獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編: テーマ「ウイルスの消毒法」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
現在、新型コロナウイルス感染防止を目的として、さまざまな対応が実施されています。
マスクを着用する、大人数での外出を控える、手洗い・消毒を行うなどなどです。
今回は身近な消毒方法がウイルスに有効かどうかという点に絞って情報提供を行います。

いろいろなウイルス

昨年まではウイルスと言えばインフルエンザやノロでしたが、現在では新型コロナウイルス一色になってしまいました。

細菌とウイルス

私たちヒトやペットに感染して病気を起こさせる微生物にはたくさんの種類があります。
その中でも細菌とウイルスが強敵であることはよく知られています。
細菌ではサルモネラ菌や腸管出血性大腸菌O-157などの食中毒菌が有名です。
また、赤痢やペストも細菌の病原体です。

ウイルスとして馴染みがあるのは、ペットでは狂犬病やパルボ、アデノでしょう。
またヒトではインフルエンザ、ノロ、エイズなども病原体はウイルスです。

細菌とウイルスはいろいろ異なりますが、その中でも大きさの違いは注目すべき点です。
ざっくりと細菌の大きさは1㎜の1,000分の1、そしてこの細菌のさらに100分の1がウイルスの大きさになります。
ということは手洗いをする場合、物理的に細菌よりもウイルスの方が洗い流される率が高いことになります。
手洗いはウイルス除去にも有効ということです。

ペットのコロナウイルス

只今、世界中で大騒ぎになっている新型コロナウイルスですが、「新型」ということは以前からもコロナウイルス自体は私たちのまわりにいたということになります。
では少し動物に感染するコロナウイルスを確認してみましょう。

コロナウイルスはその中でいくつかのグループに分かれています。
1つ目はごく普通のヒトのカゼの原因であるものです。
ペットではネコのFIP(伝染性腹膜炎)やイヌの腸炎などの原因となるものもあります。
ちなみに、イヌのコロナ腸炎を予防するワクチンはありますが、今回の新型コロナに対する有効性はないと考えた方が良いでしょう。

問題は2つ目のグループです。
ここには2002年頃に中国で多くの肺炎感染者を出したSARS(サーズ)ウイルスがいます。
今回の新型コロナウイルスもこの仲間です。
これより、現在SARSウイルスをモデルにした新型コロナウイルスの対処法が検討されています。

被膜(エンベロープ)の有無

直接目では見えませんが、ウイルスは外側に被膜をもっているものと、これをもっていないものの大きく2つのグループに分けられます。
この被膜は「エンベロープ」と呼ばれており脂質(あぶら)でできています。
被膜をもつウイルスはこれを仲立ちとして細胞に取り付き感染します。

この脂質の被膜をもつグループには、インフルエンザ、口のまわりに水疱を作るヘルペス、先ほどのSARS、そして新型コロナウイルスなどがあります。
また被膜をもたないグループにはノロ、イヌのパルボやアデノ、ネコのカリシなどのウイルスがいます。

被膜をもつウイルスの弱点

お店の入り口にあるアルコール消毒剤は新型コロナウイルスに効くのかどうか?
というのは気になるところです。
この答えはウイルスの被膜(エンベロープ)と関係があります。

感の良い方はもうお気付きと思いますが、アルコールには「あぶら」を溶かすはたらきがあります。
脂質の被膜をもつウイルスは、アルコールによってこれが壊され感染力を失い死滅します。

従ってアルコール消毒剤はノロウイルスやパルボウイルスには効果は期待できませんが、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスには有効となります。
また、一般の石けんやハンドソープにもあぶらを溶かす作用があるので有効です。

身近な消毒方法

私たちの毎日の生活において最も簡単な衛生対策は手洗いです。
素朴な疑問ですが、手洗いは本当にウイルスに有効なのでしょうか?

手洗い・石けん

ノロウイルスの衛生対策を検討する研究ではその代替としてネコのカリシウイルスが用いられます。
これは安全性の考慮と同じ被膜をもたないグループのウイルスであるためです。
東京都健康安全研究センターの森功次らはネコカリシウイルスを使って手洗いとウイルスの減少量の関係を確認しました(2006年)。

結果では、元のウイルス量に対して15秒間の水だけの洗浄で1/100量に、ハンドソープを用いて10~30秒洗浄し15秒間のすすぎを行うと約1/10,000量にまで減少しました。

ハンドソープを用いた手洗いにより、手に付いたウイルスはほとんどが除去されることが判ります。
また意外かもしれませんが、ただの水だけの手洗いでもウイルスは1/100までに減ります。
蛇口からの流水は、細菌よりももっと小さいウイルスを大洪水以上の威力で洗い流す効果があるということです。

消毒用アルコール

先ほどインフルエンザや新型コロナといった脂質の被膜をもつグループのウイルスにはアルコールが有効であると述べました。
このことはすでに40年以上も前から確認されています。

岐阜県衛生研究所の野田伸司らは消毒用アルコールを使用して各種ウイルスの不活化効果を報告しています(1981年)。
なお、ウイルスを死滅させることを「殺菌」というのは少し変な感じがあるため「不活化」と表記されます。

●供試アルコール 80%エタノール
●供試ウイルス 
  :被膜(+) …インフルエンザ、ヘルペス
  :被膜(-) …アデノ、ポリオ
●作用時間 10秒間、30秒間、1分間、3分間、5分間

この試験の結果、被膜(+)グループのウイルスは10秒間の作用時間でも不活化されました。
これに対して被膜(-)グループのウイルスでは30秒~1分間以上の時間をかけないと死滅させることはできませんでした。

消毒用アルコールは被膜をもつウイルスには大変有効であることが確認されており、このことから今回の新型コロナウイルスにも不活化効果があると考えられています。

新型コロナウイルスの消毒法

今年の4月に入り、新型コロナウイルスにズバリ有効な消毒剤に関するプレスリリース(報道向け発表)が出されています。

北里大学の発表

4月17日に北里大学が「医薬部外品および雑貨の新型コロナウイルス不活化効果について」という報道発表をしました。
医薬部外品とは医薬品(=くすり)と比べて効果がマイルドなもの、また雑貨とは法律上の縛りがない石けんや洗剤などのことをいいます。

今回の発表ではいろいろな濃度のエタノールの不活化効果が試験されています。
その結果、50%、70%、80%濃度のエタノールは1分間の作用時間で新型コロナウイルスを不活化することが判りました。
「消毒用アルコール」とは70~80%エタノールのことですので、医薬部外品として市販の消毒用アルコールは新型コロナウイルスを不活化することができます。

また雑貨では薬用ハンドソープ、フローリング用そうじシート、洗濯用洗剤、漂白剤などに幅広く新型コロナウイルスを不活化する効果が確認されたとのことです。

NITEの発表

みなさんは製品評価技術基盤機構という組織をご存知でしょうか?
ここは経済産業省の機関で電化製品の発火事故テストなどを行っています(時々ニュースに出てきます)。
通称「NITE:ナイト」と呼ばれており、4月15日に、新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の検討を実施するという発表を行いました。

現在、ドラッグストアなどでの消毒用アルコールの品薄状態が続いているのを受けて、アルコール以外の有効な消毒方法の選択肢を増やそうというのが趣旨です。
この中では、新型コロナウイルスに対してすでに有効とされているものとこれから優先的に確認検証を行うものが示されています。

○有効性が確認済みのもの
  …加熱(80℃以上で10分間)
  …消毒用アルコール(70~80%エタノール)
  …次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)

○NITEが検証を実施するもの
  …界面活性剤(石けん、洗剤の油落とし成分)
  …次亜塩素酸水(酸性電解水)
  …第4級アンモニウム塩(逆性石けん、速乾性手指消毒剤)

新型コロナウイルスはその名前のとおり「新型」で、今まで詳しい病原性などの研究はされていませんでした。
しかしウイルスの種類としてはインフルエンザやSARSと同じグループであり有効な消毒方法は確認されています。
ウイルスの除去・不活化に有効なものは次の3点でした。

❶手洗い(流水だけでも有効)
❷家庭用の石けん・洗剤(薬用に限らず有効)
❸消毒用アルコール

このようにいたずらに騒ぎ立てる必要は無く、私たちの身近にある消毒剤や石けん・洗剤でも十分に消毒は可能です。
次回は新型コロナウイルス対策としてはもちろん、ペットと暮らす私たちが気をつけておきたい手洗い方法についてお知らせします。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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