、イヌの1日のインクレチン分泌量について報告しています(2015年)。

食欲抑制作用があるGLP‐1は昼間(約68pmol/L)よりも夜中(約78 pmol/L)の方が多く、肥満促進作用を持つGIPは昼も夜も同じ量(約2,500pg/mL)が分泌されているとのことです。

夜は運動量が少なくエネルギーの消費量も多くありません。これに加えて、脂肪の蓄積を促進するGIPは昼間と同じ量が分泌されています。このことから、イヌにとって夜は肥満リスクが高い時間帯ということになります。

インクレチンと夜フード

では、肥満が気になりだした愛犬、もうすでに肥満になってしまった愛犬に与える夜フードはどのようなタイプのものがよいのでしょうか。インクレチンを通して考えてみましょう。

代表的なフードタイプ

市販のドッグフードにはいろいろなタイプがあります。前述の小田民美は標準フードと以下4タイプの代表的なフードを健康なビーグル6頭(5~8歳)に朝夕2回給与して、分泌されるインクレチン量を比較しています(2014年)。

○低脂肪タイプ
○高脂肪タイプ
○高繊維・高タンパク質タイプ
○高繊維・高脂肪タイプ

さて、この中で肥満にブレーキをかけて、最も夜フードにむいているものはどれでしょうか?

GLP-1分泌促進

肥満対策として、まずは過剰な食欲は抑えたいものです。そのためには食欲抑制作用をもつGLP-1をより多く分泌するフードタイプが望まれます。

この点においては高繊維・高タンパク質、および高繊維・高脂肪のものがあてはまります。2種類に共通している点として「高:繊維」がGLP-1分泌促進に適していることが判ります。

GIP分泌抑制

次に体脂肪を成長・蓄積させるGIPの分泌量はなるべく抑えなければなりません。この点では「低:脂肪」と「高:繊維、高:タンパク質」の2タイプが適していました。

低脂肪フード=肥満予防というのは、まんざらイメージだけではなくこのようにインクレチンを介しても正しいことが判ります。

おすすめの夜フード

最後に愛犬の肥満対策から考える、おすすめの夜フードをまとめてみましょう。

最も広く利用されているドライフードの場合、「低脂肪タイプ」「食物繊維配合タイプ」といったものが適しているでしょう。

また昼間も夜中も筋肉の素となるタンパク質は最重要栄養素です。手作りフード派のオーナーのみなさんへは、脂肪分控えめ+良質のタンパク質という点から「赤身肉」の活用をおすすめします。

朝と同じものを食べていても、愛犬は夜フードの後、生理的に太りやすい状態になっています。夜フードのキーワードは低脂肪、食物繊維、タンパク質の3つでした。

愛犬の体重が気になりだしたオーナーのみなさんは、このキーワードを活用して、夜フードの中身を少し変えてみるのも肥満予防策の1つになるでしょう。

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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