獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの病気編:テーマ「梅雨明けはマダニにご注意」

 今年は全国的に1~2週間ほど遅い梅雨入りです。ペットの健康管理(特に毎日のトイレ)のために雨の日でも愛犬と散歩に出かけるというオーナーは少なくないようです。今回は梅雨明けのペットとの外出に備えて、マダニ被害の注意点をお伝えします。

【ダニの侵入ルート】

 前回、ペットの皮膚疾患は梅雨の時期に増加するというデータを紹介しました。皮膚疾患の原因がすべてノミ・ダニといった衛生害虫の寄生によるものではありませんが、長い被毛をもつペットではその可能性は高いといえるでしょう。ノミ・ダニはペットが生活するリビングや寝室に棲みついています。

住宅の形態との関係

一戸建てとマンションなどの集合住宅とではどちらにダニは多いでしょうか?皮膚科を受診した20歳以上の男女1,884人を対象としたアンケート報告があります(大谷倫子ら 九段坂病院 1998年)。

これによるとダニ被害なし(517人)と被害あり(1,344人)の住宅内訳には大きな違いはなく、一戸建ては30~40%、マンションはおよそ25%という結果でした。また他の集合住宅であるアパート、公営住宅、社宅などの割合もほぼ同じ値でした。

築年数との関係

 では築年数とダニ被害との関係はどうでしょう。ダニ被害ありグループの約60%は築6年以上の住宅で暮らしていました。これだけを見ると新築よりは年数が経過するとダニの発生が増えるように思われますが、被害なしグループでも約65%は築年数6年以上という結果でした。

 今回のアンケートではペットの有無については不明でしたが、住宅形態(一戸建て、集合住宅)や築年数(新しい、古い)とダニ被害との間に関係性は認められませんでした。

屋内への侵入ルート

 夏になるとハエ・蚊・ゴキブリ、そしてノミ・ダニなどが増えます。ではこれらの虫たちは自宅で発生するのでしょうか、それとも外から入って来るのでしょうか?衛生害虫の屋内侵入には次の3ルートがあるとされています。

屋内発生 …住宅建材、排水溝、生ゴミなどで発生する
屋外侵入 …近隣の樹木・草、庭やベランダの植物から侵入する
付着侵入 …配送物や梱包材など外部からの物品に付着し侵入する

 この中でペットとの関係が考えられるのが「付着侵入型」です。ノミ・ダニには羽がないためハエや蚊のように外から飛んで入って来ることはありません。その代わり本来の生息場所である公園・草むらなどを散歩したヒトやペットに付着して家の中に侵入するパターンがあります。

【ペットの外部寄生虫】

 寄生虫には2種類あります。1つはフィラリアや回虫といった動物体内で生活する内部寄生虫、もう1つは皮膚や被毛に付着する外部寄生虫です。さらに外部寄生虫は吸血するグループと吸血せずに皮膚や皮脂を食べるグループに分かれます。

吸血性の外部寄生虫

 ペットの外部寄生虫について確認しましょう。吸血性グループの代表としてはノミ、マダニ、シラミがあり、非吸血性グループにはハジラミやニキビダニ(毛包虫)などがあります。

 この中でノミやマダニは吸血するため、ペットを含む動物と動物、そして動物とヒトの間で血液を介してズーノーシス(人獣共通感染症)のいろいろな病原体を媒介する可能性があります。

ダニはイヌ、ノミはネコ

 ズーノーシスを媒介する可能性をもつ吸血性のノミ・ダニですが、ペットにはどちらが多く寄生しているのでしょう。動物管理センターと動物病院19か所のイヌとネコを対象にノミ・ダニの付着数を調べた報告があります(山内健生ら 富山県衛生研究所 2014年)。

 調査対象の内、ノミ・ダニが確認されたイヌ(123頭)とネコ(77頭)のデータを元に1頭あたりの付着数を計算してみると、イヌはノミ(0.7匹)、ダニ(4.2匹)、ネコはノミ(6.0匹)、ダニ(0.1匹)となりました。

イヌはダニ、ネコではノミが多いという偏った結果について調査を行った山内は、イヌは飼育環境(室内飼育、屋外飼育)に関わらず外へ散歩をする必要があり、その際にダニが付着する可能性があるためと考察しています。

【梅雨明け後の散歩とダニ】

 昨年の調べによるとペットの飼育頭数はイヌ680万頭、ネコ900万頭とのことです(一般社団法人 日本ペットフード協会 令和5年)。イヌ頭数の減少理由の1つに散歩に連れて行く必要があることがあげられています。高齢者や一人暮らしの方々にとって、毎日のイヌとの散歩は難しいのかもしれません。

公園・野外のダニ

 愛犬のストレス解消・健康維持のために、梅雨明けには近くに公園や自然の多い場所まで少し遠出をしようと考えているオーナーは多いと思います。今回のテーマであるダニが野外にどれくらい生息しているかを調査した報告を2つ紹介します。

 鳥取市内(2020年)と名古屋市内(2022年、2023年)の公園/自然公園で捕獲されたダニ匹数を月別に見てみると、ともに7月から8月に一気に増加しています。名古屋市内ではその後減少しますが、鳥取市内では寒くなる10月くらいまで高い割合が続きます。このように野外に生息しているダニはちょうど梅雨明けに急増することが判ります。

散歩後のダニケア

 ここでダニの種類と生息場所を整理しましょう。私たちやペットが暮らす家の中にはコナダニやチリダニといった種類のものがいます。コナダニは小麦粉などの食品内、チリダニはカーペット、ソファー、布団に棲みついてフケなど食べています。これら屋内生息タイプのダニは一般に刺して吸血することはありませんが、フンや死骸がアレルギーの原因になります。

 もう1つは本来の生息場所が野外であるダニで、これにはイエダニやマダニがあります。イエダニはネズミや野鳥、マダニはシカやイノシシなどの野生動物に寄生してともに吸血します。先ほど紹介した鳥取市内と名古屋市内の自然公園で捕獲されたダニはこちらの野外生息タイプのダニということになります。

このように吸血性のないダニと吸血性のあるダニは本来生息地域が分かれているのですが、両地域を行き来するのがオーナーと愛犬です。梅雨明け後に一気に増加する吸血性のマダニを野外から自宅に持って帰らないために、散歩後にはズボン/衣服への付着の有無を確認しましょう。そして愛犬は足をよく洗い、全身のブラッシングなどのケアをしっかり行うことが大切です。

 ノミ・ダニと聞くとアレルギーを思い出しますが、これらはリビングや寝室に棲みついているものです。これとは別に、吸血性があり野外の動物に寄生している衛生害虫の1つがマダニです。次回はマダニの吸血によるズーノーシスの媒介について解説します。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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