私が、まだトリマーをしている頃、ひょんなことから、「日優（ヒュー）」（トイプードル・女の子）はやってきました
新しい家族の元に引き取られるため、
東京から一人旅をしてきた生後2ヶ月のトイプードルの女の子が、当店に到着しました。
ペットキャリーを開けた瞬間に、
まるでびっくり箱のように「キャンキャン」と鳴きながら真っ白で小さなプードルが飛びだしてきました。
店中をぴょんぴょん駆け回り、まるでうさぎさんのようでした。
「なんて、かわいいの〜〜♪♪♪」
その夜、1匹の子犬が新しい人生をスタートさせるべく旅立っていきました。
・・・翌朝。
そのプードルは、私達の元に戻ってきました。まさかの出戻りです。
帰ってきたその日から、この子は、私達スタッフ以外に心を開かなくなりました。
私達は、情が移らないよう、手のひらサイズの小さなプードルに、「おちびプー」と仮の名前を付けました。
あまりにも小さかったので、私はいつもトリミングエプロンのポケットに「おちびプー」を入れ、
連れ歩き、仕事をしていました。
これではダメダメ、新しい家族を探さないと！
店頭にケージをおいて、「おちびプー」をアピールしました。
でも、興味を持ってみてくださるお客様に不信感むき出しの顔をして警戒し、
ケージの隅っこで小さくなって出てきません。
愛嬌の一つも見せない子犬には、なかなか新しい家族はあらわれないものです。
「小さな体に襲った命の危機
そんな「おちびプー」が、生死をさまよう危険な状態を迎えてしまいました。
当時はまだ発症すると多くの子が命を落としてしまったパルボウィルスを発症したのです。
激しい下痢と嘔吐を繰り返し、みるみるうちに弱っていきました。
それでなくても小さな体は、骨と皮のようになってしまいました。
このころのこのウィルスは、私にとっては、絶望的なイメージだったので、
私は、毎晩、泣きはらして、夜も眠れませんでした。
犬の人生が15年なら、私の人生の15年分を「おちびプー」にあげたい、と本気で願っていました。
今考えると、頑張っている子犬に対して、自分はなんて後ろ向きだったんだろうと恥ずかしくなります。
でも、その頃の私は、まだ、経験も知識も薄く強い気持ちを持っていませんでした。
そんな弱気な私をよそに、1週間後、「おちびプー」は、見事に、病に勝ちました。
その頃では、これは奇跡のような出来事でした。「おちびプー」は頑張り屋さんだったのです。
復活の次の日「おちびプー」は、
「日優（ヒュー）」
と命名され、当店の看板犬となり、
そして、私達の大事な愛犬になりました。
〜ここでひとやすみ〜
愛犬、あるあるエピソードベスト3「日優」編
�� 絶対負ける。
他のワンちゃんが寄ってきたら信じられないくらい憎たらしい顔で怒って振り払っていた「日優」ですが、実は、、、
けんかには一度も勝ったことがない。
エラそうに追い返したら反撃されること数回、必ず、最後は、ひっくり返されて亀がひっくり返ったような姿になってしまう。自分より小さなお友達犬に何度も負けた、「日優」10歳。
�� 唯一のいたずら
本当にいたずらといういたずらをしたことがない優等生「日優」
唯一、楽しんだのが、ティッシュ出す出す作戦。
知らない間にティッシュケースのティッシュを全部だして空にする。
出したティッシュに興味なしで、出すばかり。クールな遊びに許してしまう。「日優」5歳、派手ないたずら興味なし。
�� 恐怖のあまり。。。
絶対に他の人に心を許さなかった「日優」ですが、態度が大きく、エラそうなプライド高き看板犬だったので、強く見られがち。ある時、私が「日優」を抱っこしていると、あるお客様が、
「日優」を抱きたい。とおっしゃったので、そのまま「日優」を渡すことに。
ジャー。
やってしまいました。おもらし。
そんな怖がりだと思っていなかったお客様もびっくり。そこまでとは思わなかった私もびっくり。
「日優」3歳、心はデリケート、超小心者。
プライド高き看板犬「日優」
命の危険を乗り越えた「日優」は、病気の間食べれなかったから、何でも食べさせてあげよう的なよくある悪い例がそのまま取り込まれ、
しばらくの間、欲しいとねだれば何でも食べさせてくれるという悪い習慣をつけてしまいました。
絵にかいたような食いしん坊に育ちました。
真っ白でツヤツヤ、密集した被毛は、自慢したくなるほど美しいものでした。
（あまりに密集しているので、トリミングは大変でした。。。）
「ミニチュアプードルですか？」
と聞かれることもあるくらい、
ぐんぐん成長し、小さな体は、立派なプードルに育ちました。
親バカは承知でいいますが、プードルらしく凛として、そして、美人顔でした。
他のワンちゃんと仲良くする気はなく、
「遊ぼう！」
と寄ってこられると、憎たらしい顔をして怒る始末でした。
営業や銀行の方や宅配便の方など、いわゆる「お金を持っていく人」に対して、厳しく、
帰り際に後ろからすごいスピードで追いかけて吠えまくり、「日優」なりには追い返していたつもりだったようでした。
そして、大人になっても、やっぱり、他人に心を開きませんでした。
愛想の一つもない「プライド高き看板犬」の所以です。
でも、本当は従順で忠実、怖がりで回りの様子を敏感に察知できる賢い子でした。
外では、私達が少しでも離れると不安で泣いてじっとしていられませんでした。
だから、絶対に私達から離れませんでした。わがままや聞き分けのないことは決してしませんでした。
「日優」のボスであった社長の川瀬の顔色をちゃんと見て、
社長には一番わがままを言いましたが、一番、顔色も窺っていました。
社長が怒っていると、「日優」には全く関係ないのに、隅に逃げてブルブル震えていました。
私がつらい時、悲しい時はすぐ横に来て、「抱っこして」と甘えてきました。
「日優」は毎日、私の仕事中に抱っこをせがんで抱っこされながら寝ていました。
スタッフが悲しくて泣いていると、寄り添ってなぐさめてくれました。
「日優」が6歳の時、当店主催のしつけ教室が始まり、それまで、お手の一つも教えられてなかった「日優」が突然、トレーニングをすることになりました。
平均年齢1歳くらいの子の中、6歳と中年だった「日優」ですが、
それでも、抜群の集中力で、色々なことを覚えてくれました。
激動の毎日をともに過ごした「日優」
「日優」とは、とにかく、色々なところへいき、色々な経験をし、そして、どこにでもいつも一緒に連れて行きました。
ファッションショー、山や川でのアウトドア、野外での写真撮影、トレーニング大会、パーティー、
どこにいくのも、「日優」と一緒でした。
写真撮影など、「日優」には関係のない時でも、
「日優」を連れて行きました。
当店も町のペットショップから、オリジナルブランド「ASHU」の立ち上げを迎え、そこから、短期間の間に、様々なめまぐるしいほどの毎日を過ごすようになりました。
その期間を「日優」とともに過ごしてきました。
今思えば、「日優」もなかなかハードな毎日を過ごしていたかもしれません。
おかげさまで、私にとって、「日優」との思い出は、たくさんあって、つきません。
看板犬として勤め上げた立派な「日優」
「日優」は、15歳6ヶ月でこの世を去りました。
晩年は、クッシング症候群を発症し、足腰が弱ってしまっていましたが、
それでも、食べることは大好きで、最後まで元気にごはんを食べてくれていました。
亡くなる日の朝、「日優」が朝ごはんを食べなかったと聞きました。
嫌な予感がしました。
お昼、仕事をしていると、「日優」の様子がおかしいと聞き、私はあわてて「日優」を抱っこして、
いつものようにめいっぱい「日優」を褒めました。
親バカな私は、口癖のように「日優」に
「日優ちゃんが一番かわいいもんねぇ」
と声をかけていました。
だから、最後もめいっぱい「日優」に同じことをいいました。
「日優」は、ボスである大好きな社長の腕の中で眠りました。
実は、亡くなる前日は会社がお休みでした。
「日優」は、社長と一緒に出勤していたので、会社が休みだと「日優」もお休みです。
私は、愛する「日優」の最期はこの目で看取ってあげたいと強く思っていました。
「日優」は、最期まで看板犬として、頑張って、出勤してくれたのだと思います。
「日優」が頑張っていた証に、「日優」が亡くなり、たくさんのお声をいただきました。
「日優」を影ながら応援して下さっていた方がたくさんいたことを知りました。誇らしく思いました。
今でも、毎年、「日優」のお誕生日にお花を頂きます。
こんな幸せな看板犬はいるでしょうか。
15年6ヶ月、看板犬として勤め上げてきた立派な「日優」。
美人で賢くて、思い出いっぱい、自慢の愛犬でした。
