獣医師が解説

ペットとの生活編: テーマ「新型コロナとオーナーデビュー」

新型コロナウイルスの国内流行が始まって1年が過ぎました。連日、新聞やテレビでは感染拡大に関するニュースを目にします。このような生活をしていると私たちの気持ちも滅入ってしまいますが、ペットオーナーのみなさんは愛犬・愛猫に心を癒されているのではないでしょうか。

【新型コロナとペット飼育】

新型コロナの感染が日本中に広まり、マスクの着用や手洗い消毒など私たちの生活は大きく変わりました。新しくペットを飼い始めた「ペットオーナーデビュー」もこの生活変化の1つでしょう。

ペットの飼育頭数

ペットの飼育はその時代その時代のくらしを反映しています。40~50年前はイヌ=番犬というイメージでしたが、バブル期の景気が良かったころはステータスとして大型犬の人気が高く、一緒に散歩をしている人を見かけました。

現在ではペット=家族という意識が一般化して、小型犬の室内飼育が主流になっています。またオーナーの年齢層では、子どもたちが独立し家を離れた後のシニア層が新しい家族の一員としてペットを飼い始めるという事例が増えています。

ペットの飼育頭数は数年ほど前にネコがイヌを上回るようになり、現在ではイヌは850万頭、ネコは960万頭くらいです。これを年ごとに見るとネコの頭数は横ばい状態ですが、イヌでは2018年を100とすると、2019年(98.6)、2020年(94.2)というようにジワジワと減少しています(日本ペットフード協会 2021年)。

ペットの新規飼育頭数

ペット、特にイヌの飼育頭数は減少傾向を示していますが、昨年からペット業界では大きな変化が見られています。それは新規の飼育頭数の増加です。これによりペット不足と生体価格の上昇が続いています。

全体として横ばいから減少を示している飼育頭数ですが、新しく飼われたペットの頭数は昨年では大きな伸びを見せました。2018年の新規飼育頭数を100とするとイヌは2019年(105.5)、2020年(120.6)、ネコも2019年(106.7)、2020年(123.8)という結果です。

このように昨年はイヌ・ネコともにオーナーデビューされた方が多かったことが判ります。もうご存知のようにこの背景には新型コロナの流行があります。

【オーナーデビューのきっかけ】

現在オーナーのみなさんは、どこでそのペットを入手されたでしょうか?近頃では保護犬・保護猫の譲渡会が少しずつ増えてきましたが、ほとんどの方はペットショップで購入されたと思います。しかし、イヌとネコとではその入手先や飼い始めた理由には違いがあります。

イヌを飼うきっかけ

東京都福祉保健局の調査(平成29年度)によると、イヌ入手先のトップ3は次のとおりです。

①ペットショップで購入(64.2%)
②知人からの譲り受け(13.9%)
③ボランティアから入手(6.8%)

また日本ペットフード協会もイヌを飼うようになったきっかけについてアンケートを行っています(2020年)。ここでもトップの回答は3年連続で「ペットショップで見ていて欲しくなった」というものでした。

しかし、今まで回答に上がって来なかったもので、昨年2020年に新しいきっかけが登場しました。それは「家族の誰かに家にいる時間が増えたから」というものです。

ネコを飼うきっかけ

同じく東京都の調査からネコ入手先を見てみると、トップの回答が異なります。第1位「拾った」と第5位「いつの間にか居ついた」を合わせると、およそ45%が元々は野良猫だったということでした。

①拾った(36.2%)
②知人からの譲り受け(15.6%)
③ボランティアから入手(12.1%)

またネコを飼い始めたきっかけも3年連続で「野良猫を拾った、迷い込んできた」がトップでしたが、ここでも昨年2020年に新しく「家族の誰かに家にいる時間が増えたから」という回答が現れました。

このようにイヌとネコではその入手先や飼育のきっかけに違いはありますが、昨年共通して「ペットの世話をする時間のある人が現れたから」というものが約10%の割合で見られるようになりました。いわゆる「おうち時間の増加」というものです。

【新型コロナとオーナーの生活変化】

新型コロナ感染により、たった1年の間に私たちの生活は大きく変わりました。これはペットを飼育されているみなさんも同じです。

在宅時間

日本ペットフード協会は20~70代のペットオーナー2,096人を対象に、昨年の新型コロナ感染による生活の変化についてアンケート調査を行いました。これによると全体の45%のオーナーが「在宅時間が増えた」と答えています。

これを年代別でみると、50代を境にしてこれよりも若い20~40代で平均よりも多くのオーナーがおうち時間が増えたと回答していることが判ります。

世帯収入

次は収入についてです。新型コロナの影響により「世帯収入が減った」と回答した人は全体の30%でした。この内、平均よりも高い回答率を示したのは30~50代です。

新型コロナのまん延防止として、現在も不要不急の外出やお店での飲食の自粛が求められています。業種によっては休業/廃業により収入が大きく減ったという事例は少なくなく、この中には昨年オーナーデビューされた方々もおられると思います。

このように、新型コロナは新しくペットを飼い始める余暇=時間を生み出しました。そして同時に、飼育に必要な経済的余裕=お金も奪い取ったということになります。

これから懸念されること

ここで少々嫌な話をしましょう。みなさんがペットの飼育ができなくなった場合、地域の動物愛護センターに相談するという方法があります。現在は「生涯飼育」が原則ですので、以前に比べると愛護センターでのペットの受入れは制限されています。

東京の動物愛護センターのペット引き取り理由が報告されており、内訳は次のようになっています(東京都動物愛護相談センター多摩支所 2019年度)。

《犬猫引き取り理由》
○飼い主の健康問題(68%)
…死亡(9%)、病気(59%)
○住居、経済的理由(28%)
  …経済的理由(26%)、引っ越し(2%)
○多頭飼育崩壊によって起こる諸問題(4%)

ペットの引き取りが許可される理由としてはオーナーの高齢化によるものが一番多いのですが、これに続き全体の1/4を占めるのが「経済的理由」です。何かしらの原因により収入が減少して、ペットの飼育が続けられなくなったというものです。

現在、ペット1頭あたりの年間飼育費用はイヌ145,435 円、ネコ81,945 円という報告があります(千葉県経済センター 2020年)。新型コロナの影響で収入が減少したオーナーにとってこの金額は決して少ないものではないと思われます。

昨年から今年にかけて自宅にいる時間が増え、多くの方がオーナーデビューをされました。この方々も含め、これから2~3年の間で懸念されるのが時間とお金を理由とする「ペット飼育のギブアップ」です。

今後コロナ感染が収束すると、以前のように会社や学校などへの外出機会が増え在宅時間は減少します。またこのまましばらく感染が継続しても、仕事は減ったままで収入の減少は続きます。どちらにしてもペットの飼育維持に支障が出てしまう可能性が考えられます。

ペットとの生活には時間とお金という「支出」が発生しますが、一緒に暮らすことにより精神的な安らぎという「収入」を得ることができます。また小さな子どもがいる家庭では情操教育というメリットもあります。

新型コロナ感染というマイナスの理由からオーナーデビューをされたみなさんにとってさまざまなピンチがしばらく続くと思われますが、ペットから得られるプラスの面を大切にしてオーナー生活を続けて下さい。

(以上)

執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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