犬種

イタリアン・グレー・ハウンドのこと、もっと知りたい!- 人気の犬種シリーズ -

去年の夏、兵庫県豊岡市のキャンプ場そばを通りがかると、1組のカップルと1頭の犬が目につきました。
華奢な体つき、細い肢、光沢のある被毛。
スタイリッシュでアーバンスタイル、さらに凝視すればどこか気品があり、ついついそばに寄りたくなります。
初対面の私が近づいてもまったく吠えることも無くおとなしくて、じっと飼い主さんの傍にいます。
近くで見ると被毛はツルツルして光り輝いています。

イタリアン・グレー・ハウンドは、この先もじわじわと人気を高めていく犬種のように思われます。
さあ、今回は秘めたる魅力をいっぱいもつ、イタリアン・グレー・ハウンド、通称「イタグレ」を一緒に見ていくことにしましょう。

イタリアン・グレー・ハウンドってどんな犬

イタリアン・グレー・ハウンド誕生ストーリー

発祥は紀元前のエジプトで、小型の視覚ハウンド犬として誕生しています。
その後ギリシャやイタリアへ渡り、地中海沿岸地帯の貴族の元では愛玩犬として飼育されました。
また、フランスやドイツの貴族の間で流行っていた鷹匠によるウサギ狩りの際には、視覚ハウンドとしての働きをする狩猟犬として重宝されていたのです。
視覚ハウンド(サイトハウンド)とは、犬の嗅覚の鋭さを使って狩りをするのではなく、あくまでも視覚と走力で狩りをする犬種のことです。
ちなみに、嗅覚ハウンド(セントハウンド)とは、においを頼りに獲物を探す犬種のことです。

さて、19世紀末イギリスのウィペットがレースドッグとして優勢を占めると、イタリアン・グレー・ハウンドは次第に忘れ去られる存在となりました。
元もと小型犬だったということもあり、イギリスケネルクラブではハウンド犬というよりも小型愛玩犬のグループに区分けしていました。
そのため、当時のブリーダーたちはイタリアン・グレー・ハウンドを愛玩犬として活用するために小型化しようとやっきになり、華奢な体をさらに改良していくことになります。
そして、ついにはチワワをやや大きくしたくらいにまで作り上げ、運動もできないくらいの弱い犬になってしまいました。
そのようなこともあって健康的なイメージの無くなったイタリアン・グレー・ハウンドは、20世紀に入ってからは、その人気に陰りを見せすっかり衰退していったのです。

その傾向は、イタリアやフランスに及んでいましたが、絶滅の危機と気づいた原産国のイタリアは、ドイツに残っていた優良な個体を逆輸入して、健全な犬種を再び作出することに力を注ぎました。
このとき、イタリアに協力したのが、ドイツ、オーストラリアです。
この国々の協力があったからこそ、現在のイタリアン・グレー・ハウンドは存在しているといえるでしょう。

日本へは江戸時代に輸入されたので、随分と昔からその存在が日本人の身近に在る犬種だったのですね。

外見上の特徴

何と言っても「華奢」「細い」というイメージを持つ人が多いことでしょう。
首を伸ばし、頭を凛として上げシカのような長い四肢をもち、気品ある歩き方。
そして、飛び跳ねるように軽やかに速く走る姿は多くの人に称賛されます。

体格

・筋肉質で引き締まっている
・スレンダー
・体長は体高と等しい、もしくはそれよりもわずかに短い
・背はまっすぐで筋肉質

・細長い頭部
・先細りのマズル
・垂れ耳(ローズイヤー)
・上品な顔立ち

被毛 ― 色

・フォーン、レッド、グレー、ブルー、クリーム、ホワイト、ブラック、スレート・グレー、イザベラ(栗毛色)
・単色を理想とする
・いずれも白色のマーキングが混ざっていること

被毛 ― 長さ

・光沢のある滑らかな短毛
・抜け毛が少ない
・手入れの手間がかかりにくい
・体臭が少ない

性格

無駄吠えや体臭がほとんど無いとされるイタリアン・グレー・ハウンドが飼いやすい犬種といわれるのは、狩りの際に獲物を逃がさないために吠えることやにおいを発することなく、静かに獲物に近付くことを得意としていたからだといわれています。
このようなことが、この犬種は室内犬としてとても飼育しやすいといわれる由縁ですね。

・無駄吠えが少ない
・おとなしくて温厚
・繊細
・攻撃型はほとんど無い
・飼い主さんや家族に対して愛情深い
・人見知り
・明るく穏やか
・従順

かかりやすい病気と対策

CDA脱毛症(カラー ダイリューション アロペシア)単色被毛脱毛症

異常なメラニン生成が原因で起こる遺伝性疾患。
ブルーの毛色部分が脱毛してしまう病気。
イタリアン・グレー・ハウンド、ドーベルマン、ダックスフンドなどに多い。

●症状
・まだらに脱毛
・フケが出始める

●予防・対処方法
残念ながら現時点において完治は難しいが、症状の抑制効果が薬(メラトニン)を投与することはできる

パターン脱毛症

左右対称の脱毛症状。
だいたい生後6か月ごろから9か月ごろに発症しやすい。
  
●症状
・徐々に毛が薄くなっていく
・脱毛部位(耳・鼻先・首・胸・腹・尾などに症状がみられる傾向)
・脱毛部分の皮膚の色が黒ずむ場合がある

●予防・対処方法
このことが原因で生命を脅かすものではないので、特に治療が必要ではない

骨折

体重の軽さや跳躍に優れた運動機能をもつものの、骨折の多い犬種。
基本的には、イタリアン・グレー・ハウンドは起伏の少ない比較的安定した足場を疾走するように交配されてきた犬種であるが、高低差のあるところからの落下、足場の悪い場所でのトレーニングは骨折の危険性を招く。
さらに、尻尾が細くて長いため壁や家具などにおもいきりぶつけてしまい骨折するケースなどもある。

●症状
・痛み
・骨折した部位の関節がブラブラしている

●対処方法
・応急処置――添え木と包帯で固定
・手術(プレート法、創外固定法、髄内ピン法など)
・尻尾の場合は、レーザー治療もしくは断尾など

飼育のワンポイント

住環境や戸外に潜む危険

前項の「かかりやすい病気と対策」のところで、この犬種の骨折について触れましたが、そもそもどうしてこうもイタリアン・グレー・ハウンドは骨折しやすいのかというと、やはり、筋肉質とはいえ骨の細さにあるようです。
この項では、骨折に限らず家の中、外で気を付けたい事柄をお伝えしましょう。

≪落下や着地失敗≫
・ソファなど高低差のある所からの着地失敗(ジャンプを好む)

・階段の上り下りによる転落
階段の上り下りの際(特に降りるとき)は膝の関節に負担をかけていますから、ジャンピングなどを重ねると骨折の原因になります。
また、抱きかかえて上り下りする際には、暴れて落下しないように安定した抱え方をしましょう。

≪滑る床≫
最近の住宅事情を見ると、フローリングの床材がとても多くなってきました。
見た目も美しい木目の床材はいいのですが、実は犬の足腰に負担をかけているのです。
犬は元もと爪を立てて足を踏ん張り立ち上がったり歩いたりするのですが、滑る床では必死に踏ん張ろうとしても足に余計な力が入ります。
無理な姿勢は足腰に負担をかけ膝蓋骨脱臼を起こす原因になりますし、そのことが引き金になって骨折を招くことにもなります。
フローリングの床には、タイル状のフロアマットを敷いたり、滑り止めのワックスを塗ったりしましょう。
ソファなどの高低差のあるところには、スロープやステップなど補助できるものを使用するといいですね。

≪引っかかるカーペット素材≫
犬の爪は伸びていると、カーペットや絨毯などの毛に引っかかる恐れがあります。
そのことで躓き骨折することもありますので、愛犬の爪のお手入れはちゃんとしておきましょう。
そして、カーペットや絨毯の素材は、輪になったループ状は爪がひっかかりやすいので、毛足の無いタイルカーペットを使用することをお勧めします。

≪室内をすっきり≫
室内犬の場合、自由に放し飼いできる反面、やはり気になるのが物にぶつかる危険性です。
家具には角が多いですから、イタリアン・グレー・ハウンドのように運動好きな犬種は、ジャンプしたりはしゃいだりして、ついついぶつけてしまいます。
家具や柱などの角にクッションカバーなどを付けて、脳しんとうや骨折などの危険から守りましょう。
できるだけ物を置かないで、お部屋をすっきりさせて事故を防ぐことも大きな対処法です。
ちなみに、足だけはなく細くて長い尻尾の骨折も多いのがこの犬種。
尻尾を骨折すると手術で断尾するケースも少なくありませんから、尻尾も注視してあげましょう。

≪車移動≫
病院やちょっとしたお出かけ、そして、これからはアウトドアへ出かける良い季節です。
その際、最も多いのが自動車の利用ですね。
ときどき、車窓から顔を出している犬を見かけるのですが、これって危険な行為です。
いつ急ブレーキをかける事態に陥るかもしれません。
車に乗せるときは、愛犬はキャリーバックなどに入れシートベルトで固定しておきましょう。
サービスエリアなどには、最近ドッグランを併設しているところも増えてきていますから、休憩時にはキャリーバッグから出してあげて、散歩したりドッグランで走らせてあげたりすると気分転換にもなりますね。

散歩や運動

≪寒い日、暑い日に注意≫
寒い季節が大の苦手なイタリアン・グレー・ハウンドの散歩は、できる限りお日様のしっかり出ている日中など、時間を選ぶことが望ましいです。
また、ここ近年の夏場の暑さは尋常なものではありませんから、炎天下での散歩は控え朝夕の涼しい時間帯にするとか、散歩を取りやめて室内でしっかり遊ばせるなど工夫をしましょう。

≪ドッグラン利用時≫
非常に運動好きであることが、この犬種の特徴のひとつです。
狩りが得意な血筋ですから、散歩以外にも全速力の運動を欠かさないようにしてあげたいですね。
ドッグランで思いきりジャンプしたり走ったりするのを愛犬は大変喜びますし、飼い主さんもそんな様子を見ると嬉しくなるものですね。
ただし、混雑しているドッグランでは、他の犬との衝突などに注意が必要です。
みんな自由に元気にのびのびと走り回っているのはいいのですが、やはり全速力で走っている子たちもいっぱいいるようなところでは、ぶつかってしまう危険性があります。
ドッグランなどでは目を離すことなく、しっかりと見守ってあげましょう。

食事

≪筋肉と骨に良い食事≫
この犬種は肥満になると関節への負担が大きくなり、骨折などの事故に繋がりますから要注意!
毎日の散歩や一緒に遊んであげることが、ストレスや肥満の解消法です。
そして、大事なのは筋肉と骨を丈夫にする食事を心がけること!
そのためには、骨にはカルシウム、筋肉にはタンパク質といわれる栄養素を取ること。

良質なタンパク質は、生肉にたっぷりと含まれているのをご存知ですか。
高タンパク、低脂肪、低カロリー、低コレステロールという利点をたくさんもっているのが馬肉・鹿肉など。
鹿肉には良質のタンパク質に加えて、青魚に多く含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)や鉄分や多価不飽和脂肪酸も多く含まれています。
また、馬肉は牛肉や豚肉に比べて、グリコーゲン、ビタミンA、ビタミンE、鉄分、カルシウムが非常に豊富ですから、関節などの健康維持には欠かせません。
毎日の食事にプラスワンの食材で、愛犬のための健康な体作りをしてあげましょう。

短毛ゆえの心配事あれこれ

≪虫刺され≫
短毛で抜け毛が少ないと聞くと手入れしやすいと考えがちですが、その分、皮膚に与える影響は大きいといえます。
そのため

・寒さに弱い
・刺激に弱い
・虫に刺されやすい
・皮膚疾患、外傷が多い

とくに寒さに弱い犬種ですから寒い時期の外出にはハーネスの着用は、健康面を気遣う上では欠かすことができません。
かといって、ずっとハーネスを着用させていると、繊維が皮膚に当たって刺激になることも。
気温の調整がされている室内では特に着用させる必要はありませんが、寒さに非常に弱い犬種だということを覚えておきましょう。

そして、夏の季節の天敵といえば、蚊です。
早い時期では春ごろからブーンと飛んでいますし、涼しくなる秋ごろまでその姿を見かけます。
フィラリアという病気はその蚊によって運ばれるのです。
感染幼虫に寄生された蚊が犬を刺して血を吸うときに、その刺し口から犬の体内にフィラリアが入り込んでしまいます。
かといって、すぐに発症するわけではありません。
心臓や肺、血管などに住み着いて数年をかけて蝕んでゆくという厄介なものです。
ですから、症状が表れるまでには時間を要し、気づくのが遅れるのです。

そのためにも、定期的なお薬の服用は欠かせません。

また、散歩やアウトドアなどでレジャーを楽しむときこそ、蚊だけに限らず虫刺されに注意しましょう。
蚊取り線香に虫よけローソク、市販の防虫スプレーに…と、ついつい準備に余念がありませんが、あくまでも虫から人を守るためのものであって、効果が高い分、犬などには影響を及ぼしかねません。
できれば人にも犬にもやさしい虫よけのアイテムがあれば安心ですね。
天然成分の入ったアロマオイルスプレーは、蚊だけではなくてダニやノミの対策にも重宝しますし、特に虫のつきやすいお腹やお尻を中心にスプレーして、虫対策を万全にしましょう。

≪逃走≫
首が細く頭が小さいため、お散歩中にグイグイと引っ張られて首輪が抜けてしまうことがあります。
イタリアン・グレー・ハウンドの体型などを考えると、適正なサイズのものや首と胸にすっぽりと着用できるハーネスを使用しましょう。
するりと抜けて走り出してしまい、交通事故などに遭遇することもありますので注意しましょう。

ジャンプ力にも長けたイタリアン・グレー・ハウンドは、少々の柵も見事な跳躍で飛び越えてしまいます。
ですから、室内ではサークルに入れてもそれを越してしまうことも考えられます。
とくに飼い主さんの目の行き届かない留守の時間帯などに事故が起きたりしがちですから、できれば飛び越えることができないように、ケージの上側を塞げるものを使用するとよいですね。

イタリアン・グレー・ハウンドをとおして考える

今から9年余り前、2010年の話です。
埼玉県坂戸市でイタリアン・グレー・ハウンドが大量に遺棄されたという事件がありました。
ニュースの内容によると、確認されたのは雌の老犬ばかりということから、遺棄したのは繁殖業者ではないだろうかと推測されます。
冒頭にも書きましたが、2010年頃といえば登録頭数も3000頭前後。
登録頭数はあくまでも血統書を発行しているJKCの記録ですから、遺棄したのは闇の業者でしょうか。
人気に目を付けた悪徳業者がいたとするならば、ただ単に利益目的だけに人気犬種を増やし、産ませるだけ産ませて必要が無くなったら捨てるという行為に及んだのでしょう。

保護された犬たちは、人慣れしていなくて愛情に包まれることなく、常にびくびくしていて恐怖心を抱いています。
また、健康面では歯や皮膚の状態の悪さが問題視され、十分な環境で飼育されていなかったことがわかります。

当時、幸いにも保護された犬たち17頭はその後、保健所や県動物指導センター(熊谷市)をとおして里親を希望した人たちによって引き取られたそうです。(MSN産経ニュース 2010/12/2より)

このような問題が取りあげられるとき、そこには必ず人間の介入があるという事実です。
必要な間は手元に置き、必要が無くなれば捨てる……という人間のエゴがそこには見えます。
何かが流行の波に乗れば、それに付け込んで「今だ、このチャンスを逃すな!」とばかりに、残念ながら時代が変わっても悪徳な商売をしようとする人がいるのです。
だからといって、それを許してもよいということでは決してありません。

命のある限り生きたい、生かせてあげたいと願うのは自然の思いです。
その命を大切に守ることができるのは、私たち人の力が大きく働きます。
イタリアン・グレー・ハウンドだけではありません。
人気犬種ゆえの不幸な扱われ方……このような不幸な事件がこれ以上起きないでほしい。
そう願わずにいられないニュースでした。

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愛犬に生肉を与え続けて10年の川瀬隆庸が監修

株式会社帝塚山ハウンドカム
代表取締役 川瀬 隆庸

  • 社団法人 日本獣医学会 正会員 会員No.2010172
  • 財団法人 日本動物愛護協会 賛助会員(正会員)No.1011393
  • ヒルズ小動物臨床栄養学セミナー修了
  • 小動物栄養管理士認定
  • D.I.N.G.Oプロスタッフ認定
  • 杏林予防医学研究所毛髪分析と有害ミネラル講座修了
  • 正食協会マクロビオティックセミナー全過程修了

愛犬の健康トラブル・ドッグフード・サプリメントなどアドバイスをいたします。

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