獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「調理方法とイミダゾールP」

イミダゾールペプチド(正式名称イミダゾールジペプチド、以下イミダゾールP)は、アミノ酸が2つ結合した物質で鶏むね肉にたくさん含まれています。そしてこのイミダゾールPには、運動疲労の回復を応援してくれる作用があります。

【運動疲労の原因】

新型コロナが収まったら、早くペットと一緒に外で思いっきり遊びたいものです。久しぶりに走ったり、運動をすると翌日に筋肉痛が起こります。ではこの筋肉疲労はなぜ起こるのでしょうか?

犯人は活性酸素?

「運動により筋肉が疲れて動かなくなるのは、乳酸という物質が溜まるためです。」と学校で習った覚えがあります。この説は間違いではないのですが、現在では筋肉疲労の原因は乳酸ではなく、真犯人として体内で発生する活性酸素が有力視されています。

私たちヒトもペットも常に呼吸をしています。海外の文献によると、運動時の酸素摂取量は安静時の10~15倍、また筋肉への血流量はおよそ100倍にも増加しているとのことです。運動をしている時、血液により筋肉には大量の酸素が送り込まれているということです。

呼吸によって体内に取り込まれた酸素は細胞のエネルギー産生に必要ですが、その一部は活性酸素に変わります。そしてこの活性酸素は暴走して、細胞内のタンパク質や脂質、核酸DNAにダメージを与えます。

現在では、運動後の筋肉疲労や筋肉痛はこの活性酸素による筋細胞の損傷、すなわち酸化ストレスが原因であると考えられています。

筋肉のダメージ

運動後、体内ではどのような変化が起きているのか見てみましょう。青年男女合計8人を2グループに分けて、運動実施群には10kmマラソンを行ってもらい、安静群と比較した研究報告があります(藤本英樹ら 東京有明医療大学 2013年)。

これによると運動実施群ではマラソン後、血液中の活性酸素消去活性は22.8%減少し、筋肉の損傷指標(クレアチンキナーゼ値)は66.3%もアップしていました。運動により発生した活性酸素を消すために、体内の抗酸化物質は消費され、同時に筋細胞は損傷を受けて、筋肉の炎症や筋肉痛が引き起こされたことが判ります。

イミダゾールPの抗酸化作用

現在では、運動時の酸素補給の結果生まれた活性酸素が筋肉疲労の原因物質であるとされています。

前回、鶏むね肉から抽出したイミダゾールPを摂取すると、若者も高齢者も筋力の維持向上や筋肉痛が軽減されるという試験データを紹介しました。これは疲労の原因である活性酸素をイミダゾールPがブロックしてくれたためでした。

すなわちイミダゾールPには抗酸化作用があり、これが活性酸素から筋細胞を守り、運動疲労からの回復を応援していたと考えられます。

【イミダゾールPのクッキングロス】

手作りペットフードの本を見ていると、写真付きでいろいろなレシピが書いてあります。そしてその調理方法も煮込んだり、電子レンジを活用したり様々です。みなさんはどのような調理方法でフードを作っていますか?

ロスの少ない調理方法

鶏むね肉には抗酸化作用をもつイミダゾールPが豊富に含まれています。しかし、調理によってこれが失われるクッキングロスが起こっていたらもったいないことです。鶏肉の加熱調理方法とイミダゾールPの損失割合を調べた報告があります(小出あつみ ら 名古屋女子大学 2007年)。

鶏むね肉ミンチを6つの方法(電子レンジ、真空調理、蒸し、ゆで、焼き、揚げ)で中心温度75℃×1分間以上加熱し、それぞれのイミダゾールP量を測定しました。なお、調理によって肉汁が出る「真空調理」と「ゆで」は肉と肉汁の測定量を合算してあります。

測定成績を生肉(55.6μmol/g)と比較したところ、損失量が少なかった調理方法は真空調理(53.9μmol/g)、蒸し(51.9μmol/g)、ゆで(54.9μmol/g)の3つという結果でした。

抗酸化活性への影響

続いては大切な抗酸化活性への影響を調べました。生の鶏むね肉ミンチの抗酸化活性を100として比較した場合、ほとんど損失が無かった調理方法は「蒸し」と「ゆで」でした。

今回の測定結果では「焼き」と「揚げ」は100を超えています。これはイミダゾールPの増量によるもではなく、ミンチ表面の焦げに由来するものと考えられてます。

鶏むね肉の調理において注意が必要なのは肉汁です。肉を加熱すると必ず内部から肉汁が出てきますが、イミダゾールPはこの中にも含まれています。「真空調理」と「ゆで」の損失割合が低かったのは、肉本体と肉汁の測定値を合算したためです。

以前クッキングロスの話をした時に、加熱調理では肉や野菜から外へ栄養成分が漏れ出ることを紹介しましたが、今回も同様の結果になりました。以上より調理の手間を考慮すると、鶏むね肉はイミダゾールPのロスが少ない「蒸し・ゆで・煮込み」といった調理方法が適しているといえます。

【レトルト加工とイミダゾールP】

近頃はカレーやシチュー、おかゆなどのレトルト食品がたくさん販売されています。これら煮込み料理はスープも一緒に食べるため、煮汁に漏れ出たタンパク質やビタミンも無駄なく摂取することができます。これは鶏肉のイミダゾールPにもあてはまることです。

加熱温度の影響

レトルト食品の便利な点は温めるだけでおいしく食べられることと、もう1つ長期保管ができることです。これは高温で加圧加熱殺菌処理をしているためですが、となると気になるのはイミダゾールPへの熱の影響です。

ささみ肉は鶏むね肉と同等のイミダゾールPを含んでいます。このささみ肉を使い、各種加熱条件とイミダゾールPの保存性を調べた次のような報告があります(神力(長友)はるな ら 宮崎大学 2019年)。

●試験品 
…ささみ肉とスープをレトルトパック加工したもの
●殺菌条件
  …加熱温度:100℃、110℃、121℃、130℃
  …加熱時間:各30分間
●測定項目
  …各パック内のイミダゾールP量

加熱前のパック内イミダゾールP量を100として比較した結果、各温度で30分間加熱処理をしても目立った減少は確認されませんでした。長期保管が可能な缶詰やレトルト食品は、121℃×15~20分間の条件で加圧加熱殺菌されています。これよりレトルトパック加工された鶏肉料理もイミダゾールPの損失はないと考えられます。

保管期間の影響

最後にレトルトパック内のイミダゾールPの保存性も確認しておきましょう。上記の試験品を121℃×30分間加圧加熱処理した後、25℃の常温で12か月間保管しました。

保管開始時のイミダゾールP量を100として1か月、6か月、12か月後の値と比べたところ、損失は確認されませんでした。またアンセリンとカルノシンの比率にも変化はなく、レトルトパック加工は保管性にも優れているという結果でした。

この数年人気が上昇しているサラダチキンは鶏むね肉を蒸して真空パックしたものです。むね肉は高タンパク質・低脂質だけではなく、運動疲労の回復を応援してくれるイミダゾールPも豊富に含まれています。

真空パックやレトルト加工された鶏むね肉は、長期保管ができて抗酸化活性をもつイミダゾールPのロスが少ない便利でうれしい食材です。みなさんのペットの食事に使ってみるのも良いでしょう。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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