獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編: テーマ「秋の花粉症」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
9月というと少し前までは「そろそろ秋」といったイメージでしたが、近頃はまだまだ夏真っ盛りです。しかし公園や野山では、秋の植物が活動を始めるころです。今回のテーマは秋の花粉症とその対策です。

各季節の花粉症

花粉症の原因といえばスギ花粉ですが、これは春の花粉症です。花粉は花が咲く時に飛び出すものですので、その花が咲く季節ごとに花粉症のリスクはあります。

花粉症とアレルギー

花粉症は病気というよりは、アレルギーの一種です。アレルギーはからだの免疫システムが過剰に反応してしまうものです。原因となる物質(=アレルゲン)を検査しておくことは対処をする上で重要です。

東京都福祉保健局が花粉症患者を対象に、アレルギーの原因物質を調査しています(平成28年度「花粉症患者実態調査報告書」)。報告概要は次のとおりです。

〇調査対象 花粉症の東京都民(543人)
〇質問 「あなたのアレルギー検査の結果は?」
〇回答(複数回答あり)
  :スギ花粉(79.4%)、ヒノキ花粉(44.9%)、ブタクサ花粉(33.0%) 
  :ハウスダスト(43.8%)、ダニ(24.9%)

これからも判るように、アレルギーの原因は1人に1つというわけではありません。「スギ花粉とブタクサとハウスダスト」といったように、私たちは複数のアレルギーをもつ可能性があります。

ブタクサ花粉

先ほどの調査報告において、花粉症患者のおよそ30%の人がブタクサに対してアレルギーをもっています。ブタクサは道端や空き地、河川敷などに普通に生えている草でスギ花粉と比べるとマイナーですが、「世界三大花粉症」の1つにあげられています。

ちなみに世界三大花粉症とは、スギ(日本)、カモガヤ(ヨーロッパ)、ブタクサ(米国)の3つをいいます。

ここで花粉カレンダーというものを見てみましょう。これは日本においての花粉の飛散時期をまとめたものです。これによると花粉症の原因となる花粉には、春グループと秋グループがあることが判ります。

春グループの代表はスギ、ヒノキなどの樹木で2~5月が飛散の中心です。対して秋グループには、ブタクサやヨモギなどのキク科の雑草がこれに当てはまります。中でもこれからの8~10月に飛散のピークを迎えるブタクサは秋の花粉症の代表といわれています。

なお、花粉以外のアレルゲンとして高い割合を示しているものにハウスダストがあります。ハウスダストには花粉のような季節性は無く、年間を通してアレルギーの原因となっています。

いろいろな対策

花粉症の方はシーズン中にいろいろな防御策をとられています。前述の東京都の調査では次のような結果になっています。

〇調査対象 花粉症の東京都民(1,840人)
〇質問 「花粉対策で実施していることは?」
〇回答(複数回答あり)
  :帰宅後にうがい、手洗い、洗顔を実施(50.7%)
  :外出時にマスク、メガネを着用(50.1%)
  :花粉の多い日は洗濯物を外干ししない(28.3%)
  :自宅で空気洗浄機を使用(24.6%)
  :帰宅時に服に付いた花粉を払う(22.9%)
  :何も実施していない(22.9%)

花粉症のみなさんは、屋外に飛散している花粉をいかにからだに付けないか、いかに家に持ち込まないかという点でいろいろな対応をされています。

ペットの花粉症

ここまではオーナーすなわちヒトの花粉症について見てきました。ではペットなどヒト以外の動物には花粉症はあるのでしょうか?

動物の花粉症

近年、花粉症の有効な薬やワクチンを開発する目的として、動物の花粉症に関する研究が盛んです。麻布大学の阪口雅弘は各種動物の花粉症について次のような報告をしています(2008年)。

〇ニホンザル(スギ花粉症) 
  …鼻水、くしゃみ、目のかゆみ
〇ネコ(スギ花粉症) 
  …鼻水、くしゃみ 
〇イヌ(スギ花粉症) 
  …アレルギー性皮膚炎

イヌの花粉症

このようにヒト以外の動物においても花粉症が確認されていますが、注目すべきはイヌの症状です。ヒトを含めた他の動物と異なり、イヌでは目や鼻の呼吸器症状よりも、主としてアレルギー性の皮膚炎がみられます。

加えて阪口は42頭のアトピー犬の血液検査を行った結果、約20%においてスギ花粉の抗体をもっていたとも述べています。また、米国ではブタクサ花粉症のイヌも同様に皮膚のアレルギー症状を示したという報告があるとのことです。

どうやらイヌでは花粉に対するアレルギー反応の部位が主に皮膚のようです。「花粉症=目の充血、くしゃみ」と思い込んでいると、イヌの花粉症を見逃してしまうかもしれません。愛犬オーナーのみなさんはご注意下さい。

散歩と花粉の持ち帰り

春や秋の花粉の季節でも、愛犬との散歩は大切にしたいものです。前出のアンケート結果では、約23%の方が花粉を部屋の中に持ち込まないように、服を払ってから家に入るようにされています。では散歩帰りの愛犬に関しては、みなさんどうされていますか?

舞い上がる花粉

花粉が飛散する季節に散歩した場合、オーナーはもちろん愛犬のからだにも花粉は付着します。散歩帰りのイヌへの花粉の付着割合を調べた報告があります(白井秀治ら 東京アレルギー・呼吸器疾患研究所 2017年)。

●供試犬: 室内犬15頭
●散歩条件: スギ花粉時期に30分間~1時間の外出
●付着割合: 背中側(約52%)、腹側(約48%)

花粉は風に舞って飛んできて上から落ちてくるため、私たちヒトでは服の上着、イヌの場合なら背中側に大部分が付着している気がします。しかし実際は、イヌの背中とお腹とではほぼ同じ割で花粉は付着しているのです。

この理由は地面からの舞い上がりです。イヌが公園を走り回ったり腹ばいになって休憩する時、地面に落ちていた花粉は舞い上がりお腹側にもたっぷりと付着するということです。

花粉の付着が多い部位

次は散歩帰りのイヌのからだにおいて、花粉の付着が多い部位を調べた結果です。

●供試犬: 室内犬5頭
●散歩条件: スギ花粉時期の外出
●付着部位と付着量(頭、背中、脚の付着量を100とする)
  …お腹(500)
  …足裏(1,200)

試験に供した5頭において結果の差はありましたが、共通して花粉は頭や背中部分だけではなく、お腹側や足裏にも同等もしくはそれ以上の量が付着していました。

この理由も先ほどと同じで、イヌは散歩中に地面に落下している大量の花粉を足裏で踏み付けていたことによります。花粉の季節、散歩帰りの愛犬の被毛、特に地面と接する部位にはたくさんの花粉が付着しているのです。

対応として外出後に毎回シャワーを浴びさせるのはなかなか面倒です。このような時は、市販の拭き取り用のウエットシートなどを活用するのが良いでしょう。(拭き取りシートは付着花粉のおよそ80%を除去することができます。)

愛犬の花粉症対策

糖尿病、関節症、高齢化などペットはヒトと同じ生活上の困りごとを抱えるようになってきています。花粉症もその1つで愛犬の場合、春にはスギ花粉、秋にはブタクサ花粉があります。

最後に愛犬の花粉症対策の注意点として次の3点をまとめておきます。

❶花粉症の季節
  …ヒトと同じく春(スギ)だけではなく秋(ブタクサ)の花粉にも注意が必要です

❷皮膚炎症状
  …イヌでは花粉症の症状としてアトピーのような皮膚炎を示すことが多いようです

❸被毛への花粉の付着
  …散歩帰りでは、地面に落下した花粉をお腹部分や足裏にたくさん付着させています

花粉が飛散する春や秋は、愛犬にとって外出が楽しみな季節でもあります。花粉症が気になるので散歩を控えるのではなく、正しい知識や情報をもとにその対策を行うことが大切です。

散歩・外出から帰ったらみなさんは服の花粉をよく払い、愛犬はからだ全体をよく拭いてから家に入れてあげて下さい(この時、お腹と足裏もお忘れなく)。オーナーと愛犬が一緒になって、花粉を家の中に持ち込まないように対処しましょう。

(以上)

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