獣医師が解説

【獣医師が解説】ケアフードを考える: テーマ「リパーゼブロック食材:キノコ」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
只今、シリーズですい臓ケアフードに有望な食材を紹介しています。
今回はすい臓の消化酵素リパーゼのはたらきをブロックする作用があるキノコについて解説します。

キトサン

みなさんはキトサンという物質をご存知ですか?
カニやエビの殻から作られるキチン・キトサンのあのキトサンです。

キトサンとは?

キチンとキトサンは1セットで耳にしますが、厳密にはこの2つは別物です。
キチンはカニの甲羅やエビの殻に30%程度含まれている物質で糖の仲間です。
そして、このキチンをアルカリ処理して作られたものがキトサンになります。
従ってキトサンの正体も多糖類です。

キトサンが有名になったのは、医療分野への活用に期待される点がきっかけでした。
抗菌性や止血作用があることから、手術の縫合糸、やけど・傷口の保護シートとしての応用が検討されています。

キノコキトサン

化学処理によってキチンから作られるキトサンですが、もちろん自然界にも存在しています。
その1つがキノコ類です。
キトサンはβグルカンなどの物質と一緒になり、「キノコキトサン」という形でキノコの細胞膜に含まれています。

以上より、カニの甲羅やエビの殻から作られるキトサンを「動物性キトサン」、キノコなどに含まれるものを「植物性キトサン」と呼んでいます。
ともにキトサンは大きくは多糖類=食物繊維の仲間ということになります。

キノコキトサンの作用

植物性キトサンであるキノコキトサンには、脂質代謝に関する有用な研究報告があります。
実験動物のラットを用いたデータがありますので見てみましょう(宮澤紀子ら 高崎健康福祉大学 2013年)。

脂質の蓄積抑制

宮澤らの報告内容は次のとおりです。
●供試動物 ラット
●グループ 10週間観察
  :対照群 正常ラット(5匹)
  :試験群 肥満モデルラット(各5匹)
    キノコキトサンを体重1㎏あたり0mg、500㎎、1,000㎎給与
●測定項目
  :増体重、糞中への脂肪排出量、総コレステロール値

まず各群において、試験開始時と10週後の体重を比較測定しました。
肥満モデルラット群では、キノコキトサンの給与量と体重との間に0㎎(675g)、500㎎(600g)、1,000㎎(560g)という結果が得られました。

遺伝的に太りやすい肥満モデルラットですが、その体重増加率はキノコキトサン給与量が多いほど低く抑えられていました。
この肥満抑制作用は、キノコキトサンが体内脂肪の蓄積を軽減させていることによるものでした。

脂肪の排出促進

キノコキトサンによる肥満抑制作用は、体脂肪の燃焼促進によるものではありません。
キノコキトサン給与量と糞に含まれる脂肪の割合を確認したところ、0㎎(3.90%)、500㎎(5.45%)、1,000㎎(7.50%)という値でした。

この結果は、キノコキトサンを摂取するとエサ中の脂質の消化が抑えられ、そのまま糞と一緒に排出されることを意味しています。
すなわち、十二指腸における脂質消化の胆汁(=乳化作用)、もしくは酵素リパーゼ(=消化作用)のはたらきをキノコキトサンがブロックしていると考えられます。

脂質の代謝改善

キノコキトサンにより脂質の消化が抑えられると、血中コレステロール値の低下が期待されます。
各群ラットの総コレステロール値を見てみると、キノコキトサン給与量0㎎(184mg/dL)、500㎎(138mg/dL)、1,000㎎(115mg/dL)という数値になっていました。

このようにキノコキトサンは脂質代謝を改善し、すい炎ケアの指標の1つであるコレステロール値を低下させるはたらきをもつ物質であることが判ります。

リパーゼブロッカーー:キノコ

ではここで、各種キノコが酵素リパーゼの活性をどれくらい抑えるのかを確認しましょう。

リパーゼブロック作用

先ほどラットの試験を行った宮澤らの報告です。
宮澤はエノキタケ、シイタケ、マッシュルームの3種類のキノコについて調べています。
それぞれのキノコを粉末にして、80℃の熱水で2時間加熱しその成分を実験材料に用いました。
比較対象は精製したキノコキトサンです。

リパーゼ活性の阻害率は次のとおりです(数値は概数)。
○エノキタケ(50%)
○シイタケ(20%)
○マッシュルーム(12%)
●精製キノコキトサン(70%)
 
まずキノコキトサンには高いリパーゼブロック作用があること、そして各キノコにも同様のはらたきがあることが確認されました。
この試験では、キノコをお湯で煮込んだ得られた抽出成分を材料に用いています。
すなわち、水溶性のリパーゼブロック成分が、エノキタケやシイタケに多く含まれているということになります。

スーパーではエノキタケの他にも、いろいろな種類のキノコが販売されています。
女子栄養大学の大内和美は、197種類のキノコを対象にリパーゼ活性阻害の有無を確認しました(2012年)。
この試験では、アルコールを用いて抽出したキノコの脂溶性成分を材料に使用しています。

197種類のキノコの内、私たちが一般に入手できるものでかつ高いリパーゼ活性阻害を示したキノコとして次のものがありました。
(注意:カッコ内の数値は50%阻害を示す時の乾燥粉末量ですので、値が小さいほど阻害作用が強いことを意味しています。)

《阻害作用が高いキノコ》
●タモギタケ(0.12㎎) …主に北海道や東北で流通
●マッシュルーム(0.73mg)
●ブナシメジ(0.76㎎)
●マイタケ(1.04㎎)
●エノキタケ(1.21㎎)

《阻害作用が低いキノコ》
○エリンギ(6.4㎎)
○ナメコ(13.7㎎)

すべてのキノコに脂質消化を抑制する力があるわけではありませんが、国内で広く流通しているものではマッシュルーム、ブナシメジ、マイタケ、エノキタケはリパーゼブロック作用があるといえます。

またこれらキノコのブロック作用は脂溶性成分によるものですので、フード中にある程度の脂質が存在している方が作用しやすいということが考えられます。

食物繊維との関係

前回、リパーゼブロッカーとしての食物繊維を紹介しました。
キノコも野菜と同等量の食物繊維を含む食材です。
では今回確認したキノコがもつリパーゼ阻害作用にもこの食物繊維が関係しているのでしょうか?

酵素リパーゼの活性阻害力が高いタモギタケとマッシュルーム、低いエリンギとナメコの食物繊維量を比較してみると次のようになります(日本食品標準成分表 2015年版七訂)。

《乾物100gあたりの食物繊維含有量》
○タモギタケ(3.3g)、マッシュルーム(2.0g)
○エリンギ(3.4g)、ナメコ(3.3g)

これからみるとキノコに関しては、その食物繊維がリパーゼを直接ブロックしている訳ではないようです。
キノコキトサンや、まだ確定されていない水溶性/脂溶性のキノコ成分が関与していると考えられています。

今回、私たちの身近にあり、簡単に入手できるキノコ類がリパーゼブロッカーの1つであることが確認されました。
またキノコに含まれるβグルカンは免疫力を応援する作用をもつとの報告もあります。
(βグルカンについてはまた別の機会に紹介しましょう。)

これからも研究が進むキノコ類は、すい臓ケアとしてのリパーゼブロック食材であり、また広くペットの健康管理に有用な食材です。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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