獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「煮干しで上手にCa補給」

前回、フードトッピングに小魚系の食材が多いことをお伝えしました。骨を強くするためのCa(カルシウム)補給として小魚は広く利用されていますが、魚を丸ごと食べることには他にも大切な意味があります。

【Ca補給と小魚】

「○○で不足するCaを補給!」というキャッチコピーのおやつには魅かれるところがあります。コンビニのお菓子コーナーに行くといろいろなCa源を添加した商品が売られています。

Ca強化お菓子

お年寄り向け、または赤ちゃん向けとしてCa強化をうたった市販お菓子の成分原材料を調べた報告があります(佐藤文子 桜の聖母短期大学 1992年)。お菓子の品目としては、あられ、おせんべい、スナック菓子、クラッカー、ビスケット、ボーロなど多種に渡りますが、表示されていたCa原材料としては次のようなものがありました。

○魚介類 …小魚、かたくちいわし、魚骨、えび
○野菜類 …大根葉、ほうれん草、かぼちゃ、にんじん
○その他 …卵殻、天然Ca、炭酸Ca(食品添加物)

やはり小魚・魚の骨=Caというメッセージには強いものがあり、私たち消費者の購買意欲を刺激します。みなさんはいかがでしょうか。

魚の骨の栄養成分

牛骨・豚骨・鶏がらは良いスープがとれることから栄養分がたっぷり詰まっていることが判ります。では魚骨はどうでしょう?魚の骨はただのCaの塊で、栄養分や美味しさの素になる成分は乏しいような気がします。

ある研究報告によるとサバの筋肉と中骨の成分を比較したところ、筋肉100g中にはタンパク質が約24gありますが、脂質やミネラルは3g以下でした。これに対して中骨は3栄養素そろって15g程度も含まれていました(功刀公輔ら東海大学 2019年)。イメージと異なり、魚の骨はCaだけでなく意外と栄養成分が詰まった食材でした。

かたくちいわし

先程のCa強化お菓子のところで「かたくちいわし」という名前が出てきました。みなさんはこの魚をご存知ですか。

かたくちいわしは稚魚を塩ゆでして干すと「しらす干し」、少し大きくなったものを塩漬けすると「アンチョビー」、もう少し大きくなると「メザシ」になります。そして小魚サイズを干したものが一般に「煮干し」と呼ばれていて、だしの素になります。このかたくちいわしが結構良い仕事をしてくれます。

【煮干しの栄養成分】

ここで乾燥させたかたくちいわし(以下煮干しとします)の栄養成分を確認しておこうと思います。比較対象は同じくCa源としての乾燥桜エビと牛乳を粉末状にした全乳粉(脱脂粉乳とは別物です)です。

主要栄養素

日本食品標準成分表(2015年版七訂)によると全乳粉は完全栄養食品といわれる牛乳ですので、100gあたりタンパク質(25.5g)、脂質(26.2g)、炭水化物(39.3g)とそろって含まれています。比べて煮干しと桜エビでは脂質と炭水化物ははるかに少ないものの、タンパク質は共に約65gと大変高い値をもっています。

Ca含有量

牛乳には100gあたり110㎎のCaが含まれており、これを乾燥させた全乳粉は890㎎ですので9倍程度濃縮されている計算になります。対して煮干しと乾燥桜エビは共に約2,000㎎と2倍以上の多くのCaが含まれています。

煮干しのタンパク質は筋肉部分だけではなく、頭や内臓・骨にも含まれており、Caはリン酸カルシウムとして骨を作っています。また桜エビの殻は炭酸カルシウムを主成分としてキチンやタンパク質からできています。

煮干しと桜エビがタンパク源およびCa源として優秀な食材であるのは、共に丸ごとすべて食べることができる点がその理由です。

だし殻のCa残留量

一般に煮干しはダシをとる時に使います。煮出すことにより筋肉部分からうま味のタンパク質やアミノ酸が抽出されますが、ではCaはダシに出ているのでしょうか?

昆布やかつお節などからダシ汁をとった後の食材に残るミネラル成分の割合を調べた成績があります(田中知恵ら 佐賀短期大学 2001年)。この中の煮干しのCa残存率を見てみましょう。

水に煮干しを入れて煮沸させ、煮出し前後の煮干しに含まれるCa量を測定しました。すると元々100gあたり2,700㎎ほど含まれていたCaは約2,200㎎も残っていました。すなわち、ダシ中に出たCaはわずかであり、およそ80%はそのままだし殻に残っていることが判りました。

煮干しのうま味成分であるアミノ酸は筋肉部分から水に溶け出ますが、Caの大部分は骨に含まれているため煮出すには適していません。Ca補給の意味からすると、煮干しはダシをとったダシ殻も捨てずに食材として利用すべきということになります。

【栄養ロスのない煮干し】

小魚や煮干しは丸ごと1匹食べることができますが、カツオやマグロなど普通魚は頭や骨は捨てて切り身として筋肉部分のみを食べています。この場合、魚が持つ大切な栄養素・機能性成分も一緒に廃棄しているのではないでしょうか。

タンパク質ロス

魚の食べる部位と栄養摂取量について記された資料があります(東京水産振興会 平成19年)。この中にあるかたくちいわしとサケのデータを紹介しましょう。煮干しの原料であるかたくちいわしは丸ごとすべて食べる魚、サケは切り身として筋肉のみを食べる魚の代表とします。

それぞれ1匹100gあたりに含まれるタンパク質量はかたくちいわし(17.8g)、サケ(18.9g)とほぼ同じです。魚ではタンパク質は筋肉以外にも内臓や頭や骨などにもたくさん含まれています。サケの場合、これらの部位は食べませんので実際は全体の約30%量を廃棄しているわけです。

Ca・DHAロス

では今回のテーマのCaを見てみましょう。煮干しとしてかたくちいわしを丸ごと食べると100gあたり約550㎎のCaを摂取することができます。対してサケのCa量は元々少なく約230㎎、しかもそのほとんどは骨などの廃棄部位に含まれているため、可食部である筋肉にはおよそ10㎎しかありません。

また魚がもつ健康成分といえばDHAやEPAです。私たちヒトに限らずペットにおいても血管の柔軟性維持や認知機能の回復などの分野で期待されています。この内かたくちいわしのDHA含有量は約530㎎もありますが、サケの場合筋肉中には約250㎎しかなく、およそ半分は廃棄している頭や内臓・骨に含まれています。

このようにかたくちいわしは煮干しとして丸ごとたべることにより、タンパク質やCaはもちろんのこと、魅力的な健康成分であるDHAやEPAなども無駄なく摂取することができます。煮干しは栄養ロスのない食材といえます。

だしメーカーのマルトモ㈱は医師100人にアンケート調査を行い、94%から「子供のおやつとして食べる煮干しを勧めたい」という回答を得ています(プレスリリース 2020年)。

このことは幼いペットのCa補給策としても有効と考えられます。ただ小型犬では煮干しでも丸ごと一匹は大きく、また骨や頭がのどを傷つけるリスクがあります。このような場合は小魚を使ったおやつを与えたり、家庭用ミルで粉末にしてフードにトッピングするのが良いでしょう。

みなさんも育ち盛りのペットの丈夫な骨と筋肉づくりに、栄養ロスがない煮干しを上手に活用してみるのはいかがでしょうか。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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