獣医師が解説

【獣医師が解説】放っておけない歯と健康の関係

前回はイヌやネコに歯周病が多い理由についてお話をしました。今回はこの続きとして、歯や口腔内の状態と健康との関係について考えます。

歯周病の原因菌

私たちヒトやペットの口の中には多種多数の細菌がいます。まずは歯周病の原因菌について見てみましょう。

ヒトの歯周病菌

歯周病は肺炎や下痢などと異なり、1種類の病原体(=細菌やウイルス)によって起こるものではありません。ましてや口の中はいろいろな微生物がいるため特定は難しいものです。

その中でヒトの歯周病に最も関係しているものとしてポルフィロモナス・ジンジバリスという菌があります(長崎大学 中山浩次 教授など多数の研究者が報告)。長いので「ジンジバリス菌」とします。ちなみにジンジバとはラテン語で「歯ぐき、歯肉」の意味です。

イヌの歯周病菌

当初、イヌの歯周病菌もヒトと同じジンジバリス菌といわれていましたが、現在ではポルフィロモナス・グラエが最重要菌として報告されています(菌の性状がジンジバリス菌と少々異なるようです)。これもまた呼びづらいので以降「グラエ菌」としましょう。

グラエ菌の保有率

このグラエ菌ですがどれくらいの割合でイヌはもっているのでしょう。麻布大学の加藤行男 氏ら(イヌ26頭で調査 2011年)や大阪大学の山崎由衛 氏ら(イヌ66匹で調査 2012年)の調査ではイヌのおよそ70%がこの菌を保有しているとのことでした。

ではこのグラエ菌はどのような性状をもっていて、歯周病を引き起こすのでしょうか?

グラエ菌の性状

グラエ菌を薬品で染めて顕微鏡で観察すると、赤色をした棒状の菌として見ることができます。この菌の重要な性状として次の3つがあります。それぞれが歯周病と体の健康に大きく関係しています。
 

嫌気性菌

嫌気性菌とは酸素があると死んでしまう菌のことです。口臭や歯垢の話でも登場しました。空気に触れない歯周ポケットの中はグラエ菌には絶好のすみかということです。

線毛

菌体のまわりに生えている多数の毛の様なものを線毛と呼びます。これによりグラエ菌は他の菌や歯垢に絡みついて、歯周ポケットの中にすみつきます。

この線毛には3つのタイプ(A型、B型、C型)があり、グラエ菌が体の中のいろいろな部位に付着する仲立ちをしています。

内毒素

内毒素とは菌体の内側表面付近に存在する毒素のことです。ふだんは何もしませんが、菌が死んで壊れると中からこぼれ出てきます。そして血流に乗って体中に運ばれます。

また内毒素はLPSとかエンドトキシンとも呼ばれおり、グラエ菌以外にも大腸菌やサルモネラ菌、そしてジンジバリス菌ももっています。

歯と体の健康

歯や口腔内の状態と体の健康とはどのような関係があるのでしょうか?

心臓病との関係

心臓は体中に血液を送るポンプですが、その血液が逆流しないように内部には弁が4か所備わっています。その1つに僧帽弁というものがあります。僧帽とはローマ法王が儀式でかぶる帽子のことで、これに形が似ていることから名付けられました。

この弁が上手く閉じなくなる病気が僧帽弁閉鎖不全です。イヌの心臓病の中では最も多く小型犬で好発しています(発症のピークは4~5歳)。原因としては弁の肥厚や心臓の筋肉の異常などがあります。

イヌの僧帽弁閉鎖不全と歯周病菌との関係を調査した報告がありますので紹介します(大阪大学 野村良太 准教授ら 2015年)。

●調査対象は僧帽弁閉鎖不全犬25頭、健常犬32頭
●口腔内のグラエ菌保有率を比較した
●閉鎖不全犬の内、C型線毛をもつグラエ菌保有率は48%であった

閉鎖不全犬では、口腔内に3タイプの内のC型線毛をもつグラエ菌が多かったという成績でした。ではなぜ口の中の菌が心臓病と関係があるのでしょうか?それには次のようなルートが考えられます。

歯ぐきの出血部 …ここからグラエ菌が血管内に侵入
 ↓
血流・心臓 …グラエ菌が血流に乗って心臓に到着
 ↓
僧帽弁 …グラエ菌が弁に付着(C型線毛のはたらき)
 ↓
弁の肥厚 …上手く閉鎖しなくなる

先程、線毛は他の菌や体の組織に付着する役目をしていると述べました。なんとグラエ菌は線毛によって僧帽弁に付着して、閉鎖不全を引き起こしている可能性があるということです。

糖尿病との関係

広島県歯科医師会に所属する宗永泰一 氏らが大変興味深い報告をしています(2013年)。歯科医師である宗永 氏は糖尿病患者を対象として、歯周病治療の有無と糖尿病の改善具合との関係を調べました。

歯周病の治療を行うと血糖値が改善され、糖尿病の診断指標が0.5ポイントも低下し6.9になったという結果です。歯周病と血糖値には何か関係があるのでしょうか?現在、次の様な流れが考えられています。

歯ぐきの出血部 …今回もここからグラエ菌が血管内に侵入
 ↓
血液中 …体の免疫作用によりグラエ菌は死滅して壊れる
 ↓
内毒素の放出 …壊れた菌体から内毒素が放出され全身に回る
 ↓
血糖値の上昇 …内毒素がインスリンの働きを抑える

このテーマではイヌの研究報告はありませんが、ヒトにおいて歯周病菌(ジンジバリス菌)の内毒素が糖尿病の進行に関与しているというものです。

グラエ菌も内毒素をもっていますので、イヌにおいても同様なことが考えられます。

その他の健康への関与

口の中の細菌がペットの病気に関係している事例は他にもあります。以前のコラムでも紹介しました口臭や誤嚥性肺炎などもその一例です。

意外なことに歯や口腔内の状態は全く関係ないと思われる病気とつながっているのです。

ヒトの健康との関係

最後にペットの口腔内細菌とヒトの健康の関係について見てみましょう。

ペット由来感染症

みなさんはペットとの楽しい毎日を過ごされていると思います。ちょっと嫌な話になりますがペットからヒトにうつる感染症があります。

トップバッターはなんといっても狂犬病(イヌ、ネコ)です。続いてペスト(ネズミ、リス)、オウム病(オウム、インコ)、トキソプラズマ症(ネコ)などけっこうあります。

パスツレラ菌保有率

このペットからうつる感染症としてパスツレラ症というものがあります。原因であるパスツレラとはイヌやネコの口腔内に常在する細菌です。

ヒトが感染すると咬傷や掻傷が腫れたり、気管支炎や肺炎などがおこります。ペット由来感染症のうちで最も注意が必要といわれています。

この菌の保有率はイヌで15~75%、ネコでは100%と報告されていますが、ヒトの口腔内には存在しません。

北里大学の川田明日香 氏らが、イヌ187頭とそのオーナー100人の口腔内パスツレラ菌の保有状況を調査しています(2010年)。結果として10%のヒトでパスツレラ菌の保有が確認されました。

グラエ菌保有率

また、大阪大学の山崎由衛 氏らがイヌ66頭とそのオーナー81人の口腔内グラエ菌の保有状況を調査しています(2012年)。この結果ではヒトのグラエ菌保有率は16%でした。

これら2つの調査結果から、イヌの口腔内細菌をオーナーが保有していることが判ります。つまりペットからオーナーへ菌がうつっているわけです。

理由としては触れ合った後に手を洗わないこと、キスや口移しで食べ物を与えることなどの濃厚な接触があげられます。

オーナーが行うペットへの愛情表現として抱きしめたり、頬ずり、キスなどがあります。また見つめ合い触れ合うことは、両者においてオキシトシンが分泌され幸福感が得られます。

しかし、ペットとヒトは異なる動物であることを忘れないで下さい。過度な接触は「ペットからヒト」へ微生物がうつる可能性があります。また逆にいいますと「ヒトからペット」へも何かの病原体をうつすことも意味してます。

ペットとの触れ合いは大切ですが、その後は手洗いやうがいを忘れずにお願いします。

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今回は歯周病を中心にペットの歯や口腔内の状態が全身の健康に与える影響について考えてみました。意外な病気とつながっていたり、ヒトの健康にも少なからず関与していることがわかりました。

ペットと私たちオーナーの幸せな生活のためにも両者のオーラルケアは大切です。

「本町獣医科サポート」
獣医師 北島 崇

執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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