獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「肉のドリップと脱水シート」

冷凍しておいた肉を解凍すると、多い少ないはあるもののどうしてもドリップが出てしまいます。しかも軟らかい上質な肉ほどその量は多いため、とても損をした気分になります。前回確認した冷凍条件(急速冷凍)や解凍方法(低温解凍)の他に何か良い対策はないものでしょうか。

【ドリップの成分】

ドリップは元々肉、すなわち筋肉細胞の中や細胞間に含まれていた水分です。これが流れ出てしまうということは、食べた時のパサつき感につながります。さらにこのドリップには肉がもつ大切なうま味や栄養成分が含まれています。

肉のドリップ成分

豚肉を例にドリップに含まれる成分を確認してみましょう。-25℃で冷凍しておいたロース肉、もも肉、ばら肉を5℃で一晩かけて低温解凍し、流出したドリップの内容成分を分析した結果があります(塚正泰之ら 丸大食品㈱ 1992年)。

この報告によると3種類の肉に共通してドリップの90%は水分、残りのおよそ10%はタンパク質/アミノ酸でした。また他にも水溶性のビタミンや、ミオグロビンといった肉の赤い色素も含まれています。

流出するミネラル

ドリップ中には量はわずかですがミネラル分も含まれています。流出してしまうミネラルのほとんどはNa(ナトリウム)とK(カリウム)で、この2つは細胞の中に存在しているものです。冷凍中に成長した氷の結晶が細胞を破壊し、中から漏れ出した結果であることが判ります。

対してCa(カルシウム)やMg(マグネシウム)はドリップにはほとんど含まれません。これらは骨を構成しているミネラルであるためです。

このように解凍時にドリップが出るとタンパク質/アミノ酸をはじめビタミン、ミネラルといった肉の大切な栄養成分も失うことになります。気分だけではなく実際に栄養ロスが起きているということです。

【脱水シート】

ペットのおやつにジャーキーや魚の干物を与えているオーナーの方は多いと思います。これらは水分を飛ばすことにより美味しさが濃縮され、保存性もアップした食品です。自宅で燻製や干物を作る下ごしらえの際に脱水シートがあるととても便利です。

脱水シートとは?

みなさんは脱水シートというものを使われたことはありますか?ただのビニールと同じくらいの薄さですが、2枚の薄い膜が糊の成分をサンドイッチした構造をしています。

この膜は半透膜というもので水は通しますが、アミノ酸やタンパク質といった大きな分子のものは通過させません。そして間に挟まっている糊成分が半透膜を通ってきた水分をグイグイと吸収してゆきます。

このような仕組みをもつ脱水シートで肉を包むと水分だけが吸い取られ、アミノ酸やタンパク質はそのまま残るため、結果的にうま味成分が濃縮されるということになります。

ドリップシートと脱水シート

脱水シートに似たものにドリップシートというものがあります。スーパーで肉やお刺身を買うとパックの中に敷いてある白いシートがドリップシートです。ドリップシートがあると赤い肉汁を吸い取り、パックからドリップ漏れがないため安心ですが、これと脱水シートとはまったくの別物です。

ドリップシートはウレタンや不織布からできています。そのため肉から出る水分はもちろん、うま味成分もすべて吸い取ります。対して脱水シートは半透膜で作られているため、水分のみを吸収します。すなわちドリップシートでは栄養成分も奪い取ってしまうということです。

【脱水シートの働き】

肉を冷凍する時、あらかじめ脱水シートで包んでおくと解凍時のドリップを減らすことができます。ではどれくらいの効果があるのかを実験データで確認しましょう(保井明子ら 仙台白百合短期大学 1996年)。

冷凍時の脱水効果

保井らは次のような条件で肉を冷凍および解凍し、水分の減少率(%)を測定しました。

●供試肉 牛肉スライス、豚肉スライス、合い挽きミンチ
●グループ
  無処置区 …肉をそのままフリージングバックに入れ冷凍
  脱水シート区 …肉を脱水シートで包み、フリージングバックに入れ冷凍
●冷凍条件 家庭用冷凍庫(-18℃)×4週間
●解凍条件 流水解凍×3時間

冷凍保存後の各肉の重量を測定し、その減少量から水分が出て行った割合を算出しました。その結果、無処置区ではわずかに1~2%でしたが、脱水シート区では4.5~7%もの高い値でした。

脱水シートで肉を包むと冷凍が完了するまでの間に平均5%ほど脱水されるということです。これは最初から水分を奪っておくため、肉が凍り始めて0℃~-5℃までの最大氷結晶生成帯を通過しても氷の結晶は大きくならず、細胞を壊しにくいということを意味します。

解凍時のドリップ減少効果

肉以上にレバーはドリップ量が多く、しかも色はピンクではなく真っ赤です。これは筋肉と比べて肝臓の細胞は弱く、肝臓自体に多くの血液を含んでいるためです。

豚レバーを用いて上記と同じように2つのグループに分け、解凍後のドリップ量と中に含まれているアミノ酸量を比較しました。すると脱水シート区のドリップ流出量は無処置区の約1/2、アミノ酸量は約2/3に抑えられていました。

肉はもちろんドリップが出やすいレバーにおいても、冷凍時に脱水シートを利用することでドリップ量を減らし、栄養/うま味成分を保持する効果が確認されました。

脱水シートの作用

肉の冷凍準備として脱水シートを利用するとドリップの流出を抑えることができます。このことが次の調理の段階においてうれしい作用を呼び込むことになります。

肉のドリップが薄いピンクをしているのはミオグロビンという色素によるものです。この色素が肉から抜け出ると解凍した肉の色が抜けてしまいます。この退色と水分流出/乾燥が起きた状態がいわゆる冷凍焼けです。ドリップを減らすことは肉の冷凍焼けを防ぐことにもつながります。

脱水シートは水分だけを吸収し、肉がもつうま味成分であるアミノ酸やタンパク質はそのまま残ります。結果的にこれは肉のうま味が濃縮されることになります。

肉の調理方法としては焼く・煮込むなどがあります。このときあらかじめ肉からある程度余分な水分を奪っておくとその分、調味料が浸透しやすくなります。特に煮込み調理の時は味の浸み込みが良くなります。

肉はペットたちの食事に欠かせない材料です。現在は小型犬の飼育が主流になっているため、与える肉自体の量はさほど多くはありません。食事すべてを手作りされているオーナーはもちろんですが、市販フードへのトッピングに肉を利用している方は少量に小分けにして冷蔵・冷凍保存されていると思います。

ドリップのほとんどは水分ですが、その中にはアミノ酸やビタミン、ミネラルなど大切な成分も含まれています。ペットたちの成長と健康維持のために、上手に冷蔵・冷凍・解凍を行い、安全で美味しく栄養価も高い状態の肉を食べさせてあげましょう。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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