獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編: テーマ「長生きの秘訣:牛乳」

前回の「長生きペットの暮らし」の中で、長寿犬の60%以上は牛乳を毎日~週数回飲んでいることをお知らせしました。
牛乳の長寿効果については高齢者(ヒト)を対象とした研究が数多く発表されています。
今回は長生きペットの秘訣としての牛乳のはたらきを明らかにしてみようと思います。

牛乳を飲む習慣

毎日の牛乳摂取が長寿と深い関係があるのは、ヒトもペットも同じようです。

10年後の生存率

牛乳を飲む習慣がある高齢者はどれくらい長生きするのか?というテーマがあります。
これに関して10年間に渡る大規模な調査結果があります(柴田 博 東京都老人総合研究所 1992年)。
その概要を見てみましょう。

●調査テーマ 「牛乳を飲む習慣と高齢者の生存率の関係」
●調査対象
  ・70歳の高齢者(男女合計2,000名)
  ・調査開始時(=70歳)から10年後の生存率を算出
●調査結果
  :牛乳を毎日飲んでいる(男性) …約80%
  :牛乳を毎日飲んでいる(女性) …約82%
  :めったにしか飲まない(男性) …約62%
  :めったにしか飲まない(女性) …約78%

毎日牛乳を飲んでいるという70歳の高齢者は、男女ともに10年後の生存率が80%を超えていました。
やはり牛乳を飲む習慣は長生きと関係があると言えるようです。

高齢者の身体活動

近頃「健康寿命」ということばをよく聞きます。
健康寿命とは「医療や介護を必要とせず、自立した生活ができる生存期間」のことをいいます。
自立した生活を行うためには、体を動かしたり歩いたりできなければなりません。

先ほど牛乳を飲む習慣があると生存率が伸びる=長生きができる、というデータを確認しましたが、長生きと健康とはまた別問題です。
牛乳は健康寿命も伸ばしてくれるのでしょうか?

共立女子大学の川上 浩らは、65歳以上の高齢者を対象に毎日の牛乳摂取量と身体活動能力との関係を報告しています(2013年)。
調査概要は次のとおりです。

●調査対象 高齢者合計179人
  :男性88人(平均年齢75.2歳)
  :女性91人(平均年齢74.5歳)
●グループ
  :低摂取群 …1日あたりの牛乳摂取量200ml未満
  :高摂取群 …     〃     200ml以上
●結果 
  :1日の平均歩数 
  …低摂取群(6,650歩)、高摂取群(7,603歩)
  :中強度の運動時間 
  …低摂取群(15.0分間)、高摂取群(20.2分間)

厚生労働省は生活習慣病対策として「1日1万歩」の歩行を推奨しています。
現状、1日あたりの平均歩行数は男性約8,200歩、女性約7,300歩ですが、これが70歳以上の高齢者では男性が約5,400歩、女性は4,600歩と減少しています(厚生労働省HPより)。

この報告から牛乳を毎日コップ1杯(=200ml)飲む高齢者は、プラス1,000歩歩くことができ、運動時間も5分間伸びていることが判ります。
毎日の牛乳は高齢者の身体活動、特に歩く能力を維持増強し、生活習慣病の予防や健康寿命の延長をサポートしてくれると考えられます。

牛乳中のホエータンパク

牛乳を飲むと高齢者の運動能力がアップするのは、1つに骨が丈夫になること(骨密度の向上)が考えられます。
これに加えて筋肉量が増える(筋肉の合成)ということも報告されています。

筋肉の合成スピード

身体をつくっている筋肉は、日々分解と合成が繰り返されています。
これが筋肉の代謝です。
年をとるにつれてヒトもペットも筋肉量は減少してゆきます。
筋肉が減るということは、筋肉の合成量が分解量を下回るということです。
では何か筋肉の合成を盛んにする良い栄養成分は無いものでしょうか?

㈱明治の神田 淳らは実験動物のラットを用いて、いろいろな栄養素と筋肉の合成スピードとの関係を調べました(2013年)。
この試験によると、2時間の運動後に炭水化物、アミノ酸、ホエーを給与した結果、骨格筋の合成スピードが最も速かったのはホエーでした。

みなさん「ホエー」って何か覚えていますか?
ホエーとはヨーグルトの表面にしみ出てくる水分で、牛乳中に含まれるタンパク質のことです。
「乳清」とも呼ばれているホエーにはタンパク質(=筋肉)の合成を促進するはたらきがあるのです。

カギはホエー(乳清)

すこし牛乳のホエーについておさらいしましょう。
牛乳に含まれているタンパク質は全体の約3%です。
そしてこのタンパク質は大きくカゼインとホエーという2種類に分けられます。

乳タンパク質の大部分はカゼインでおよそ85%、ホエーは残りの15%程度を占めています。
以前、牛乳アレルギー対策としてヤギミルクを紹介しましたが、カゼイン85%、ホエー15%の成分比率はどちらのミルクも同等です。

牛乳アレルギーがある高齢者やペットの場合、筋肉の維持強化を期待してヤギミルクを活用するのは良い方法と考えられます。

ヒトとペットの筋肉づくり

長生きしている愛犬はほぼ毎日牛乳を飲み、そして散歩に連れてってもらっています。
丈夫な筋肉をつくるには、牛乳だけでなく運動も大切なようです。

牛乳+運動

先ほど牛乳やヤギミルクに含まれているホエー成分が筋肉の合成を応援することを確認しました。
しかし、ただ牛乳を飲むだけではなく、これに運動を組み合わせるとさらに効果増となる試験データを紹介します。

前出の川上らは65歳以上の高齢者179人(男性88人:75.22歳、女性91人:74.48歳)を次の4つの項目をもとにグループ分けをして四肢の筋肉量を調べました(共立女子大学 2013年)。

〇1日の牛乳摂取量
  …少:200ml未満
  …多:200ml以上
〇1日の運動量
  …少:歩数 7,000歩未満+中強度活動15分間未満
  …多:歩数 7,000歩以上+中強度活動15分間以上

なお、ここでいう200mlの牛乳はおよそコップ1杯分、7,000歩は一般女性の平均歩行数、そして中強度の身体活動はペットの世話や散歩程度の運動量に相当します。

結果として4グループにおいて四肢(両腕、両脚)の筋肉が最も多かったのは「多:牛乳+多:運動量」の組合せでした。
このことから、毎日の愛犬の世話と散歩、そしてコップ1杯の牛乳が高齢オーナーの筋肉強化につながると言えます。

牛乳を飲むタイミング

ここでみなさんへの問題です。
牛乳は散歩の前と後ではどちらに飲むとより効果的でしょうか?
答えは散歩の後です。
牛乳は運動の後に摂取する方が筋肉づくりに有効です。

牛乳のカゼインまたはホエーを休息時に摂取した時と、運動後に摂取した時の筋肉の合成スピードを比較した海外の研究論文があります(2012年)。
これによると、運動後にホエーを摂取する場合が最も速く筋肉のタンパク質が合成されるといいます。

今回はヒト特に健康長寿な高齢者にとって毎日の牛乳と運動が大切であるという試験データを確認しました。
その理由としては、長生きには足腰の筋肉を十分に維持する必要があるためです。
このことはペットにも言えることです。

今やヒトとペットは共に同じ環境で生活し、健康面でも互いに影響し合って生きています。
オーナーが健康長寿であれば、おのずとペットも長生きになると考えられます。

散歩という運動は、オーナーにも愛犬にも無理がなく、ちょうどよい程度の身体活動です。
そして帰宅後に一緒に牛乳を飲むという習慣はオーナー/愛犬の両者にとって長生きの秘訣になるでしょう。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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