獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編: テーマ「愛犬に小豆はいかがですか?」

 雑豆の仲間にきれいな赤色をした小豆があります。この色にはポリフェノールが含まれていて、もう1つの身近な豆である大豆とは違った機能があることが確認されています。

【小豆の消費】

 関西に暮らしている私たちにとっては、小豆といえば「丹波大納言」というように京都で作られているような気がします。まずは小豆の産地と使用先を見てみようと思います。

生産地と用途

 農林水産省の報告によると、全国の小豆生産量は76,800トンです(2014年)。その内、北海道が占める割合は全体の約95%(73,100トン)、そして京都や滋賀が続きます。国内産小豆のほとんどは北海道で作られています。

 小豆の用途として、まず思い浮かぶのは和菓子の「あんこ」でしょう。日本豆類協会の調べでは、小豆の用途別消費量の69%はあん(餡)、次いで菓子類13%、煮豆2%、その他16%となっています。
「小豆の生産地と消費用途」

ペットのおやつ

 時々問合せを受けるのですが、愛犬にあんこの入ったおやつを与えても良いものでしょうか?小豆やあんこにはイヌに対して有害な成分は含まれていないため、この答えとしては「特に問題なし」となります。

 ただし、あんこには砂糖がたっぷりと入っているため、太り気味や糖尿病のケア中の愛犬に与えるのは控えるようにしましょう。あんこを使ったおやつを食べてもいいか、それとも我慢すべきかはヒトもペットも同じということです。

【小豆のクッキングロス】

 以前このコラムでクッキングロスについて紹介しました。クッキングロスとは食材を煮たり焼いたりする調理工程において、栄養素が失われてしまうことでした。小豆からあんこを作る際にも、このクッキングロスは発生します。

あんこの製造工程

 ここまで読んで「あん(餡)」と「あんこ」の2つの言葉が出てきていることに気が付きましたか?正確には「あん(餡)」と「あんこ」は少し違うものです。

 乾燥した小豆からあんこを作る工程は「小豆→アク抜き→煮込み→洗浄→生あん→あんこ」となります。小豆に含まれる渋み=アクを抜くために軽く煮込んだ煮汁を「渋切り水」、そして柔らかくするために長時間煮込んでできる赤い汁が煮汁になります。

 2時間程度煮込んで柔らかくなった小豆をつぶし、中身を水洗・脱水してできたものが「生あん」です。このパウダー状の生あんには味がついていませんので、砂糖を加え甘くしたものが「あんこ」というわけです。
 

小豆ポリフェノールのゆくえ

 では、このあんこの製造において、小豆のポリフェノールはどのように移行しているのでしょうか?北海道立中央農業試験場の相馬ちひろの報告によると、乾燥小豆に含まれるポリフェノールの84.1%は下ごしらえの渋切り水や煮汁に、13.2%は生あんに、そして2.8%が残りくずに分配されるといます(2007年)。

 このように、私たちが実際に食べているあん(餡)やあんこには、元々の小豆ポリフェノールの13%程度しか残っておらず、その大部分は煮汁などとして廃棄されています。大変もったいない話です。
「小豆ポリフェノールのゆくえ」

煮汁の抗菌活性

 もう1つもったいない話をしますと、この渋切り水や煮汁には病原菌の増殖を抑える作用があるといいます。愛知みずほ大学の土田廣信らは、国内産小豆5品種の渋切り水を用いて、食中毒の原因菌である黄色ブドウ球菌やサルモネラ菌に対する抗菌活性を測定しました(2008年)。

 この試験報告によると、黄色ブドウ球に対して5品種中3品種において100%の抗菌活性が見られ、サルモネラ菌に対してはやや低いものの20~30%の増殖を抑制する作用が確認されています。

 小豆の渋きり水や煮汁は生あんの製造過程で生まれる食品廃棄物ですが、天然由来の抗菌成分材料としての活用が期待されています。
「小豆煮汁の抗菌活性」

【甘いだけではないあんこ】

 このように小豆のポリフェノールや抗菌活性成分は、煮汁として棄てられています。と、ここまで見ているとあんこはただ甘いだけの食材と考えてしまいますが、実際はそうでもないようです。

ポリフェノール量

 お店で売っている和菓子のあんこにはポリフェノールは残っていないのか?抗酸化活性は失われているのか?というおもしろい調査報告があります(神谷 育ら 東京慈恵会医科大学 2015年)。

 神谷はアク抜きをした小豆、市販のまんじゅうのあんこ(つぶあんとこしあん)から抽出したサンプル中のポリフェノール量を測定しました。その結果は次のように、あんこの中にもポリフェノールは残っていました。

《ポリフェノール残量》
アク抜きをした小豆 …217.7μg/mL
つぶあん …81.5μg/mL
こしあん …55.6μg/mL
「“あんこ” に残存するポリフェノール量」

抗酸化活性

 続いて活性酸素阻害率として抗酸化活性のデータを見てみましょう。

《抗酸化活性》
アク抜きをした小豆 …48.0%
つぶあん …16.5%
こしあん …4.5%

 乾燥小豆中のポリフェノールは、生あん(餡)やあんこになるまでにどんどん放出されるのですが、あんこの中にもある程度の量は残っていることが判ります。加えてどちらかというと、小豆の皮が含まれるつぶあんの方がポリフェノール量も抗酸化活性も残存割合は高いようです。
「“あんこ” に残存する抗酸化活性」

【小豆ポリフェノールの機能性】

 ポリフェノールは1つの物質ではなく複数の成分から成っているため、由来する植物により作用はさまざまです。今回の小豆の皮に含まれる赤い色をしたポリフェノールには抗酸化作用の他に、次のようなうれしい健康機能が確認されています。

血糖値の上昇を抑える

 先程、甘いあんこをペットに与えることに問題はありませんが、糖尿病と診断されている場合は避けましょうと述べました。これはあんこにたっぷり入っている砂糖が血糖値を急激に上昇させてしまうためです。

 帯広畜産大学の小嶋道之らは、小豆ポリフェノールの食後の血糖値に対する作用について実験をしました(2007年)。

●被験動物 正常マウス
●グループ
  対照群 …ショ糖液(2.0g/体重kg)を胃内に投与
  試験群 …小豆ポリフェノール(64㎎/体重kg/日)を2週間摂取後、
        ショ糖液(2.0g/体重kg)を胃内に投与

 両グループの血糖値を測定したところ、対照群マウスはショ糖投与後まもなく急上昇して30分後にピークを迎え、その後徐々に元の値に戻っていきました。これに対して小豆ポリフェノールを与えられていた試験群マウスでは、ショ糖投与後の血糖値はゆっくりと上昇するという結果でした。

 フードやおやつとして摂取した糖質(デンプンや砂糖=ショ糖)は、アミラーゼやグルコシダーゼなどの消化酵素によってブドウ糖になり吸収されます。この結果、食後に急上昇した血糖値がいつまでも元の値に戻らないのが糖尿病です。

 小豆に含まれるポリフェノールには、この糖質を分解する酵素の働きを抑制する作用があり、血糖値のコントロールが求められるペットの健康管理にも活用できる可能性があると考えられます。
「小豆ポリフェノールの作用①: 血糖値(マウス)」

中性脂肪値を抑える

 ヒトもペットも年齢が進むにつれて、生活習慣病に対するケアが必要になります。この生活習慣病の代表に糖尿病(高血糖)と高脂血症があります。高脂血症とはすい臓機能の低下の他さまざまな背景により、中性脂肪やコレステロールの値が高い状態をいいます。

 小豆のポリフェノールが煮汁に放出されていること受けて、前出の相馬はこの煮汁を原料としたジュースの中性脂肪値に対する低減効果を報告しています(2007年)。

●被験者
中性脂肪値:正常値グループ(150mg/dL未満)24人
  〃  :高値グループ(150mg/dL以上)8人
●試験品 
  小豆煮汁加工飲料(1缶あたりポリフェノール105㎎含有)
●飲用期間
  両グループ共に1日3缶を4週間飲用

 飲用前後の中性脂肪値を比較した結果、正常値グループの変化に対して、高値グループでは265.3→180.0という大幅な低下が見られました。小豆ポリフェノールは血糖値を抑える働きの他に、高い中性脂肪値を低減させる作用も持っていました。

 ちなみにこの低めに抑えられた中性脂肪値ですが、小豆煮汁加工飲料の飲用を終了すると元の高い値に戻ってしまいました。小豆ポリフェノールの作用を期待するには、継続して飲用する必要があるということになります。
「小豆ポリフェノールの作用②:中性脂肪値(ヒト)」
 昔から中国や日本において、小豆の煮汁は利尿やむくみなどに対する生薬として用いられてきました(昭和大学 堀由美子ら 2009年)。これは煮汁に溶け出したポリフェノールによる働きと考えられます。しかし、小豆の煮汁を作るのは面倒で実用的ではありません。

 小豆ポリフェノールを手軽に摂取する方法としてあんこがありますが、加えられた砂糖が少々気になります。このような場合には小豆を皮ごと粉末状にした小豆パウダーが良いでしょう。これならば糖尿病や体重オーバー気味の愛犬にもフードに振りかけて手軽に与えることができます。

 今回は、大豆とはまた違った健康応援成分が詰まった食材として小豆を紹介しました。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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