獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編: テーマ「愛犬を狙う蚊」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
温暖化のせいでしょうか、3月半ばには桜が咲き5月のGWには半袖のシャツを着るようになってきました。
ということは、蚊が発生する時期も前倒しになっている可能性があります。
今回は愛犬にフィラリアを感染させる蚊についてお話をします。

2グループの蚊

一口に蚊と言っても全世界で約3,000種以上、その内日本には130種ほどいるとされています。
私たちヒトやイヌを刺す蚊は、イエカ(家蚊)とヤブカ(藪蚊)という大きく2つのグループに分けられます。

イエカとヤブカ

夏に夜寝ているとブ~ンと飛んできて、私たちを刺すのがイエカグループの蚊です。
イエカの活動の場は家の中で、昼間はあまり行動せず家の天井や壁などにとまっています。
そして夕方~夜になると活動を開始します。
すなわち、イエカは夜行性です。

また、イエカはけっこう活発で、風に乗ると1~2㎞ほど飛行します。
活動範囲も広く、窓を開けっ放しにしておくと隣近所からもみなさんの家の中に入ってきます。
イエカの代表は、見た目が赤茶色っぽいアカイエカです。

もう1つの蚊はヤブカグループです。
ヤブカの生活の場所は公園などの草木です(もちろん人家にも入ってきます)。
イエカと比べるとヤブカの活動範囲は狭く、飛行距離も100~200mくらいです。

日中、庭の草むしりや公園の散歩の途中で、私たちを刺すのはこのヤブカです。
ヤブカは昼~夕方にかけて活動する昼行性の蚊ということになります。
ヤブカの代表には、全体に黒く足の所々に白い斑があるヒトスジシマカがいます。

2つの吸血スタイル

みなさんもご存知のように吸血をするのは、産卵準備中のメスの蚊です。
基本的に蚊は、オス・メス共に花の蜜や樹液などを吸って生きています。
先ほどざっくりと、イエカは夜中にヤブカは昼間に活動すると述べましたが、吸血スタイルも2通りあります。

イエカは、暗くなりみなさんが眠りについた頃に家の中を活発に活動します。
そして「どこかにいい獲物はいないかな?」と一晩中部屋から部屋へ飛び回ります。
アカイエカなどの夜行性のイエカは、自分から吸血の対象となる動物を探して飛び回る「探索型」の蚊です。

子どものころ、空き地で遊んだり、お墓参りに行くとよく蚊に刺されました。
これはイエカとは対照的に、ヤブカは草むらやヤブの中でみなさんが近づいて来るのをじっと待っているためです。

昼間に活動するヤブカは自分から吸血対象を飛んで探すことはなく、「早く獲物が来ないかな…」と待ち続けます。
このような吸血スタイルを「待伏せ型」と呼んでいます。

フィラリアを媒介する蚊

では、今回のテーマであるフィラリアを媒介する蚊についてまとめましょう。
私たちの愛犬にフィラリアを感染させる蚊の代表にはヒトスジシマカとトウゴウヤブカの2種類がいます。

ヤブカグループ

ヒトスジシマカもトウゴウヤブカも共にヤブカグループの蚊です。
ということは共に明るい時間帯に活動する昼行性であり、草むらの中でじっとイヌが来るのを待っている待伏せ型の吸血スタイルということになります。

生息場所

ヒトスジシマカとトウゴウヤブカですが、生息している場所は大きく異なります。
一般にヒトスジシマカは家の庭や公園のような草木が生えている場所にいます。
また、蚊の幼虫であるボウフラが生きていくためには水が必要ですので、野外の雨水が溜まっているところ(空き缶、植木鉢の受け皿など)にも多く潜んでいます。

これに対してトウゴウヤブカの生息場所は海岸の岩場の潮溜まりです。
従って、この蚊に刺される人は海水客や釣り客というふうに限定されます。

教科書的にはフィラリアを媒介する蚊はこの2種類となっています。
しかし、一般的に家庭で飼われているイヌが刺されることを考えると、フィラリア対策としてはヒトスジシマカをターゲットにするべきといえます。

注意したい公園のヤブカ

定番の愛犬の散歩場所といえば公園でしょう。
何にでも興味を示すイヌにとって草や花、樹木が多い公園は絶好の遊び場所です。
と同時に草むらで獲物を待っている待伏せ型のヤブカにとっても公園は絶好の吸血場所です。

ヤブカの多い場所

みどりが多い公園にはヤブカも多いことは確かですが、公園中すべての場所に潜んでいるわけでもありません。
比較的ヤブカが多いところと少ないところがあります。

千葉県の大きな自然公園を使って、ヒトスジシマカがどのような場所に多く生息しているかを調査した報告があります(木村悟朗ら イカリ消毒㈱ 2016年)。
その内容を見てみましょう。

●調査期間 2015年5月~11月
●調査対象 ヒトスジシマカ
●採取時間 10:30~12:30、2週間おきに合計15回採取
●採取地点
 A)オリエンテーションハウス付近
 B)常緑広葉樹林
 C)野鳥観察舎付近 

調査期間中のヒトスジシマカの採取合計数は125匹でした。
各採取地点の内訳はA)11匹、B)92匹、C)22匹でした。
B)常緑広葉樹林の周辺では飛び抜けて多く潜んでいたということです。
では、ヒトスジシマカが好む環境条件とは何でしょうか?

ヤブカの好む環境

報告者の木村はA)B)C)の3地点の環境を調べ、ヒトスジシマカが好む条件を検討しています。
その項目は気温、湿度、そして照度(明るさ)です。

○平均気温
A)23.2℃  B)22.9℃  C)23.5℃
○平均湿度
A)69.8%  B)68.7%  C)67.7%

この結果ではA)地点C)地点と比べて、ヒトスジシマカが多く生息していたB)常緑広葉樹林に目立った差はありませんでした。
気温や湿度とはあまり関係が無いようです。

そこで3地点と照度(明るさ)との関係を見てみると次のような結果になりました。

○平均照度
A)2,079.5ルクス  B)371.3ルクス  C)1,215.7ルクス

常緑広葉樹には年中緑色の葉が茂っていて、その下の地面部分は直接日光が当たりにくい場所になっています。
ヒトスジシマカはヤブカグループの蚊であるため、雑草やヤブの中で吸血対象の動物がやって来るのを待っています。
この時、同じ草むらでも陽があたりにくい木の下を好むということが判りました。

オーナーもご注意を

近頃はいろいろな感染症発生のニュースを聞きます。
2014年に東京を中心としてデング熱という病気が発生したのを覚えていますでしょうか?
国内発生はおよそ70年ぶりで合計162名が感染しました。

この時話題になったのは、感染場所が代々木公園という事でした。
公園にいた人が蚊に刺されてデング熱ウイルスに感染したというルートですが、このウイルスを媒介していた蚊がヒトスジシマカでした。

蚊対策として国内の大きな公園は閉園となり、殺虫剤の散布が行われ、その後デング熱の発生は落ち着きました。
このように公園などに潜んでいるヒトスジシマカは、ヒトにはデング熱ウイルス、イヌにはフィラリアを媒介する要注意のヤブカということになります。

オーナーのみなさんは、公園内ではどのような場所にヤブカが多く隠れているかなどの注意のもと、愛犬との散歩を楽しんで下さい。
次回は、ペットの虫よけ対策について紹介します。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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