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【獣医師が解説】ペットの病気編: テーマ「コレステロール値を下げる食物繊維」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
前回、高脂血症(脂質代謝異常)の対策の第1ステップがフード療法であることをお知らせしました。今回はフード成分中の食物繊維が血中コレステロール値を下げるというお話をします。

【獣医師が解説】ペットの病気編: テーマ「コレステロール値を下げる食物繊維」

コレステロールの供給源

体内のコレステロールはどこからやって来てどこへ行くのでしょうか?まずはコレステロールの由来を見てみましょう。

フード由来

コレステロールの供給源は2つあります。1つはフード、もう1つは体内合成です。フードとして摂取されたコレステロールは、消化を受けて小腸から吸収されます。これを体外からやって来たという意味で「外因性コレステロール」と呼びます。

小腸でコレステロールが吸収される際に、これを応援しているのが胆汁(たんじゅう)です。コレステロール(=あぶら)を消化液(=水)とよく混ざるように乳化することが胆汁のしごとです。

逆に小腸からのコレステロール吸収を抑えるはたらきをするのが食物繊維です。前回のコラムで高脂血症のフード療法として高繊維フードを紹介しました。これはこの食物繊維がもつコレステロールの吸収抑制と排出促進という作用を利用したものです。

実はフードからの外因性コレステロールは全体の20~30%くらいです。しかし、高脂血症対策としてフード由来のコレステロールを注視するのは大切なことです。

体内合成

もう1つの供給ルートは、フード中の脂質成分を材料として体の中でつくられるものです。このコレステロールを「内因性コレステロール」といい、主に肝臓で合成されています。

内因性コレステロールは全体の70~80%を占めています。従って、高脂血症対策としてはこの肝臓で合成されるコレステロールもなんとかしなければなりません。

内因性コレステロールは全体の70~80%を占めています。

コレステロールのゆくえ

次はフードを由来とするコレステロールが体内でどのような代謝を受けるのかを紹介します。

胆汁による乳化

ペットがフードを食べて水を飲むと胃の中で一緒になりますが、脂質はあぶらですので分離して胃の内側にベタベタとくっ付いてしまいます。脂っこいものを食べて胃がもたれるというのはこのことです。

食べ物が胃を通過して次に入るのが小腸の1つである十二指腸です。十二指腸はいろいろな消化酵素が分泌され、栄養素を吸収する場所です。この内側もベトベトすると大変困るため、脂質成分を水とよく混ざった状態にしなければなりません。

水とあぶらが仲良く混ぜ合わさるとミルクのように白っぽくなりますがこれを「乳化」といいます。十二指腸においてコレステロールなどのあぶらを乳化しているのが胆汁です。胆汁はフード中の脂質成分の消化吸収を助けています。

消化・吸収・排泄

十二指腸で乳化されたコレステロールは、すい臓から分泌される脂肪分解酵素(リパーゼ)により消化吸収されます。その後、肝臓に送られて体中に運ばれます。

先ほど胆汁がコレステロールを乳化すると述べましたが、この胆汁の主成分である胆汁酸はコレステロールを材料として肝臓で作られています。消化吸収されたコレステロールの一部は胆汁(胆汁酸)となり消化管の中をぐるぐると回っています。

フード由来のコレステロールは、すべてが吸収されているわけではありません。およそ半分は消化されずそのまま糞便として排泄されます。この時、胆汁も一緒に体外に捨てられます。糞便量が増えるとコレステロールの排泄量も増えることになります。

フード由来のコレステロールは、すべてが吸収されているわけではありません。およそ半分は消化されずそのまま糞便として排泄されます。

代謝スタッフ

以上がざっくりとしたコレステロールの代謝ですが、ここでその担当スタッフとその役割をまとめておきましょう。

○肝臓
・コレステロールを材料として胆汁(胆汁酸)をつくる
・新たにコレステロールを合成する
○胆のう
・胆汁を濃縮して貯めている袋
○すい臓
・脂肪分解酵素リパーゼを分泌する
○十二指腸
・乳化された脂質やコレステロールを吸収する小腸

さて今回のテーマは食物繊維による高脂血症対策です。食物繊維は血中のコレステロール値を下げるために、これら代謝スタッフのどこをターゲットとして活躍するのでしょうか?

肝臓はコレステロールを材料として胆汁(胆汁酸)をつくり新たにコレステロールを合成する

食物繊維の活躍

食物繊維のはたらきというと満腹感とか排便促進があげられます。これに加えて、血中コレステロールと食物繊維の間には次のような関係があります。

悪玉コレステロール値の減少

多くの研究者が食物繊維のコレステロール低減作用について報告しています。ここでは食物繊維の摂取量と血中コレステロール値の関係についての調査データを紹介します(岡本和士 愛知医科大学 1992年)。

●調査対象 
  男女合計270名(年齢65~84歳)
●1日あたりの食物繊維摂取量
  :少量摂取グループ (2.8g以下) 67名
  :平均量摂取グループ(2.8~4.4g) 135名
  :多量摂取グループ (4.4g以上) 68名
●測定項目
  :LDLコレステロール値 …悪玉コレステロール
  :LDL / HDL …悪玉と善玉コレステロールの比率

岡本の報告では、食物繊維の摂取量が多い人ほど血中のLDL(悪玉)コレステロールの値は減少していました。またLDL(悪玉)とHDL(善玉)の比率も小さくなっていました。

食物繊維をたくさん摂ると悪玉コレステロールが減るのはうれしいのですが、善玉コレステロールも減ってしまうと困ります。LDL(悪玉)とHDL(善玉)の比率が小さくなるということは、食物繊維は悪玉コレステロールのみ減少させる作用があるということです。

食物繊維は悪玉コレステロールのみ減少させる作用があるということです。

食物繊維の役割分担

食物繊維はLDL(悪玉)コレステロールを減らすことが確認されました。この理由の1つに脂質の消化吸収を抑制するという作用があります。繊維が脂質などの栄養素を包み込み、ある程度消化吸収をブロックするというものです。

食物繊維には2種類あることはみなさんもうご存じです。不溶性食物繊維と水溶性食物繊維です。ではここで問題です。フード中の脂質の吸収をより多く抑制するのはどちらの食物繊維でしょうか?

国立健康 ・栄養研究所の池上幸江らはラットを用いて食物繊維の役割分担を調べました(1983年)。試験概要は以下のとおりです。

●供試動物: ラット
●給与した食物繊維
  :不溶性食物繊維(セルロース)
  :水溶性食物繊維(ペクチン)
●結果(対照を100とする)
  :不溶性食物繊維給与ラット
    糞便量(180.9)、脂質吸収率(99.6)
  :水溶性食物繊維給与ラット
    糞便量(147.6)、脂質吸収率(97.4)

この結果から不溶性食物繊維は糞便量の増加作用、水溶性食物繊維は脂質の消化吸収を抑制する作用が得意であることが判ります。高脂血症対策としてコレステロールの値を下げるには、不溶性 / 水溶性どちらの食物繊維も有用であるといえます。

不溶性食物繊維は糞便量の増加作用、水溶性食物繊維は脂質の消化吸収を抑制する作用が得意であることが判ります

コレステロール値が下がる理由

最後に先ほどの代謝スタッフごとに、食物繊維が血中コレステロール値を下げる理由をまとめます。

❶肝臓
…食物繊維は大腸の腸内細菌によって分解されると酢酸・酪酸・プロピオン酸といった短鎖脂肪酸を産生します。この脂肪酸が肝臓に働きかけてコレステロールの合成を阻害します。

❷胆のう
…食物繊維は胆汁(胆汁酸)の分泌を増加させます。この消費を補うために胆汁酸の合成が進み、材料であるコレステロールが体中から集められます。これにより血中コレステロール値が低下してゆきます。

❸小腸、大腸
…水溶性食物繊維は十二指腸(小腸)での脂質の消化吸収を抑えます。また不溶性食物繊維は大腸において糞便量を増加させます。胆汁は糞便と一緒に排泄されるため、その材料であるコレステロールの排泄も増加させます。

食物繊維は胆汁(胆汁酸)の分泌を増加させます。この消費を補うために胆汁酸の合成が進み、材料であるコレステロールが体中から集められます。これにより血中コレステロール値が低下してゆきます。

以上のように高脂血症(脂質代謝異常)の対策の第1歩であるフード療法として、食物繊維が大変有用であることが判りました。食物繊維は野菜やイモ類、海藻などに含まれています。また今まで食材として見られてこなかった副産物にも豊富に存在しています。

次回は食物繊維を豊富に含んだ副産物である「米ぬか」について解説します。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

 獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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