獣医師が解説

【獣医師が解説】ケアフードを考える: テーマ「新しいすい臓ケア」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
メタボリックシンドロームという言葉は市民権を得て、現在ではごく普通に使われるようになりました。
これはペットの分野でも同様であり、ヒトと同じように糖尿病や高脂血症が増加しています。
今回から新シリーズ「ケアフードを考える」をお届けします。
まずはメタボリックシンドロームを背景とするすい炎のケアフードについてお話をしましょう。

すい炎の対処法

ヒトと比べてペットのすい炎は馴染みが薄いかもしれません。
それは症状に特徴がなかったり、または無症状で慢性的に経過するためです。

2タイプのすい炎

よくいわれることですが、ペットのすい炎には2パターンあります。
1つは嘔吐や下痢などが突発的に起こる急性すい炎です。
もう1つはこれといった臨床症状が見られない慢性すい炎です。
一般的にイヌは急性すい炎、ネコでは慢性すい炎に罹患することが多いようです。

臨床症状も大切ですが、ここではすい臓の病態に注目してみましょう。
急性すい炎ではすい臓が分泌する消化酵素により自身が消化され、速い経過で壊死が起こります。
このとき大変な痛みを感じたり、また死亡する事例もあります。

これに対し慢性すい炎は経過が遅く、すい臓は少しずつダメージを受けます。
このため目立った反応を見せませんが、すい臓は線維化(=硬くなる)が進行しジワジワ機能不全に陥ります。
このようにイヌとネコでは発症の原因や病態が大きく異なるのがペットのすい炎の特徴です。

現在、ヒトのすい炎ケア策として抗酸化物質の可能性が検討されています。
このテーマに関しては多くの研究成果が報告されていますので、後ほど紹介することにしましょう。

急性すい炎の処置

イヌのすい炎は、すべてが急性タイプというわけではありません。
しかし、経過が速いためオーナーのみなさんは愛犬の状態に異常を感じた場合、すぐに動物病院で治療してもらわなければなりません。
一般に動物病院での急性すい炎の処置は次のような内容になっています。

❶絶食
  ・まずはすい臓の消化活動を抑えます
  ・絶食期間は長くても半日~1日程度です
❷投薬
  ・症状に合わせ薬を投与します
  ・制吐薬(嘔吐を止める)、鎮痛薬(痛みを抑える)など
❸空腸チューブの設置
  ・通常の食事を休止するため小腸へチューブを設置します
  ・チューブを通して水分や栄養分を補給します
❹フード療法
  ・回復後のケアとしてすい臓への負担が軽いフード内容に変更します
  ・消化の良いタンパク質や低脂肪フードが基本です

海外の研究論文では、イヌの重症急性すい炎の致死率は27~42%と報告されています。
急性すい炎は生死にかかわるため、その対処は緊急性の高い集中治療ということになります。
みなさんも「ペットの様子がおかしいな?」と感じたら、躊躇なく動物病院で診察を受けるようにして下さい。

すい臓の消化酵素

ここで「空腸チューブの設置」という処置が出てきました。
これをもう少し説明しましょう。
私たち動物の消化管は食道→胃→小腸→大腸とつながっています。
小腸とは十二指腸、空腸、回腸、大腸とは盲腸、結腸、直腸をまとめた呼び名です。

小腸は食べた物を消化・吸収する部位です。
中でも十二指腸は食べ物が入って来るとその刺激によってすい臓からいろいろな消化酵素が分泌される場です。
その代表としてタンパク質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼがあります。

すい炎の治療では、まずすい臓を休ませたいのですが、口から食事を摂ると十二指腸でスイッチが入りすい臓が活動してしまいます。
この対応策として十二指腸を避けて以降の空腸・回腸に流動性の栄養食を供給するものが空腸チューブです。

空腸チューブは鼻から通したり、腹部に穴をあけて外から挿入しますが、あくまでも集中治療期間の限定対処になります。
症状が落ち着き、口から食事が摂れるようになれば外されます。

抗酸化物質の活用

ヒトにおいて急性すい炎からの回復後や慢性すい炎の治療策の1つとして、抗酸化物質の活用が検討されています。

いろいろな抗酸化物質

急性すい炎ではポリフェノールやフラボノイド、慢性すい炎ではビタミンA、ビタミンE(トコフェロール)の効果を検証した試験報告があります。

ここで慢性すい炎患者の疼痛緩和を目的とした抗酸化物質サプリメントの給与成績を紹介しましょう(海外論文 2009年)。
次のような大変興味深い結果になっています。

●被験者 慢性すい炎患者
●グループ
  :対照群(56人)
  :抗酸化サプリ給与群(71人)
    …ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、メチオニン配合サプリ
●調査項目
  …痛みがあった日数、鎮痛薬の使用量、痛みが消えた患者割合

6か月間の観察の結果、抗酸化サプリを給与されたグループにおいて、すい炎による痛み軽減の効果が確認されました。
この理由としては、すい炎の痛みには活性酸素が関与しており、抗酸化物質がこれを和らげたためと考えられています。

タウリンの可能性

タウリンはネコの必須アミノ酸としてよく知られています。
しかし厳密にはアミノ酸ではなく、メチオニンやシステインといった硫黄を含むアミノ酸から成る物質です。
そしてこのメチオニンには抗酸化作用があります。

福井県立大学の小野鮎子らは、マウスを使った実験でタウリンがもつ脂質代謝改善作用や抗酸化作用について報告しています(2017年)。
試験設定は次のとおりです。

●供試動物 マウス
●観察期間 12週間観察
●グループ(各6匹)
  :高脂肪エサ給与群 …タウリンの配合率0%、2%、5%
  :通常エサ給与群 

結果は予想どおり体重の増加率および血清コレステロール値は、通常のエサを食べた群よりも高脂肪エサを食べた3群の方が高くなっていました。
しかしその中でタウリン5%配合グループでは体重増加率(71.9%)、コレステロール値(135mg/dl)と比較的低い値を示していました。


体内にはいろいろな抗酸化酵素があります。
その1つにSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)というものがあり、これが活性酸素を分解します。
各グループのマウスのSOD活性を測定したところ、タウリンを5%配合したエサを摂取したグループの活性値が最も高い値(9.0 U/mg)を示していました。
タウリンには抗酸化作用があることが確認されました。

この試験結果から毎日脂肪分の多いエサを食べていても同時にタウリンを摂ることにより、脂肪の蓄積による体重増加や高脂血症が抑えられることが判りました。
タウリンには脂質代謝改善作用と抗酸化作用があるということです。

そして現在、タウリンが持つこれらの機能がちょうどすい炎のケアに応用できるのではと期待されています。
 

新しいすい臓ケア

急性すい炎を乗り越え回復したり、また慢性すい炎の場合などは過度にすい臓を刺激しないような食生活を送る必要があります。では、すい臓ケアフードにはどのような内容や食材が有用なのでしょうか?

高消化性と低脂肪

すい炎回復後のフードとは「消化が良く低脂肪なもの」といわれます。
これは消化が悪く脂肪分が多いフードではすい臓の仕事が増えて、通常以上の消化酵素(トリプシン、リパーゼなど)を分泌してしまうためです。

一般的に「消化の良いもの」とはタンパク質では消化率87%以上、炭水化物や脂肪では消化率90%以上のものをいいます(麻布大学 久末正晴 2003年)。
市販のペットフードでは、まず消化性には問題は無いと考えて良いでしょう。

もう1つは「低脂肪」です。
すい臓に余計な仕事をさせないという方針からいうと脂肪含有量はドッグフードでは10%、キャットフードでは15%くらいに抑えるのが目安です。
ただし、ネコに関しては低脂肪に配慮する必要はないのでは?という意見もあります。

酵素リパーゼを抑える

すい炎の食事療法ではやはり低脂肪が基本です。
しかし、私たちヒトは脂肪分を抑えた食事には美味しさを感じにくく食欲が湧きません。
これはペットでも同じことで、低脂肪フードは嗜好性が悪く食べてくれない場合があります。

このような食事療法のジレンマを解決するために、ある程度の脂肪分は維持しつつ、すい臓から分泌される脂肪分解酵素リパーゼの活性を抑えるという考え方があります。
脂肪は摂取するけれども消化の割合を低減し、すい炎のリスクファクターである高脂血症や肥満を予防しようというものです。

酵素リパーゼの活性を阻害する食材に関する研究報告は多数あります。
例えば今回紹介した抗酸化物質の他に食物繊維や乳酸菌などです。
現在、すい臓ケアに悩んでおられるペットオーナーの方は少なくないと思われます。
今後シリーズ「ケアフードを考える」では、新しいすい臓ケアフードの食材情報を紹介してゆく予定です。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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