獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの病気編: テーマ「アトピー性皮膚炎」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
ヒトとペットのつながりが深くなってきている現代では、疾病や問題点にも共通性が認められます。今回は幼い時期のとても大きな困り事である、アトピー性皮膚炎についていくつかの情報を提供します。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎という病名は、もうすっかりメジャーなものになりました。ヒト(赤ちゃんや幼児)でもペットでも、皮膚が赤くなりとてもかゆいというイメージがあります。

定義

少し堅苦しくなりますが、アトピー性皮膚炎とは「遺伝的素因が関与する炎症とかゆみを伴うアレルギー性皮膚疾患」と定義されています。

「遺伝的素因」とはズバリの遺伝病ではないのですが、発症に遺伝(遺伝子)が関係しているということです。詳しくは後ほど説明します。

アトピー性皮膚炎はアレルギーの一種です。アレルギーの原因物質(アレルゲン)が皮膚に付着して内部に侵入することにより、体の免疫システムが過剰に反応するという病気です。

診断方法

ペットにおけるアトピー性皮膚炎の発症率は、海外の調査でおよそ10~15%くらいですが、残念ながら国内での詳しい報告はありません。感染症や腎臓疾患などと比べて、その発症割合ははっきりとしていないのです。これはなぜでしょう?

その理由は、ペットのアトピー性皮膚炎は確定診断方法が確立していないためです。糖尿病のように、血液検査の結果血糖値が○○以上、といった何かはっきりとした診断のための数値目安がないのです。

診断ワード

アトピー性皮膚炎に関する研究報告を読んでみますと、診断のためのワードがいくつか出てきます。それらを以下にまとめてみます。

○発症年齢が低い …初発はおよそ3歳まで
○アレルギー …多種の原因物質(アレルゲン)がある
○皮膚バリアの低下 …アレルゲンが侵入しやすい
○耳介、前肢 …病変の好発部位
○炎症とかゆみ …典型的な症状

先ほど、アトピー性皮膚炎には確定診断方法がないと述べました。動物病院では、上記のようなキーワードをもとに、総合的に診断しているということになります。

アトピー犬の全国調査

2012年に全国の動物病院996病院、アトピー性皮膚炎のイヌ2,338例を対象にした大規模な調査結果が報告されました(荒井延明ら スペクトラム ラボ ジャパン(株))。とても貴重なデータですので見てみましょう。

発症年齢と犬種

一般的に、イヌのアトピー性皮膚炎の発症年齢は6か月齢から3歳、平均年齢は2.56歳といわれています。荒井らの報告でも、生後6か月~3歳の占める割合は全体の62.6%でした。

次に犬種との関係ですが、主なところでは以下のようになっています。
○小型犬
…チワワ(2.06歳)、シー・ズー(3.28歳)
○中型犬
  …柴(2.64歳)、ビーグル(2.67歳)
○大型犬
  …ラブラドール・レトリーバー(2.68歳)
    ゴールデン・レトリーバー(2.69歳)

これらの中で、発症年齢が最も高かったものが雑種で3.83歳、逆に最も低かったものはフレンチ・ブルドックで0.98歳でした。フレンチ・ブルドックは他の犬種と比較して、早くにアトピー性皮膚炎を発症する傾向が高いということです。

症状と発症季節

アトピー性皮膚炎の症状といえば、脱毛、ふけ、かゆみなどが思い浮かびます。複数回答として最も多い症状はかゆみ(91.9%)、次いで発赤(70.5%)、発疹(43.2%)、脱毛(42.0%)、落屑/ふけ(36.1%)という回答でした。これらの他にも、乾皮や脂漏、発臭(におい)などもありました。

このような皮膚炎が確認される季節としては、秋~冬よりも春~夏に多い傾向がありましたが、「年中見られる」という回答が全体の67.6%でした。

オーナーの喫煙

オーナーのみなさんの中でタバコを吸われている方はおられますか?現在では喫煙者本人はもちろんのこと、同一空間にいる非喫煙者の受動喫煙/副流煙のリスクも問題になっています。

荒井らはオーナーの喫煙とイヌの臨床症状との関係についても報告しています。タバコを吸わないオーナーと比較して、喫煙オーナーに飼育されているイヌでは、脱毛およびくしゃみの発症率が高くなっているようです。

ニコチンやタールなどのタバコの煙成分が、愛犬の皮膚にとってのアレルギー原因物質(アレルゲン)の1つになっていると考えられます。

関係のない項目

飼っているイヌがアトピー性皮膚炎の場合、家中のすべてのものが原因になっているのではないかと心配になります。

みなさんが住まれている地域/地区、フードの形態(ドライフード、ウエットフード)、室内での飼育時間割合、他のイヌとの同居、他の地域への旅行経験は発症とは特に関係は確認されませんでした。

どうやら、アレルギーの原因物質はこれらの他にあるようです。

発症の背景

アトピー性皮膚炎はアレルギーの1つです。ここでは、発症の背景についてもう少し深く考えてみましょう。

アレルゲン

アレルゲンとはアレルギーを引き起こす原因物質のことをいいます。食物アレルギーにおける小麦や卵、金属アレルギーでいうニッケルといったものです。

イヌのアトピー性皮膚炎の場合では、ノミやダニ、前述のタバコの煙などさまざまなものがアレルゲンになっています。

この中で特に注目されている1つに、マラセチア感染というものがあります。マラセチアとは、ヒトや動物の皮膚に常在する酵母様の真菌(=カビ)をいいます。

イヌの外耳におけるマラセチア保有率は60%以上という調査結果があります(千葉隆司ら 東京都健康安全研究センター 2007年)。このように、マラセチアはイヌやネコの脂漏性皮膚炎や外耳炎への関与が報告されており、アトピー性皮膚炎の悪化因子の1つとしても考えられています。

皮膚バリアのしくみ

アレルギーの発症は、皮膚からアレルゲンが侵入して、その結果免疫を担当する細胞と出会うことから始まります。しかし、基本的に健康な皮膚では、外部から微生物などのアレルゲンが侵入することはできません。

これは皮膚の一番外側にある角化層という部分がブロックしてくれているためです。このバリア部分で主役を演じているのが、フィラグリンというタンパク質です。

アトピー性皮膚炎の患者の場合、角化層にこのフィラグリンが形成されないことが判っています。この結果、アレルゲンは皮膚の内部に簡単に侵入し、同時に水分は失われてしまいます。

ヒトにおいてこの大切なタンパク質フィラグリンを作る/作らないは、フィラグリン形成遺伝子をもっている/もっていないで決まります。ヒトのアトピー性皮膚炎患者の20~30%はこの遺伝子に変異があり、フィラグリンが上手く作れないということです。

冒頭のアトピー性皮膚炎の定義のところで、「遺伝的素因」というのがありました。フィラグリン形成遺伝子の有無がこの遺伝的素因の1つにあたります。

アトピー性皮膚炎の対応策

アトピー性皮膚炎はアレルギーの1つですので、完治させることは大変難しい疾病です。従って、対策の基本方針は「悪化を防ぐ」ということになります。ここでは、現在動物病院で実施されているいくつかの対応策を紹介します。

症状が軽度な場合

皮膚炎の症状が比較的軽い場合、以下の3つが行われています。

○投薬 …抗炎症剤、ステロイド剤
○スキンケア …シャンプー、保湿剤
○サプリメント …必須脂肪酸(オメガ3、オメガ6)

この中でスキンケアは、マラセチアやタバコの煙、ハウスダストなどアレルゲンを取り除くという点で有効です。しかし、シャンプーや石けんは皮膚の脂質を洗い流すため、逆に皮膚のバリア機構を弱めてしまう作用もあります。

良質なシャンプー剤の使用と同時に、皮膚の水分蒸発を防ぐ保湿剤の併用がポイントになります。

症状が重度な場合

皮膚の病状が進行し重症化している場合は、シクロスポリンやインターフェロンの投与、さらに免疫療法などが追加されます。

シクロスポリンとは免疫抑制剤の1つで、過度のアレルギー反応を軽減してくれます。日本や世界中でイヌのアトピー性皮膚炎治療薬として使用されています。

またインターフェロンとはウイルス感染症やがん治療に用いられるもので、近年はアトピー性皮膚炎への応用も広がっています。

免疫療法

近年、幼児の食物アレルギー対策としてアレルゲンを避けるのではなく、逆に「少しずつ少しずつ食べて慣れさせる」という考え方が始まっています。別名、減感作療法とも呼ばれています。

イヌのアトピー性皮膚炎に対してこの免疫療法を応用する場合は、希釈したアレルゲンを定期的に皮膚に注射します。しっかりとした治療計画が基本になっていますので、専門の獣医師の元で実施される必要があります。

今回は、アトピー性皮膚炎についての入門編といった内容をお知らせしました。アトピーとは本来「奇妙な」とか「とらえどころのない」といった意味のことばであり、原因や発症のしくみなどまだまだ判っていないことがたくさんあります。

アトピー性皮膚炎は完治が難しい病気ですので、重症化させないことがポイントになります。そのためにもオーナーのみなさんは、正しい知識と症状に対する観察力を身に付けることが求められます。

次回以降、私たちの身近にあるアレルゲンや治療方法などについて詳しくお知らせしてゆく予定です。

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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