獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「かまぼこの抗がん作用」

スケソウダラを主原料とする練り物はタンパク質のかたまり食品です。摂取された練り物は消化・吸収が速く、筋肉の維持増強に役立ちます。この作用は激しい運動が難しくなった高齢者において確認されています。今回は、練り物の代表であるかまぼこのタンパク質にがんの発生や増殖を抑える働きがあるという研究内容を紹介します。

【がんの発生を抑える】

全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会という組織があり、ここでは練り物がもつ健康機能性を明らかにするための研究助成を行っています。この研究成果には抗酸化作用、食後血糖値の上昇抑制作用、認知機能の維持向上作用など様々な試験データがあり、その1つにがん抑制に関するものがあります。

大腸がんの発生率

薬品を投与して人為的に大腸がんを発生させたマウスに対するかまぼこの給与効果を確認した試験報告があります(福永健治 関西大学 H16年度)。

●被験動物 大腸がん誘発マウス
●グループ 
  対照群 …標準エサを給与
  試験群 …かまぼこ凍結乾燥粉末配合エサ(5%、10%)を給与
●測定項目
  がん発生率、がん病変数、がん細胞の分化度

上記の条件で3グループのがん発生率を見ると対照群100%(10匹/10匹)、5%添加群77.8%(7匹/9匹)、10%添加群50%(5匹/10匹)という結果になりました。エサに配合されたかまぼこの割合が多いほど、大腸がんの発生率が低く抑えられていることが判ります。

がん病変数の減少

次はがん発生マウス1匹あたりの平均がん病変数です。これも対照群(3.2個)、5%添加群(2.7個)、10%添加群(1.8個)とかまぼこ配合が多いほど小さい数値になっています。このようにかまぼこを給与されたマウスにおいて、大腸がんの発生を抑える作用が確認されています。

【がん細胞の増殖を抑える】

がんとは増殖が激しい悪性腫瘍の1つで、皮膚や臓器の上皮に発生するものをいいます。同じ発生したがん細胞でも増殖スピードなど悪性度に差があります。

がんの悪性度

発生したがん細胞の増殖度、浸潤度(=組織への広がり度合い)、他の臓器への転移性を元にした悪性度を「分化度」といいます。分化度の低いがん細胞ほど悪性度が高く、活発に増殖すると評価されます。

先程の試験において3グループのマウスに発生した大腸がん細胞をこの分化度で評価したところ、悪性度が高い低分化の平均細胞数は対照群(5個)、5%添加群(2個)、10%添加群(0個)でした。かまぼこ給与マウスでは発生したがん細胞の悪性度も低く抑えられたという結果でした。

がんの増殖抑制

体内でがん細胞が増殖するには栄養の供給が必要です。前出の福永は骨髄細胞腫瘍というがんをマウスに移植し、これにかまぼこ由来タンパク質を5%、20%、50%の割合で配合したエサを与えました。

対照群マウスのがん細胞増殖率を100として比較した結果、配合割合が多いほど増殖率は低く抑えられていました。同時に各群マウス体内の血管を新しく作る際に必要な酵素の活性度を測定したところ、かまぼこタンパク質の配合割合が多いほど低い値でした。

この結果から、かまぼこタンパク質またはこれが消化されたペプチドにはがん細胞を成長させる血管の新生を抑える作用があり、これががん抑制につながったと考えられています。

【がんに対する免疫を強化する】

免疫力という言葉があります。病原体や異物から体を守る免疫には抗体が関係する「体液性免疫」と攻撃専門の細胞による「細胞性免疫」があります。この内、がんに対する免疫では細胞性免疫の中のT細胞というものが主体になります。

細胞性免疫の強化

魚肉タンパク質の摂取が細胞性免疫に及ぼす影響について調べた次のような報告があります(兼安真弓 山口県立大学 H19年度)。

●被験動物 マウス
●グループ 
  対照群 …牛乳カゼインをタンパク源とするエサを給与
  試験群 …スケソウダラすり身の乾燥粉末を配合したエサを給与
●測定項目
  免疫細胞(リンパ球、T細胞、NK細胞)の活性

上記のエサを13週間給与後、脾臓のリンパ球数を測定したところ両群に差は認められませんでした。リンパ球とは白血球の1つで、さまざまな免疫細胞の親のような細胞です。

次にがんを攻撃するT細胞の割合をみると、対照群と比べ試験群マウスではサプレッサーT 細胞は低下し、ヘルパーT 細胞は上昇していました。サプレッサーT 細胞とはがん攻撃を抑制・調整するブレーキ役、ヘルパーT 細胞とはがん攻撃を亢進するアクセル役の細胞です。

また両群マウスを細菌毒素(=異物)投与で刺激したところ、試験群マウスではリンパ球の増殖能力がアップしていました。魚肉タンパク質を摂取すると免疫細胞(リンパ球)の増殖準備が出来上がり、がんをターゲットとして攻撃するアクセル役のT細胞が増加することが判りました。

免疫細胞の活性強化

魚肉タンパク質の摂取により、がんを攻撃する免疫細胞の数が増加することは確認されましたが、その攻撃力はどうでしょうか?リンパ球から派生した免疫細胞の1つにNK細胞(ナチュラルキラー細胞)というものがあります。これはウイルスに感染した細胞やがん細胞を専門に攻撃する細胞です。

このNK細胞の攻撃力=活性を測定した結果、対照群マウスよりも試験群マウスの方がアップしていました。このようにスケソウダラを原料とした魚肉タンパク質を給与されたマウスは、がんに対抗する免疫細胞の数だけでなく攻撃力も強化されることが確認されました。

がんを抑えるしくみ

かまぼこががんの増殖を抑える詳しい機序はまだまだ検討中です。その中の1つとして原材料の魚肉タンパク質が消化分解されてできたペプチドが大きく関係しているのではないかと考えられています。現在、魚肉由来ペプチドの作用として以下のようなものがあります。

○血管新生の抑制
 …がんに栄養を供給する血管の新生発達を抑える
○胆汁酸の生成抑制
 …大腸がんの背景である胆汁酸の生成を抑え、排泄を促進する
○細胞性免疫の強化
 …がんを攻撃処理する免疫細胞を強化する

今回は練り物の代表格であるかまぼこにがんを抑える作用があるという研究データを紹介しました。しかし、かまぼこを食べていれば全てのがんが治る/予防できるということではありませんので誤解のないようにご注意願います。

ヒトと同様にペットにおいてもがんは死亡原因の上位に位置しています。今後の研究により、抗がん作用を含め魚肉タンパク質/かまぼこがもつ様々な健康機能が明らかになることに期待したいと思います。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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