犬種

ボーダー・コリーのこと、もっと知りたい!― 人気の犬種シリーズ ―

「アジリティー」ということばをご存知でしょうか。
一般社団法人JKC(ジャパン ケネル クラブ)のHPには【犬と人間が調和をとりながら、コース上に置かれたハードル、トンネル、シーソーなどの障害物を定められた時間内に、着実に次々とクリアしていく競技】と、記されています。
この競技では、ハンドラーと呼ばれる調教師(飼い主など)の声や動きから何をすればよいのかを判断する力や、走ったり跳んだりターンしたり止まったりという運動能力が問われます。
2016年、2018年のJKC競技会ではラージクラスで堂々の1位に輝き、2017年にはミディアムクラスでも1位を獲得している犬種、それがボーダー・コリーです。
この競技は、今やヨーロッパを中心に世界各地で開催され世界選手権も行われています。

また、エクストリーム・チャンピオンシップという競技があります。
エクストリームのHPには【犬を愛し犬と暮らすすべての人々が、愛犬の特性や心理により深い理解を示すとともに、より深い愛情をはぐくんでもらうために開催される飼い主と愛犬によるドッグスポーツです。1999年より開始され、あくまで飼い主とその愛犬が一緒に楽しむことを前提としています。】と、あります。
ここでも、総合やハイスピード部門でボーダー・コリーが素晴らしい成績を収めています。

さらに、日本フリスビードッグ協会のHPでは【フリスビードッグの魅力は、人と犬がフリスビーを共通のゲームとして遊べるドッグスポーツです。犬は人と遊ぶことが大好きです。その一つとして、フリスビードッグがあります。 フリスビーディスク一枚あれば、庭・公園・ビーチなどどこでも楽しむことが出来るでしょう。又、お互いの信頼関係も深まり、素晴らしいライフスタイルを築き上げられることになります。】と、紹介されています。
2018年大会の公式オープン戦の結果を見ると、全国から集まったフリスビーの達人ならぬ達犬たち。
参加の多くがボーダー・コリーとはいえ、1位から13位までを独占し、下位に至るまで殆どを占めています。

さて、今回ご紹介する「ボーダー・コリー」は、運動能力を高く評価されている犬種ですが、それだけではなく、知的能力の高さも犬種ナンバー1ではないかといわれています。
それでは、どのような魅力を持つ犬種なのかを一緒に見ていくことにしましょう。

ボーダー・コリーってどんな犬?

※FCI:国際畜犬連盟は1911年、ドイツ、オーストリア、ベルギー、フランス、オランダの5か国で設立された畜犬団体(ケネルクラブを含む)の国際的な統括団体

ボーダー・コリー誕生ストーリー

ボーダー・コリーは、8世紀後半から11世紀にかけてヴァイキングがスカンジナヴィア半島からイギリスへ持ち込んだトナカイ用の牧羊犬(牧畜犬)がルーツといわれています。
小説・映画・アニメなどで有名な『名犬ラッシー』のモデルになっているのは「ラフ・コリー」という犬種ですが、ボーダー・コリーが作出されるまでには、このラフ・コリーの先祖との交雑もあったとされています。

さて、ボーダー・コリーの英語表記は「Border Collie」。
スコットランド、イングランド、ウェールズの境界周辺の羊を管理するために品種改良され、そこから犬種名が付けられたようです。
こうして在来犬種などとの交雑を繰り返しながら、19世紀末頃にボーダー・コリーとして安定しました。

英国の『ニュースダイジェスト』の記事に【現存する純血種のボーダー・コリーは、すべて雌犬メグと雄犬ロイと呼ばれる犬の子孫です。1893年、この2頭の子どもである名犬ヘンプは、「空を横切る流星のように飛んでくる、羊の世話をするために生まれてきたような犬】と、記事に書かれています。
ヘンプをはじめ牧羊犬の主な仕事は、羊などの群れの誘導、盗難などの見張り、オオカミやコヨーテなどの野生動物から家畜を守ることですから品種改良を繰り返す中で、たぐいまれな運動能力と作業能力が培われていったのでしょうね。

その一方でラフ・コリーがショードッグなどに選出され、その優雅なスタイルや顔たちでFCI(国際畜犬連盟)に公認されたにもかかわらず、ボーダー・コリーは牧畜犬としての作業能力を重視されていたためそのような公の競技などから取り残されていました。
しかし、作業犬用競技会である「シープドッグ・トライアル」「ワーキング・トライアル」や、人間と犬が共存するためのルールを学ぶ服従訓練競技会である「オビディエンス・トライアル」での活躍のおかげで、ボーダー・コリーは数々の賞を獲得するようになり、その名を世界に知らしめるようになったのです。
そして、ついに1987年、遅まきながらボーダー・コリーはFCIに公認されました。

外見上の特徴

体格

ボーダー・コリーは中型犬で、理想の体重は平均で14㎏から20㎏といわれています。
平均体高は50㎝から55㎝ですが、個体によって平均を前後する子もいます。
運動量が多く筋肉質でしっかりとした体格をしています。
ただし、摂取カロリーが消費カロリーよりも多くなりバランスが崩れれば、肥満体型になりやすいので注意が必要です。

ブレーズと呼ばれる白い模様が顔の中央部分に入っている個体が多いですが無い個体もいます。
耳は垂れ耳・半立ち・立ち耳・垂れ耳と半立ちの片方を所有する個体などなどさまざまです。
目の色は幼犬の頃はブルーがかっていますが、成長とともに茶褐色になっていき中には片方ずつの色が違うバイアイの個体もいます。

被毛 ― 色

ホワイト&ブラックの組み合わせの個体が多いのですが、被毛の色に制限がないためホワイトの入ったレッド・ブルー・チョコレート・セーブル(地色の中に先端部分だけ黒い毛が混じっている)・ブルーマール(黒・白・灰がまだらに入っている)などの色の組み合わせがあり毛色の種類は豊富です。

被毛 ― 長さ

下毛と上毛のある二層構造(ダブルコート)仕立てで、被毛の美しさには定評があります。

ラフコート(長毛)
・首のまわり、後ろ足の内側、尻尾の被毛がふさふさとして豊か
・長毛種は毛玉ができやすいので、まめにブラッシングをすること

スムースコート(短毛)
・スベスベとした手触りのよい感触
・短い毛が服などに刺さるように入り込んでしまう
・トリミングの必要がない

表情

顔の中心に白いブレーズが入っているのが特徴で、その幅の狭い広いで表情もさまざまに見えます。
女の子は男の子よりもやや柔らかい表情だという飼い主さんの声もあります。
羊をまとめることのできる鋭い視線とは反対にデレッと甘えて緩んだ表情や知的能力の高さを持ちながらも、ちょっとドジな一面もあって妙に照れた表情をするなど、まったく相反する表情を見せることがボーダー・コリーの魅力のひとつなのかもしれませんね。

性格

世界中で行われている競技会でもその運動能力の高さが認められているように、ボーダー・コリーを語るとき、多くの人が運動神経の凄さを挙げていますが、さて、性格はどうでしょう。

・好奇心に溢れている
・観察力、洞察力が鋭い
・従順
・明るくて陽気
・作業能力に長けている
・責任感が強い
・フレンドリー

など。
このように長所をたくさん兼ね備えたボーダー・コリーの良さを引き出すのは、飼い主さんのしつけ方と愛情のかけ方次第かもしれませんね。

かかりやすい病気と対策

ボーダー・コリーのようなコリー系統には、他の犬種には見られない病気が発症する場合がありますが、いずれも遺伝によるものです。

コリー・アイ(コリー眼異常)

ボーダー・コリーに限らず、コリー系統の犬種やシェットランド・シープドッグなどに多く見られる常染色体の劣性遺伝によって目の病気のことで、眼底を包む脈絡膜(みゃくらくまく)という膜に欠損や薄い部分が発生します。

●症状 
・網膜剥離や眼底での出血(黒目が赤く見える)
・視神経の障害
・物に頻繁にぶつかる
・生まれながらに眼球が小さい(小眼球)など
    
●予防・対処方法
この病気を飼い主さんが見つけることは難しいとのことですが、物に頻繁にぶつかるようなことがあれば、病院で診察を受けましょう。

*3セロイドリポフスチン症(CL症)
遺伝性疾患で脳内の老廃物を除去する酵素が欠損することにより、中枢神経にこの老廃物が蓄積し続けるために神経細胞が冒される病気。
1980年にオーストラリアで最初のCL病が確認され、日本では2002年頃から随時確認されています。

●症状
・ふらつき、転倒
・歩行困難、起立困難
・段差の乗り越え、ジャンプ不可能
・異常な興奮状態、過度な活動、狂暴性の現れなどの精神錯乱状態
・方向感覚を失う
・トイレの場所がわからなくなる
・呼びかけに無反応
・記憶喪失
など。
   
●予防・対処
1歳以降に発症することが多く2歳までには上記のような症状が現れると、急速に進行します。
残念ながらこの病気に対する治療法は現在ありません。

飼育のワンポイント

散歩や運動

ボーダー・コリーは室内でおとなしく飼育する犬種ではないため、30分や1時間程度の散歩だけではエネルギーやストレスを発散させることは難しいといわれています。
おもいきり走ること、ジャンプすること、ボールやフリスビーなどのキャッチなど、この犬種が持っている本来の資質を活かす運動が求められます。
ドッグランやアウトドアなどのアクティビティーをとおして飼い主さんといっしょに走り回って運動させてあげることが、ボーダー・コリーの満足感をより高めることでしょう。

ただし、幼犬の時期はハードな運動よりも毎日の散歩で社会性を身に着けることを優先させましょう。
他の飼い主さんや犬たちと出会う社交の場ですから、散歩をとおして社会性をしっかりと身に付ける良いチャンスです。
そうした社会性を身に付けることと並行して、徐々に運動量も増やしていきましょう。
平坦な道から傾斜のある道や階段利用を加えたり、マンネリなコースにならないようにすることも必要ですね。
 

食事

パワフルな犬種だけに食欲旺盛ですが、犬は与えれば与えるだけ食べてしまいます。
食欲が旺盛で一気に食事を食べてしまう傾向があり、食べ足りない様子を見せたとしても必要以上に与えてはいけません。
大切なのは摂取カロリーと消費カロリーのバランスです。
バランスが崩れると肥満になりやすくなりますから、運動量の見直しや質の良い食事を心がけましょう。
体重が必要以上に増えると股関節形成不全、糖尿病などを引き起こします。

また、しつけを重要視するあまり、ご褒美のおやつを与えすぎるという傾向があります。
ボーダー・コリーは知的能力の高い犬種ですから、おやつを再三与えなくても褒めてあげることでしっかりしつけることができるといわれています。

手入れ

【被毛】
飼い主さんたちのコメントをネットで見ていると「バリカンで短くしたら毛質が変わってバリバリになってしまった」というのが多くありました。
ご家庭で手入れをする場合は、汚れやすいお腹、手足、パッド(足の裏)、尻尾、顔まわりなどの部分的なカットがお勧めです。
カットについて心配なときは、信頼のおけるトリマーさんに相談してみるのもいいですね!

【清拭】
運動量の多いボーダー・コリーは散歩や外遊びをしたあとなどは、ほこりやゴミなどが皮膚や被毛に溜まってしまいがちです。
散歩や外遊びから帰宅したら、濡れタオルや使い捨てのウェットタオルなどで付着した汚れや口の周り、目ヤニ、耳垢、お尻周りをきれいに拭き取って清潔にしてあげましょう。
清潔に暮らすことは気持ちのいいものですし、また、見過ごしがちな体の変化に気づけて健康管理にもとても役立ちます。 

 

注意点

ジャンプ力に長けた犬種ですから、家の中や庭に設置されているフェンスなどを飛び越えてしまうことがあり、事故に繋がってしまいます。
危険な箇所への出入りを食い止めるはずのフェンスも、ボーダー・コリーには通用しないことを知っておきましょう。

また、牧羊犬としての習性から動くものに反応して自転車、オートバイを追いかけて交通事故に遭ったり、また走ったり逃げたりする子どもを追いかけてしまうことがありますので、戸外ではリードに繋いで事故の無いようにしましょう。

しつけ

先日、NHKの『ダーウィンが来た!』という番組で、「最高の相棒!イヌと人」というテーマの放送がありました。
その中で印象に残ったのは「イヌと人は見つめ合うことで、まるでヒトのお母さんと赤ちゃんのような信頼関係が結べるという。多くの動物の中で、人に近い類人猿すらももたないイヌと人だけの独自の能力だ」という箇所です。
目を合わせ見つめ合うとオキシトシンという成分が増えるのだそうで、これは人以外では犬だけに備わっているというのです。

「しつけ」とは、怒鳴る、叩く、蹴る、食事を与えない、外へ放り出すなどの行動を伴って行うものではありません。
それは「虐待」です。
もちろん、人間社会で生きていくうえでの社会性を教えることは大切なことですが、だからといって絶えず「これはしつけだ!」とばかりに傷めつけるというのはいかがなものでしょうか。

トレーニングを繰り返していくことで犬はルールを覚えていくのです。
これは、私たち人も同じです。
幼児期に何もかも一人であれもこれもできません。
毎日の生活の中で家族や周りの人に教わったりマネしたりを繰り返しながら習得していくのです。
できなくて当たり前だと大きな心で受け止めることが、育児のコツ。
これは犬も同じです。
トレーニングを積み重ねた結果として「しつけ」の実が生り育つのです。

「しつけ」と「虐待」は絶対に違います!

ボーダー・コリーをとおして考える

今回のテーマを書き進めていくと「ボーダー・コリー」の運動能力がいかに優れているのかがわかりましたが、その一方でボーダー・コリーが抱える遺伝性疾患の重さを感じました。

『JBCHN(JAPAN BORDER COLLIE HEALTH NETWORK)』という組織があります。
【活動内容は、ボーダー・コリーとの暮らしが日本よりずっと長いオーストラリアやアメリカなど、研究の進んでいる国のクラブや研究者達から情報や知識を提供してもらい、日本の遺伝性疾患の研究者、獣医師、ブリーダーや愛犬家に広く伝えていくことと、日本におけるCLDNA(セロイドリポフスチン症遺伝子)(検査の受付、検査結果の報告が主なものとなっています。】…紹介文を抜粋

ボーダー・コリーの遺伝性疾患は、現在治療法が確立されておらず発症するとその尊い命を救うことがむずかしいとされています。
しかし、罹患犬、キャリア犬、そしてクリアな犬達を見極めることが出来る試験方法が研究機関や協力支援団体によって実行されているのです。

『JBCHN』のHPに、遺伝性疾患であるCL病の因子を持っていることに気づかずにボーダー・コリー犬の牡犬をオーストラリアチャンピオンタイトルやオビディエンスタイトルを取らせるために繁殖を続けていたブリーダー夫婦のことが記載されていました。
【1980年、私たちのもとに「視覚障害」があると診断された18か月のボーダー・コリーが連れてこられました。視覚障害があったので、それを誘導する犬が欲しいとのことでしたが、それが実現する前にその視覚障害のあった犬は発作を起こし安楽死させられたのです。
その後、今度は私たちの犬舎から巣立った子がまた同じような症状で連れてこられたことで、自分たちの繁殖に問題があると気づきました。ブリーディングによって障害を受け継がせていただけでなく、常染色体性劣性(両親がキャリア)だったということが判明したのです。】『JBCHN』HPより抜粋

このように自分達の気づかないところで遺伝子疾患のある犬たちをブリーディングしていたことに心を痛めたブリーダー夫婦は、他の犬舎の協力、またメルボルン大学リサーチセンターとニューサウスウェールズ大学のアラン・ウィルトン博士およびスコット・メルヴィル氏の多大なる協力によって、弱い遺伝子をもつボーダー・コリーを生まない研究活動や運動に現在も力を注いでいます。

ボーダー・コリーは運動能力の優れたパワフルな犬種であることが最大の魅力ですが、その反面、同じように生まれてもその運動能力を発揮することなく遺伝性疾患に苦しみ短い生涯を閉じる犬たちがいます。
劣悪な環境で頭数を増やすことだけを考えている悪質ブリーダーが、世界のどこかにいる限りこの病気を持って生まれてくる子は絶えません。

ボーダー・コリーのすべてが競技に出場するわけではありませんが、せめて家庭犬として迎えたあとは、日常の生活の中でいつまでもその元気さを保ちながら長生きしてもらいたいものです。
そのためにも、愛犬と目を見つめ合いオキシトシンを増やして強い信頼関係を築いていきたいですね。

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