獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編: テーマ「牛乳の困りごと:アレルギー」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
前回、牛乳は栄養バランスがとれていて、カルシウムの含有量・吸収率にも優れた食材であるという話をしました。しかし、牛乳にはアレルギーとお腹がゴロゴロするという困りごとがあります。今回は牛乳アレルギーとその対処方法についてお知らせします。

食物アレルギー

アレルギーとは、原因物質が体内に入り込むことによって免疫システムが過剰に反応することです。この原因物質を「アレルゲン」といいますが、食物の成分がアレルゲンとなるものが食物アレルギーです。

原因食材

食物アレルギーの原因食材として、ヒトとペットには次のような共通性が見られます(今井ら 2002年、村上 2016年)。

○ヒト …鶏卵(38.3%)、乳製品(15.9%)
○イヌ …牛乳・乳製品、小麦(69%)
○ネコ …牛乳・乳製品、魚(80%)   
( )内の数値はアレルゲン項目中に占める割合

食物アレルギーでは、「いつも食べているもの」がアレルゲンになりやすいようです。牛乳や乳製品がともに高い割合を占めていますが、これは牛乳が私たちの食生活に無くてはならない食材であるという意味でもあります。

牛乳アレルギー

食物アレルギーでは、原因食材を食べた直後に反応が見られます。発症までの時間は一般的に直後~15分くらいですので、「即時型アレルギー」ともいいます。

ヒトの牛乳アレルギーは、乳幼児の食物アレルギーとして珍しいものではなく、発症率は2~3%といわれています。生後3か月くらいから発症し、症状はアレルギーの中でも比較的軽いものです。

また、2~3歳までには自然にアレルギー反応は見られなくなり、発症が成人まで続くことはまれです。しかし、牛乳は子どもたちの発育に不可欠な栄養素を含んでいますので、牛乳が飲めないというのは大きなハンディです。

牛乳中のアレルゲン

ここでは牛乳アレルギーの原因物質について考えてみましょう。牛乳はおよそ87%が水分ですので、アレルゲンは残りの固形成分の中に含まれています。

乳タンパク質

アレルギーは体の中に侵入してくる外敵をやっつける免疫システムでもあります。侵入してくるものを体が「外敵」と認識する対象としては、タンパク質がその代表です。

これより、牛乳に含まれる乳タンパク質がアレルゲンの候補として考えられています。乳タンパク質は固形成分(全体の13%)の1つで、牛乳全体のおよそ3%を占めています。

牛乳中には数十種類というタンパク質が存在していますが、大きく分けてカゼインとホエータンパクという2種類から成ります。では、牛乳中のアレルゲンはこのどちらにあるのでしょうか?

千葉大学の中野㤗至らは、牛乳のアレルゲンを見つけ出す目的で次のような調査を行いました(2010年)。

○検査対象
…牛乳アレルギーで診察を受けている乳幼児115人
(男67人、女48人:6か月齢~184か月齢)
○血液検査
…カゼイン、ホエータンパクに対する抗体検査

血液検査の結果、牛乳アレルギーの子どもたちの97.3%(107人)がカゼインに対する抗体をもっていることが判りました。このことから、牛乳中のアレルゲンとしてカゼインが大きく関わっているのでは、と考えられています。

カゼイン

2つの乳タンパク質についてもう少し解説しましょう。カゼインは乳タンパク質全体のおよそ85%を占めています。カゼインは前回紹介したカルシウムの吸収を応援するCPP(カゼインホスホペプチド)の成分でした。

このカゼインはさらにαs-カゼイン,β-カゼイン,κ-カゼイン,γ-カゼインに分けられます。

ホエータンパク

ホエータンパクは乳タンパク質の残り15%を占めています。「ホエー」とは「乳清」ともいわれるもので、ヨーグルトの上澄みの液体のことです。(栄養成分として大切なものですので捨てないで下さい。)

ホエータンパクの中には、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、血清アルブミンといったものが含まれています。

現在、多くの研究者からカゼインではαs1カゼイン、ホエータンパクではβラクトグロブリンの2つが牛乳のアレルゲンと考えられています。

アレルゲン低減乳製品

海外の報告によりますと、乳児の2.5%は1歳までに牛乳アレルギーを経験するとのことです。栄養的には牛乳と同等で、なおかつアレルギーのリスクが少ない食品は無いものでしょうか?

乳酸菌発酵

駒沢女子短期大学の下橋淳子らはスキムミルクを乳酸菌で発酵させることにより、牛乳中のアレルゲンがどれくらい低減するかという試験を行いました(2001年)。試験結果を確認してみましょう。

●材料
・市販のスキムミルクを溶かした原料乳
●発酵処理
・原料乳にヨーグルトの乳酸菌を加えて発酵処理
●アレルゲンの測定結果
・発酵前のアレルゲン量を100として比較
・αs1カゼイン量
…37.5℃、24時間発酵により17.0%まで減少
・βラクトグロブリン量を測定
…37.5℃および45℃、24時間発酵により消失

この結果から、牛乳中のアレルゲンは乳酸菌のはたらきによって分解されることが判ります。牛乳アレルギーの原因物質を低減する方法として、乳酸菌による発酵は有効な方法であるといえます。

いろいろな乳製品

牛乳を原料にして乳酸菌で発酵させた食品には、ヨーグルトや乳酸菌飲料などさまざまなものがあります。法律的には乳酸菌発酵させた乳製品は、次の3つに分類されていますので少し確認しておきましょう(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令:厚生労働省)。

○発酵乳(いわゆるヨーグルト)
…無脂乳固形分8.0%以上、生菌数1,000万以上のもの

○乳製品乳酸菌飲料(ヤクルト、カルピスなど)
…無脂乳固形分3.0%以上、生菌数1,000万以上のもの
…菌が生きているものと加熱殺菌されたものがある

○乳酸菌飲料(KAGOMEのラブレなど)
…無脂乳固形分3.0%未満、生菌数100万以上のもの
…発酵後に甘味料、果汁、香料などを加えて飲みやすくしたもの

ここでいう無脂乳固形分とは乳脂肪以外の固形成分(=タンパク質と炭水化物)、生菌数とは1mLあたりの生きている乳酸菌数をいいます。

 なお「ヨーグルト」というのは一般な呼び名であり、正式名称ではありません。みなさんの家庭の冷蔵庫に入っている発酵乳製品は、どれにあてはまるのでしょうか。ラベルをよく見ると書いてありますので一度確認してみて下さい。

乳製品のアレルゲン量

スーパーやコンビニでは、乳酸菌によるいろいろな発酵乳製品が販売されています。下橋らは牛乳に含まれるアレルゲン量を100として、市販の乳製品ではどれくらいアレルゲンが低減しているかを報告しています(2001年)。

●αs1カゼイン量
・発酵乳 35~94%
・乳製品乳酸菌飲料 0~78%
・乳酸菌飲料 0~44%

●βラクトグロブリン量
・発酵乳 0~99%
・乳製品乳酸菌飲料 (検出されず)
・乳酸菌飲料 (検出されず)

この結果から次の2点が確認されました。
① 商品によりアレルゲン残量にはバラツキがある
② 乳製品乳酸菌飲料および乳製品では、アレルゲン残量が少ない傾向を認める

ここでちょっと注意する点があります。アレルゲンの測定結果では、発酵乳(=ヨーグルト)にはアレルゲンがたくさん残っているような感じがします。
しかしこれは、発酵乳の定義自体が「無脂乳固形分8.0%以上」と高く設定されていることが関係しています。

牛乳と比較すると、ヨーグルトをはじめとする発酵乳製品は、乳酸菌のはたらきによってアレルゲンが分解されていると考えて良いでしょう。

加えて、乳酸菌発酵はカルシウム量に影響を与えません。100gあたりのカルシウム含有量は牛乳110㎎、ヨーグルトは120㎎です。この2つの食材はカルシウム源として同等の効果をもっています。

ペットに牛乳を与えたいけれどもアレルギーが心配、というオーナーのみなさんは少なくないと思われます。このような場合、ヨーグルトの活用というアイデアがあります。乳酸菌による発酵乳製品は、牛乳アレルギーのリスクを低減させた食材といえます。

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(以上)

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