獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編:テーマ「人気のおやつ ジャーキー」

毎日の食事とは別に、ペットにおやつをあげているオーナーは多いようです。同じ与えるのなら喜んで食べてくれるもの、健康に良いものを選びたいものです。知育や老化防止などペットの脳を鍛えるには咀嚼が大切です。今回は咀嚼するおやつとしてジャーキーを取り上げます。

【ペットのおやつ】

ペット、特に愛犬オーナーの76%は何かしらのおやつを与えているといいます(嶋田克康ら ㈳日本愛玩動物協会 2009年)。ではここで考えてみましょう。そもそも私たちは何のためにペットにおやつをあげているのでしょうか?これに関して次の様なおもしろいアンケート結果があります。

与えるタイミング

まずはおやつをあげるタイミングです。東京都・神奈川県在住の30代女性オーナーへのアンケート(回答数602、複数回答あり)では、愛犬におやつをあげる場面として最も多かったのは留守番の時(38.0%)でした

家の中に1頭だけにして外出する時の「おとなしく待っててね」、または帰宅時の「寂しくさせてごめんね」の気持ちとしてのおやつでしょう。これはいってみれば分離不安のつぐないの気持ちです。

2番目にはトレーニングのご褒美(32.1%)、3番目はオーナーの気分/あげたい時にあげる(28.4%)、そして散歩の時(20.1%)、オーナーの食事中(12.5%)と続きます(立石佳奈子 麻布大学 2014年)。

与える理由

次はペットにおやつを与える理由です。関西3都市(大阪市、神戸市、奈良市)の愛犬オーナー171人に聞き取り調査をしたところ、一番多かった回答は「特になし、気が向いたら与える(41.7%)」というものでした。また愛犬のサイズでは、小型犬オーナーの80%、大型犬オーナーの50%がおやつを与えているという結果でした(大石武士ら 近畿大学 2001年)。

ペットにとってフードは栄養の摂取という必要不可欠なものです。これに対しておやつは「つぐない、ご褒美」といったオーナーの気持ちの表れの様です。また「何となくあげている」という回答もおやつを食べる姿を見ることにより、オーナーのみなさんはペットから愛しさや安心感を得ているのでしょう。

【ジャーキーの栄養】

私たちのおやつの定番といえばチョコレートがありますが、これはイヌにはNGです。またグミやキャンディ―は誤嚥のリスクがあるためこれもやめておきましょう。みなさんはペットにどのようなおやつをあげていますか?

1番人気のおやつ

先ほどの大石らの調査によると、利用されているおやつのトップ3はジャーキー(45.4%)、ガム(34.4%)、ビスケット(10.9%)というものでした。ここでいうガムとはペット用のデンタルガムや牛皮・アキレス腱でできた噛むおやつが含まれていると思われます。

ペットのおやつは留守番やトレーニングのご褒美、または気が向いた時にサッとあげる場面が多いため、一口サイズで携帯しやすく、保存性が高いものが好まれていることが判ります。

ジャーキーの栄養成分

ジャーキーには私たちがおやつ・おつまみとして食べているものとは別にペット用もあります。一般的なペットのジャーキーでは牛肉や鶏肉などがミックスされていて、その割合も30~50%と商品により幅があります。

日本食品標準成分表(2015年版七訂)にあるビーフジャーキーを元に、その栄養成分を確認してみましょう。まず水分量は24.4%で生牛肉のおよそ1/3です。したがってタンパク質も54.8%とおよそ3倍です。

この中で少し気になるのがナトリウム(Na)、カリウム(K)、リン(P)の割合が高いという点です。特に食塩相当量は4.8%と生肉の50倍近い値になっています。

市販のジャーキーは単に生肉を乾燥させたものではなく、脂肪分や塩分を加えて嗜好性を高めています。ペットに与えると食いつきがよく美味しそうに食べますが、カロリーが高くNaやPが多いために腎臓ケア中の場合は注意して下さい。

【ジャーキーの健康機能】

ペットのおやつとして広く利用されているジャーキーには、次の3つの特徴があります。

咀嚼回数が多い

ジャーキーは水分量が25%くらいまで乾燥させているので、ある程度の硬さと噛み応えがあります。噛み応えがあるということは咀嚼回数が多いということです。私たちがよく食べるおやつの咀嚼回数を調べた報告があります(小泉 敦ら ㈱なとり 2008年)。

●被験者 
…成人9人(男性4人、女性5人:26~44歳)
●試験食品 
…10種類のおやつ・おつまみ
●測定項目 
…咀嚼回数、咀嚼筋の活動量

各試験食品1.5gを口の中に入れてから飲み込むまでの咀嚼回数とカロリーあたりの咀嚼筋の活動量を測定しました。10種類のおやつの内、ペットも食べていそうなものを選んでみるとおおよそ次のような結果になりました。

《咀嚼回数と筋の活動量》

・ビーフジャーキー(61回、55mV.s)
・せんべい(29回、17mV.s)
・ビスケット(19回、7mV.s)
・チーズかまぼこ(23回、26mV.s)
・かっぱえびせん(21回、12mV.s)

この中でジャーキーは単に硬い食品というだけでなく、カロリーあたりでみても多くの咀嚼回数を必要とすることが判ります。少々意外なことに、ジャーキーはエネルギーの摂りすぎによる肥満防止の観点からも優秀なおやつといえます。

唾液がよく出る

食べ物をよく噛むと脳の血流量が増加するのと同時に、唾液の分泌が促進されます。唾液には口の中を洗浄する作用や抗菌作用があるため、歯周病菌の増殖を抑える働きがあります。ここでヒトがいろいろな食品・おやつを食べた時の唾液の分泌量を確認しましょう(木幡浩子ら 味の素㈱中央研究所 1987年)。

《1gあたりの唾液分泌量》

・ビーフジャーキー(1.33ml)
・乾パン(0.77ml)
・ビスケット(0.45ml)
・干し芋(0.39ml)
・スポンジケーキ(0.22ml)
・卵豆腐(0.01ml)

卵豆腐をおやつのプリンに相当すると考えると、やはり噛む必要がないものは唾液の分泌量は極端に少ないようです。咀嚼をすると顎の筋肉の運動により顎下腺という所からさらさらの唾液が分泌されます。したがって、ここでも咀嚼回数が多いジャーキーは群を抜いて唾液をたくさん出させる食品であることが判ります。

歯に付きにくい

小さな子供におやつを与える時に気になるのが虫歯です。私たちヒトの虫歯(齲歯)は、いわゆる虫歯菌によって硬い歯が溶かされ穴があくものですが、ペットではこの齲歯は見られません。その代わり歯周病への注意が必要です。

ヒトと同様にペットの歯周病もその始まりは歯への歯垢の付着です。フードやおやつの食べカスが少しずつ残って歯と歯の隙間や歯ぐきとの境目に溜まり、歯垢は徐々に歯石に変わってゆきます。

先ほどの木幡らは、いろいろな食品・おやつの歯への付着度合いも調査しています。5人の試験参加者に被験品を食べた時の感想を5段階評価(-2:非常に付着する、-1:やや付着する、0:普通、+1:あまり付着しない、+2:付着しない)してもらった結果は次のようになりました。

《歯に付きやすいもの》

ビスケット、乾パン、干し芋、スポンジケーキ

《歯に付きにくいもの》

 ビーフジャーキー、卵豆腐(プリン相当)

歯に付着しやすいおやつはネットリ感のあるものや、小麦粉でできているものが多いようです。これに対してジャーキーはタンパク質が主体であり、唾液と混ざっても口の中で溶け出すことがないため、歯に付着しにくいと考えられます。

以上のようにジャーキーは程よく硬いため咀嚼が必要であり、その結果唾液の分泌を促し、歯垢として歯に付着しにくいという特徴をもつおやつといえます(ただし与えすぎには注意しましょう)。

フードやおやつをよく噛むことは体を温め、脳を元気にしてくれます。成長期のペットはもちろん、7~10歳を過ぎた頃からの老齢ケア準備として、ジャーキーなどの硬めのおやつを活用するのは良いことです。

しかし、いくら脳に良い食べ物を与えていてもデンタルケアに無関心でいると歯周病のリスクは高まってしまいます。次回からはペットの歯の喪失と健康との関係についての話をします。

(以上)

通常のジャーキーよりも硬めにそして厚めにに仕上げることでしっかりと噛むことができるデンタルジャーキー。


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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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