獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編:テーマ「シャンプー選びと界面活性剤」

みなさんはペットのシャンプーは自宅で行っていますか?それともペットの美容室にお願いしていますか?どちらにしても気になるのは、シャンプーによる皮膚や被毛のトラブルです。今回はシャンプーの洗浄成分である界面活性剤がテーマです。

【ペットのシャンプー】

短い梅雨が終わり汗だくの季節になりました。1日の終わりのお風呂は大変気持ちが良いものですが、ペットのシャワーはなかなか手がかかるものです。

からだの汚れ

毎日の日課である散歩から帰ると、ペットの被毛が汚れるのは当然のことです。また私たちヒトと違ってイヌの場合、全身で汗をかくことはありませんが、皮膚表面に皮脂の分泌は起きています。このようなペットのからだの汚れは大きく2種類に分けられます。

1つは外から被毛に付着する汚れで、外出中に着く小さなごみやほこり、花粉などです。これらはシャワーで簡単に洗い流せるものです。もう1つは皮膚に由来するもので、皮脂や皮膚の新陳代謝により剥がれた古い角質、そして皮膚表面に常在する細菌や真菌といった微生物です。

後者のように体から出る汚れはあぶら系であるため、水やお湯だけではしっかりと洗い落すことはできません。そこで登場するのがシャンプーです。

洗浄のしくみ

本来、皮脂などのあぶら汚れと水は混じり合いませんが、洗浄剤を使うと泡がこれら相反する2つをしっかりまとめて洗ってくれます。これは中に含まれる界面活性剤という成分の働きによるものです。ここでシャンプーによる洗浄のしくみを見ておきましょう。

皮脂は脂腺(皮脂腺)という部位でつくられ、毛穴から皮膚表面に分泌されます。シャンプーをつけてよく泡立てると、界面活性剤はまず皮膚表面や被毛に吸着します。次に皮脂をまわりから包み込み、巻き上げるように表面から剥がし取ります。これをローリングアップといいます。

界面活性剤は油と水の両方の性質をもった物質ですので、剥がし取った皮脂をしっかり包み込み小さく分散させて水と一緒に洗い流されます。これがシャンプーによる皮脂の洗浄ですが、ここで少々問題が起こります。それは界面活性剤の残留です。

【洗浄剤と皮膚トラブル】

新型コロナウイルス感染症の流行により、手洗いの習慣がすっかり身に付きました。その反面、洗浄剤による肌荒れトラブルも増えているのではないでしょうか。

家庭用品による健康被害

厚生労働省では家庭で使う身の回り品の安全性向上を目的として、昭和54年から毎年「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」というものを発表しています。

2018年の皮膚科モニター病院報告では、皮膚障害の原因のトップは「装飾品(時計バンド、メガネ、ネックレスなど)」で全体の43.1%を占めています。これに比べてキッチン/手洗い用の洗剤、シャンプー、ボディーソープといった「洗浄剤」を原因とするものは全体の3.4%しかありません。

しかし、報告によると平成10年くらいまで家庭における皮膚障害の25~35%は洗浄剤を原因とするものでした。この20年間、メーカーでは皮膚ダメージの原因についての研究が進み、界面活性剤の改良が進んだのがその理由です。

ペットの皮膚障害

界面活性剤とは油/脂を乳化させて水に溶けるようにする物質で数千種類もあるといわれています。その作用は乳化、浸透、起泡、柔軟、帯電防止、殺菌など多岐にわたり、化粧品、クリーニング、食品、洗浄剤といった私たちの生活必需品に広く使用されています。

シャンプーがペットの皮脂汚れを洗い落としてくれるのはうれしいのですが、かさつき・肌荒れといった皮膚トラブルの発生も少なくありません。シャンプー成分の界面活性剤がイヌの皮膚に与える影響について調べた報告があります(野間厚志ら 日本獣医生命科学大学 2021年)。

●被験動物 健常犬7頭(平均年齢9.4歳)
●シャンプー 被毛を刈り、5日間シャンプーを実施
●グループ
  シャンプー① …界面活性剤配合のシャンプーを使用
  シャンプー② …界面活性剤+保湿剤配合のシャンプーを使用
  対照 …温水のみの洗浄
●測定項目
  経皮水分蒸発量

皮膚からの水分蒸発量を測定したところ、温水のみの洗浄と比べ界面活性剤配合のシャンプーグループでは高い値を示しました。界面活性剤は皮脂汚れをしっかりと落とす作用がありますが、その反面皮膚のバリア機能も低下させることが判ります。

皮脂はヌルヌル汚れやにおいの素ですが、皮膚表面をコーティングすることで、水分の蒸発防止や常在菌の増殖抑制など私たちの皮膚の健康維持に大きく役立っています。界面活性剤のマイナス作用は保湿剤によってある程度は緩和されますが、どうしても乾燥・かさつきの原因となります。

【界面活性剤の吸着・残存】

市販の洗浄剤は成分改良が進んだといっても、やはり皮膚障害は発生しています。またシャンプーによる毛髪ダメージを経験された方もおられるでしょう。

皮膚へのダメージ

界面活性剤の濃度と皮膚の刺激性に関する研究報告があります(河合通雄ら 花王石鹸㈱ 1978年)。試験では健康な成人5人の両腕30か所に界面活性剤を1日1回10分間接触させてその後洗浄しました。これを2日間行い接触24時間後の皮膚の反応を観察しました。

結果として界面活性剤0%および0.5%濃度では1回目2回目ともに何の反応も現れませんでしたが、5%濃度において2回目実施後に皮膚の乾燥・落屑および充血による紅斑が発生しました。界面活性剤による皮膚ダメージはその濃度と刺激回数とに関係があるようです。

毛髪へのダメージ

ブラッシングを行うとペットの被毛につやが出てきます。これは毛穴から分泌された皮脂が毛表面に薄く広がるためです。この皮脂のコーティング作用により毛は乾燥から守られますが、同時に小さなごみやほこりが付着して汚れやすくもなります。

毛は中心部から毛髄質、毛皮質、毛小皮という3層構造をしています。最表層の毛小皮は薄いウロコ状でキューティクルとも呼ばれます。次にこのキューティクルに対する界面活性剤の影響についての試験データを見てみましょう(宮澤 清ら 資生堂㈱ 1989年)。

6種類の界面活性剤水溶液の中に男性の毛髪を浸し、3時間の超音波処理を行い、規定面積あたりのキューティクル枚数をカウントしました。結果では、界面活性剤の中には無処置対象と比べて、大幅にキューティクル数を減少させるものがありました。

シャンプーを行うということは毛表面をコーティングしている皮脂を洗い落すことです。洗浄力が強力な界面活性剤は皮脂をしっかり取り除くため、キューティクルも傷付けて剥がします。損傷を受けた部位からは水分やタンパク質が逃げてしまうため毛髪は乾燥し、これが枝毛や切れ毛の原因となります

皮膚への残存性

ボディーソープやシャンプーによって皮膚や毛がダメージを受けるのは、成分の1つである界面活性剤が影響しているのは確実のようです。しかし市販されているすべての洗浄剤で障害が起きているわけではありません。

先ほど皮脂の洗浄のしくみのところで、「吸着→ローリングアップ→乳化・分散」の3ステップを紹介しました。このように汚れを落とすには、まず初めに界面活性剤が皮膚や毛に吸着・浸透する必要があります。

ポーラ化成工業㈱の橋本文章らは代表的な4種類の界面活性剤の皮膚への吸着性について検討しました(1989年)。実験用のブタの皮膚を使い、洗浄時間と皮膚への吸着量を測定した結果、界面活性剤の中には皮膚への残存性が大変高いものがあることが判りました。

皮膚への吸着・浸透性が高い=皮脂の洗浄力が高いということですが、その代わり水洗後も残存するため皮膚や毛へのダメージも強くなります。肌に優しい洗浄剤とは、皮膚への吸着・残存性の低い界面活性剤を使っているものということになります。

ペットの中には皮膚がとても敏感で、肌に合ったシャンプー探しに苦労されているオーナーは少なくありません。一般的に界面活性剤は石油から作られますが、現在では植物由来の界面活性剤を原料とするシャンプーも販売されています。

シャンプーはヒトもペットも大変気持ちが良いものです。ショップスタッフとよく相談し、内容成分をしっかりと確認してペットの皮膚に優しいシャンプーを選びましょう。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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