獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編:テーマ「咀嚼とペットの知育」

私たちヒトは成人で32本、イヌは42本、ネコは30本の歯をもっています。この歯で噛んで毎日食事をしているわけですが、咀嚼(そしゃく)には食べた物の消化を助けるだけではなく、脳を活性化させる働きもあります。

【よく噛む食事】

よく噛んで食べるということは咀嚼回数が多いということです。咀嚼を行うと脳のスイッチが入り、短時間で体温が上昇します。これをDIT(食後誘発性体熱産生)と呼んでいます。

咀嚼と体温上昇

昔と比べると軟らかい食事メニューやおやつが増えて、咀嚼回数は減少しているといいます。DITの観点から考えると、軟らかい食べ物では食事後の体温はあまり上昇しないことになります。これを実験動物のラットで確認した報告があります(岡 暁子ら 九州大学 2003年)。

試験では通常のエサを与えた群と、これの約1/2の硬さのエサを与えた群を設定し、食事開始から経時的に両群の体熱産生量を測定しました。両群ともに食事開始30分までにピークに達しましたが、その増加率は通常エサ群が2.0~2.5%であったのに対して、軟らかいエサを食べた群では1.7%前後と低い値でした。

このように、軟らかいエサ=咀嚼回数が少ない食事ではあまり多くの体温アップは望めないことが判ります。前回ゆっくり食べると多くの体熱が産生され、また食事後にガムを噛むとさらに体温は上昇することを紹介しました。

今回のデータと合わせて考えると、硬い食事を食べて咀嚼回数を増やすとより多くのDITが得られることは確実であると言っていいでしょう。

脳の血流量

食事の時に歯で物を噛むと、脳は刺激を受けて興奮します。脳が興奮状態に入ると自律神経の1つである交感神経のスイッチが入り、体は基本的にポジティブの反応を示すことになります。具体的には心拍数がアップしたり、血流量が増加します。

日本歯科大学の志賀 博らは男女合計20人(平均年齢25.2歳)にチューインガムを1分間噛んでもらい、この時の脳の血流量を測定しました。するとガムを噛み始めると血流量は一気に上昇し、噛み終わると低下し始め、およそ5分後にはまた元のレベルまで戻りました。

またガムを噛む側と反対側の脳でも、同じような血流量の増加が確認されました。よく右脳と左脳といいますが、口の中のどちら側で噛んでも左右の脳は同時に興奮するということです。

このように咀嚼には脳を刺激し、脳内の血流量を増加させる作用があることが判ります。そしてこの脳血流量のアップは脳全体の活性化につながります。

【咀嚼と知育】

咀嚼することによって脳の血流量が増加すると、たっぷりの酸素と栄養素が脳細胞に届けられます。まだ幼く成長段階の子供において、脳の活性化は知能の向上、すなわち「知育」を応援することになります。ここで咀嚼と知能との関連性について見てみましょう。

学習能力の向上

動物を使った実験では勝手にエサを食べてしまうため、咀嚼回数を指定することはできません。このような場合その硬さを変えることにより、軟らかいエサ=咀嚼回数が少ない設定、硬いエサ=咀嚼回数が多い設定として試験を行います。

朝日大学の船越正也らはラットを用いて、咀嚼回数と迷路学習能力の関係を調べました(1994年)。ラットを粉末のエサ群(=軟らかく咀嚼回数が少ない)と固形のエサ群(=硬く咀嚼回数が多い)に分けて迷路を歩かせ、目的地にたどり着けなかった成績をエラー点数として比較しました。

結果では粉末エサ群10匹の平均エラー点数216.3に対して、固形エサ群は136.6という低い値でした。すなわち咀嚼回数が多くなる硬いエサを食べていたラットは学習能力が向上していたということになります。

噛む力の向上

動物の体にはたくさんの筋肉があります。この内、頭部には顔の表情を作る表情筋と顎を動かす咀嚼筋があります。物を食べる時にはこの咀嚼筋が働きますが、他の部位と同様に鍛えることにより噛む力:咀嚼力は強くなります。

幼稚園に通う子供たちを通常の給食を食べるグループ(24人)と、鰹の燻製を加えて少し硬めにした給食を食べるグループ(32人)に分けて、6か月間観察した試験データがあります(船越正也ら 朝日大学 1994年)。

試験実施前後の子供たちの咀嚼力は、通常給食群で22.5kg→24.6kg(2.1kg増)、硬め給食群では21.7kg→28.7kg(7.0kg増)という結果になりました。顎に過度の負担を与えない程度のやや硬めの食事でも咀嚼回数は増加します。顎の筋肉は毎日のトレーニングにより強く鍛えられます。

記憶力の向上

重要なのはこの続きです。短期間の記憶力を調べるテストとして「数唱テスト」というものがあります。これは耳で聞いた数字の並びをどれくらい正しく覚えているかを確認するものです。

先ほどの2グループの幼稚園児の数唱テスト成績を見てみると、通常給食群は7.9→8.5(0.6ポイント増)、硬め給食群では7.7→9.0(1.3ポイント増)と大きな差が確認されました。

以上2つの試験成績から、成長期の子供は少し硬めの食事を摂ることによって噛む力が鍛えられ咀嚼回数は増加します。そしてこの結果、脳は活性化され学習能力が向上すると考えられます。

【噛み応えのあるフード】

新しくペットを飼われる方は「できるだけ小さいうちから飼いたい」という要望が強い様です。これらには幼いうちからしっかりしつけをしたい、賢いペットに育てたいという考えがあるのでしょう。

硬めのフード食材

これから育っていく子供たちの脳を活性化させるには、咀嚼が大変有効であることが判りました。この考え方を私たちのペットに応用するために、噛み応えのあるフード食材を探してみましょう。

硬さ測定用触覚センサーという機械を用いて、身近な食品の硬さを測定して数値化した報告があります(関口 浩ら 東京歯科大学 1996年)。この中から手作りフードによく使われる食材を選ぶと次のようになります。数値は大きいほど硬く噛み応えのあるもので、すべて加熱調理をした食材の測定値です。

《嚙み応えのあるもの》
●肉類(1,200~1,700)
  …牛肉、豚肉、鶏肉
●イモ類(1,400~1,800)
  …ジャガイモ、サツマイモ
●白米(1,600)

《ほどよい噛み応えのもの》
●野菜類(800~1,200)
  …ブロッコリー、ニンジン、カボチャ、キャベツ、大根
●パスタ(850)
●肉団子(850)

《軟らかいもの》
●豆腐(300)

硬めのおやつ

次はおやつです。ペットのおやつにもいろいろな種類がありますが、ここでは与えるのに適さないチョコレートや誤嚥リスクがあるグミ/キャンディは除きました。

《嚙み応えのあるもの》
●ジャーキー(2,100)
●クッキー、ビスケット(2,000)
●乾パン(2,000)

《軟らかいもの》
●ゼリー(500)
●プリン(240)

噛むお菓子の代表といえばガムがあります。しかし私たちが日ごろよく食べるガムの中にはキシリトール入りのものがあり、これはイヌにはNG成分です。ガムは噛む前(3,600)、噛んだ後(1,600)と高い値を示し咀嚼に役に立つお菓子ですので、愛犬には代わりにペット用のデンタルガムをお薦めします。

飼っているペットを賢く育てたいというのは、オーナーのみなさん共通の願いです。ペットの知育ツールとしておもちゃがありますが、これも幼い頃から噛むことで脳を刺激し知能の向上を目指すものです。

フードは栄養内容や消化性が重要視されますが、時には硬めの食事で咀嚼回数を増やし、脳を鍛えて知育するのも大切なことです。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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