獣医師が解説

ペットの栄養編: テーマ「高級感だけではない黒大豆」

 黒豚、黒毛和牛(正確には黒毛和種)というふうに「黒」と付く食材にはなんとなく高級感やプレミアム感があります。同じように黒豆というものがありますが、今回は豆シリーズの最終回として黒豆がテーマです。

【大豆と黒大豆】

 黒豆とは黒大豆のことで、おせちの定番メニューの1つです。では一般的な黄色い大豆とこの黒大豆とでは栄養内容に何か違いがあるのでしょうか?

主な栄養成分

 大豆と黒大豆の乾物100gあたりの主要な栄養成分を比べてみると、次のようにほとんど差はありません(日本食品標準成分表2015年版 七訂)。どうやら大豆と黒大豆の違いは皮の色くらいのようです。

《大豆vs黒豆》
タンパク質 …33~34g
脂質 …18~20g
炭水化物 …29~30g
食物繊維 …16~18g

ポリフェノール量

 小豆の皮が赤色であるのと同じように、黒大豆の皮の部分が黒色をしているのもポリフェノールの色素によるものです。では、大豆と黒大豆のそれぞれの種皮に含まれるポリフェノール量を比べてみましょう(難波文男 フジッコ㈱ 2013年)。

《種皮1gあたりのポリフェノール量》
大豆 …1.8㎎
黒大豆 …88.5㎎

 品種により若干の違いはありますが、このように大豆に比べて黒大豆の種皮にはケタ違いに多くのポリフェノールが含まれています。そして前回紹介した小豆と同様に、黒大豆のポリフェノールも水に溶けやすく、煮豆やなどの調理過程において大部分が煮汁に流出してしまうと言われています。

【黒大豆の健康応援成分】

 近頃、黒大豆を使った健康食品のテレビCMをよく見かけます。期待される作用としては「昔のズボンがまたはけるようになりました!」とかのメタボケアです。黒大豆が持っている健康応援成分として次の2つがあります。

ポリフェノール

 まずは種皮の黒色の色素であるポリフェノールです。ポリフェノールは複数の物質の総称であり、黒大豆ではプロシアニジン、アントシアニン、エピカテキンといったものがメインです。そしてこれらには共通して抗酸化活性があります。

 アントシアニンはベリー果実に含まれる青紫色の色素として、もうお馴染みです。ブルーベリーと同様に黒大豆にも視力応援の働きがあります。またプロシアニジンとエピカテキンという物質には血糖値を正常に戻したり、肥満軽減などの作用が報告されています。

ピニトール

 おそらくほとんどの方が初めて耳にされる名前と思います。このピニトールとはビタミンの様な作用をもった物質のことで、大豆では葉・茎・さやといった私たちが食べない部分にたくさん含まれています。もちろん大豆・黒大豆の子葉部にも存在しています。

 大豆ピニトールは精製するのに技術とコストがかかるため、今まで利用されず廃棄されていました。しかし近年インスリンに似た作用があることが判り、糖尿病ケアへの活用の可能性が研究されています。

ダイエットへの期待

 黒大豆に含まれる各成分の働きを見ると、肥満や血糖値という言葉がよく出てきており、どうやらダイエット関係に期待ができそうです。黒大豆の種皮成分を抽出したサプリメントを2か月間摂取した男女40人の腹囲を測定した試験結果があります(フジッコ㈱ 平成22年プレスリリース)。

 これによると男性の平均は90.1cm→89.2㎝、女性平均は87.3㎝→85.0㎝というように、お腹周りがすっきりとなる結果が示されています。黒大豆のポリフェノールやピニトールという健康応援成分は、脂肪を燃やす働きがあるようです。

【黒大豆の働き】

 黒大豆に含まれている2つの健康成分、ポリフェノールとピニトールに関する研究データを紹介します。

抗酸化作用

 ポリフェノールが抗酸化作用をもつことはみなさんもよくご存じです。フジッコ㈱の吉田 正は黒大豆ポリフェノールが体内に入った場合、どれくらいのスピードで抗酸化作用が現れるのかという試験を行いました(2013年)。

 吉田は健康な男性5人に黒大豆種皮エキス100mg(ポリフェノール60㎎含有)を摂取してもらい、経時的に血中の過酸化脂質量を測定しました。この結果、摂取30~60分後から体内の過酸化脂質量の減少が確認されました。

 口から取り入れた物質の内、水に溶けるものはすぐに胃や小腸から吸収されます。これに対して油に溶けるものは十二指腸で一度乳化される必要があるため、吸収までに時間がかかります。

 過酸化脂質の量が減少したということは、脂質の酸化がブロックされた(=抗酸化)ということです。すなわち、黒大豆ポリフェノールは水溶性で吸収されやすく、速やかに抗酸化作用が発揮されるということが判ります。

脂肪を燃やす

また吉田はマウスを用いて、次のような黒大豆ポリフェノールの脂肪燃焼活性を調べました。

●被験動物 マウス
●エサ 通常のエサ、高脂肪のエサ
●グループ
  無添加群
  添加群 …それぞれのエサに黒大豆種皮エキスを添加

 通常のエサ-無添加群の脂肪燃焼活性と比較した場合、通常のエサ-添加群では約2倍、そして高脂肪エサ-添加群では約3倍もの値が確認されました。これは脂肪分が多い食事内容でも、黒大豆のポリフェノールは脂肪の燃焼を促進するということを意味しています。

 マウスの体の中で細胞は脂肪を燃やしてエネルギーを産生しています。高脂肪のエサを食べた時、細胞が活発に脂肪を燃やしてくれれば問題はありませんが、燃焼活性が低下すると燃え残った脂肪が少しずつたまり太ってしまいます。

 このように黒大豆ポリフェノールは、食事として取り込んだ脂肪の燃焼を応援する働きがあります。先程の男女ともに腹囲の値が減少した試験データの背景には、黒大豆が持つこの作用が関係していると考えられます。

血糖値を下げる

 近年、大豆に含まれるピニトールの研究が進んでいます。この中でピニトールは血糖値を下げるホルモンであるインスリンに似た作用があることが判ってきました。これについて、ラットの筋肉の細胞を使った実験報告があります(YAP 神戸大学 2007年)。

《筋細胞のブドウ糖取り込み活性》
無添加対照 …1.62(これを1とする)
インスリン添加 …2.25(1.38倍)
ピニトール添加 …2.30(1.42倍)

 このようにピニトールにはインスリンと同じ1.4倍程度、筋肉中にブドウ糖を取り込む働きを促進する作用があることが判ります。体内では食事に由来するブドウ糖は一定量血液中に存在しています。すなわち、ピニトールは血中ブドウ糖の筋肉への取り込みを応援する=食後の血糖値が下がる=血糖値を正常化するということになります。

黒大豆の健康機能

 最後に黒大豆が持つさまざまな健康機能のうち、肥満や血糖値に対する働きのしくみをまとめておきましょう。まず黒色の種皮に含まれるいくつかのポリフェノールは、脂肪をターゲットとして燃焼を促進します。これにより体内の脂肪の蓄積が抑えられます。

 次に豆として食べている子葉部分に存在するピニトールは、筋肉に働きかけてブドウ糖の取り込みを後押しします。この結果、食後に急上昇する血糖値を元のレベルに戻す仕事をしてくれます。(ただし糖尿病の薬の代わりになるものではありませんのでご注意下さい)

黒大豆は単に高級感があるだけでなく、大豆の栄養的な特徴(高タンパク質、高脂質、高食物繊維)はそのまま変わらず、プラスαとして健康機能(黒大豆ポリフェノール、ピニトール)を持った大変お得な食材であると言えます。

 残念なことですが、私たちの食生活において黒大豆を食べる機会は多くないのが現状です。ましてやペットにフードとして黒大豆を与える場面はほとんど無いと思われます。

 お祝い事やお正月といった何かの節目の時だけに食べている小豆や黒大豆ですが、ペットの健康応援として毎日の食事やおやつにもっと手軽に活用してみてはいかがでしょうか。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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