獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「植物性タンパク質のちから」

タンパク質は動物の筋肉の素になっている栄養素です。炭水化物と脂質と合わせて3大栄養素といわれ、もちろんペットフードにも含まれています。このタンパク質には肉や魚といった動物由来のもの(動物性タンパク質)と豆などの植物由来のもの(植物性タンパク質)の2種類があります。そして現在、環境負荷や健康機能の面から植物性タンパク質の価値が注目されています。

【食事・フードのタンパク質】

まず初めに私たちやペットが食べている食事・フードのタンパク質について確認しておきましょう。

タンパク質の割合

我々日本人が毎日摂っている食事の栄養素割合は、炭水化物68%、タンパク質18%、脂質14%といわれています。これに対して市販ペットフードではドッグフードで炭水化物60%、タンパク質25%、脂質15%、キャットフードは炭水化物45%、タンパク質35%、脂質20%となっています(環境省 平成21年)。

イヌは雑食性ネコは肉食性であるため、同じペットでもネコフードにはタンパク質が多く配合されているようです。そして食事やフード中のタンパク質は、食材・原材料から見ると動物性と植物性から成っています。

4大作物のタンパク質

世界中で作られ主食となっている大豆、小麦、トウモロコシ、米は4大作物と呼ばれています(大豆の代わりにジャガイモとする場合もあります)。作物=植物ですので穀類のように炭水化物が多いというイメージがありますが、それぞれのタンパク質含有量を見てみましょう。

先程の4大作物のうち、小麦、トウモロコシ、米のタンパク質量は100gあたり6~8gです。これに比べて大豆は3倍以上の33.8gもあります(日本食品標準成分表 八訂)。「大豆は畑のお肉です」と言われるのも納得です。

食材中のタンパク質

では肉・魚・卵のタンパク質量を確認しましょう。100gあたり牛肉(21.3g)、豚肉(22.1g)、鶏肉(22.0g)、魚ではマグロ(24.3g)、マダイ(20.6g)、そして鶏卵(12.2g)となっています。

これらの値だけを見ると肉・魚のタンパク質量はおよそ20gで大豆(33.8g)よりも少なく見劣りする感がありますが、これは食材に含まれている水分量の関係によるものです。肉・魚・鶏卵は70%前後の水分量という条件で算出されており、大豆も同じようにゆで大豆(水分量65.4%)とするとタンパク質量は14.1gになります。

大豆は動物性タンパク源の肉・魚と比べるとその含有量はやや少ないものの、植物性タンパク質の有用な代表食材であることは変わりありません。

【タンパク質の摂取量】

みなさんは厚生労働省による「国民健康・栄養調査」というものをご存知でしょうか?これは毎年11月に全国規模で実施されるもので、私たち国民の健康および栄養状態の実態を調査するものです。

動物性/植物性の比率

国民健康・栄養調査では男女別、年齢層別、地域別に食事内容から細かく栄養摂取状況が分析されています。令和元年の報告によると調査対象5,865人の1日あたりの平均摂取量はエネルギー1,903kcal、炭水化物248.3g、タンパク質71.4g、脂質61.3gとのことです。

この中で20歳以上の成人に絞って見てみると、1人1日あたりのタンパク質摂取量は72.2gとなっています。そしてその内訳は動物性食品由来40.1g(55.5%)、植物性食品由来32.1g(44.5%)です。タンパク源というと肉や魚のイメージが強いのですが、意外と半分近くは植物性の食品から摂っているということでした。

食品別の構成割合

国民健康・栄養調査ではさらに具体的にどのようなジャンルの食品からその栄養素を摂っているかも分析しています。成人が1日に摂っているタンパク質72.2gの内訳比率のトップ5は1位)肉類、2位)穀類、3位)魚介類、4位)大豆・豆類、5位)卵類です。

トップの肉類は納得ですが、魚介類を押さえて第2位が穀類であることにみなさんも驚かれているのではないでしょうか。1日に摂るタンパク質の約20%は穀類すなわち米、加えて大豆・豆類は魚介類に続き8%という値でした。

米を主食とする私たちが摂取するタンパク質全体のおよそ30%は植物性タンパク質が占めており、その大部分は米(ご飯)であったという意外な結果でした。

【植物性タンパク質の作用】

新型コロナの流行が一段落したことから、街では大勢の外国人観光客を目にします。海外の人達から日本食は健康的であるとされ、中でも豆腐は人気が高い食品です。また近年は同じ大豆を原料とする「代替肉」の開発など、多方面から植物性タンパク質は高く評価されています。

BCAAの吸収性

タンパク質をつくるアミノ酸の中でBCAA(分岐鎖アミノ酸)というグループがあります。このBCAAとはバリン、ロイシン、イソロイシンの3つのアミノ酸のことで、筋肉の代謝に重要な働きをしていることが良く知られています。

動物性タンパク質と植物性タンパク質を同時に摂取することによる、筋肉合成への影響を調査した研究報告があります(キューサイ㈱ プレスリリース 2019年)。試験内容は次のとおりです。

●被験動物 ラット
●被験食品 動物性タンパク質(乳由来)、植物性タンパク質(大豆由来)
●グループ
試験群 …動物性+植物性タンパク質食品を給与
対照群 …動物性タンパク質食品のみ給与
●測定項目 血中BCAA濃度、腓腹筋重量

上記食品給与中の両群ラットの血中BCAA濃度を測定しました。変化が判りやすいように試験開始時の値を100として推移を見てみると、対照群では給与開始45分でピークに達し、その後180分まで徐々に減少してゆきました。

これに対し試験群では45分後のピーク値は少し低いものの、その後の血中濃度は試験群よりも高く維持されていました。動物性タンパク質と植物性タンパク質を同時に摂取すると、BCAAの吸収性が持続することが確認されました。

筋肉量の保持

続いて両群に各試験食品を17日間給与し、腓腹筋(ふくらはぎ部分の筋肉)の重量を比較しました。すると試験群の筋重量が約1.6gであったのに対し、対照群のそれは4.7%ほど減少していました。

タンパク質を摂取する場合、動物性タンパク質のみよりもこれに植物性タンパク質を加えた方がアミノ酸、特にBCAA(分岐鎖アミノ酸)の吸収が良好となります。これより骨格筋の合成が促進され、筋肉量は保持されるということが判りました。

この作用は成長期はもちろん、運動量減少による廃用性萎縮が問題となる高齢動物の筋肉維持対策にも応用できると期待されます。

市販のペットフードは30%前後のタンパク質が含まれるように設計されています。本来肉食動物であるイヌやネコにはタンパク源として肉が合っているため、消化面から植物性タンパク質はあまり適切ではないとされてきました。しかし手作りフード派のみなさんは、ペットが豆も白米もイモもしっかり食べていることをよくご存知です。

タンパク質は私たちやペットの筋肉を作る素となる大切な栄養素ですが、腎臓疾患においてはこのタンパク質の摂取が強く制限されます。次回は食事中のタンパク源を動物性から一部植物性に置き換えることの効果を紹介します。

(以上)

執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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