獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編: テーマ「フード添加物 ~保存料~」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
少し前のコラムでフード添加物の概要についてお話をしました。今回は個別解説として「保存料」を取り上げようと思います。

防腐剤と保存料

雑誌やテレビで化粧品の広告を見ていると『防腐剤および保存剤は一切使用しておりません』というフレーズが目につきます。そもそも防腐剤とか保存料・保存剤とは何でしょうか?

防腐剤とは?

防腐剤とは「細菌やカビなどの微生物による物の腐敗を防ぐ薬品」をいいます。この場合の「物」ですが大きく「食品」「医薬・化粧品」「工業用品」の3つのグループに分けられます。

食品ではソルビン酸や安息香酸(あんそくこうさん)といったものが広く使用されています。

薬や化粧品の防腐剤ではパラベン(安息香酸のなかま)、工業用品では木材に塗られるコールタール由来のクレオソート油などがその代表です。これらの他にも、子どもの頃に夢中になった昆虫標本に使われるホルマリンも防腐剤の1つです。

防腐剤とは「物が腐敗するのを防ぐ化学物質の総称」ということになります。

保存料とは?

先ほど食品にも防腐剤が使用されていると述べました。「食品防腐剤」ということばがありますが、現在ではあまり使用されません。防腐剤→強い薬品→からだに悪い、という消費者イメージがあるためでしょう。

防腐剤の中で食品と医薬・化粧品に使用されるものを「保存料・保存剤」とよびます。特に食品の場合は、食品衛生法により食品添加物の1つとして「保存料」と表記されます。
したがって、食品のCMでは「防腐剤不使用」ではなく、「保存料を使用しておりません」という表現になっています。

細菌の増殖

食品が腐敗するということは微生物が繁殖することです。ここでは、食品やフードにおいて細菌が増殖するしくみについて考えてみましょう。

細菌増殖の3条件

細菌も私たちヒトと同様に生き物ですので、発育や増殖するのに必要な条件があります。その中で水、温度、栄養素の3つを「増殖の3条件」といいます。

○水
食品に細菌が繁殖するにはおよそ60%以上の水分含有量が必要です。ペットフードではウエットタイプが75%程度の水分を含んでいるため、開封後は腐敗しやすく食べきりが原則です。

○温度
一般的な細菌が繁殖する温度は10~40℃と広範囲です。ざっくりと通年の室温ということになります。なお、カビは細菌よりも低温環境でも繁殖します。

○栄養素
栄養素といっても特別なものではありません。食品中に含まれているものがそのまま細菌の栄養になります。また、フードや水の食器の汚れにはご注意ください。「汚れ」は細菌やカビにとって十分な栄養分になります。

フードの水分含量

ペットフードの水分含量はウエット(75%程度)、ソフトドライ・セミモイスト(25~35%)、ドライ(10%程度以下)です。

増殖3条件の水から考えると、ウエットタイプ以外は腐敗しない(腐敗しにくい)ことになります。しかし、この中で保存料が使用されるのはソフトドライ・セミモイストタイプのフードです。これはなぜでしょう?

2つの水分

実は食品やフードに含まれる水分には2種類あります。これを「自由水」と「結合水」といいます。

腐敗しにくい食品

どう見ても水分量が多いのに室温保存でも腐敗しにくい食品があります。例えばお味噌、しょう油、ジャムです。これらに共通しているのは、製法として塩または砂糖を大量に添加している点です。

まだ冷蔵庫がない時代に日本や世界中において、食品を長持ちさせるために試行錯誤を繰り返して見つけ出した知恵の1つです。

これらの食品に使用されている塩や砂糖には、美味しくするという理由だけではなく科学的な意味がありました。それが自由水と結合水です。

自由水と結合水

自由水とは食品やフードに含まれる水分のうち、自由に動きまわることができる水分のことです。これに対して食品内で塩や砂糖などと結合した状態の水分を結合水とよびます。

ジャムを作る場合で考えてみましょう。イチゴやブルーベリー自体の水分やお鍋の中の水は自由水です。これに大量の砂糖を加えて加熱することにより、砂糖と結合した水が結合水です。

ここで細菌増殖の3条件と絡めましょう。食品中で細菌が繁殖するのに利用できる水分は自由水のみです。お味噌やジャムは見た目の水分はたっぷりなのに腐敗しにくいのは、結合水が多く自由水が少ないためです。

水分活性

どうやら食品やフードの腐敗には自由水が大きく関係しているようです。もう少しこの自由水について説明します。

水分活性

水分活性とは食品中の「自由水の存在割合」をいいます。

水分活性の最高値は1.0です。数値が大きいほど自由水がたくさん含まれることを意味していますので、その食品は腐敗しやすいことになります。

食中毒の原因になる細菌が繁殖できる範囲は0.85以上、カビでは0.7以上といわれています。(カビはあまり水分がない所にでも生えるのもこれで納得です。)

では次に各種ペットフードの水分活性を見てみましょう。

ウエットタイプの水分活性

ウエットフードは水分含量が高く(75%)、水分活性も0.95以上あります。このままでは細菌の繁殖に最適です。

ウエットフードは缶詰やパウチに密閉包装されています。これは出荷前に加熱殺菌(121℃、15分間ほど)するためです。これにより、ウエットフードには保存料を添加する必要はありません。(その代り開封後は食べきりが原則です)

ソフトタイプの水分活性

ソフトドライやセミモイストとよばれる少し柔らかい半生タイプのフードの水分活性は0.65~0.90くらいです。この範囲の値では細菌やカビも繁殖することができます。

ソフトタイプのフードは製造後に殺菌処理はできませんので、保存料を添加する必要があります。

ドライタイプの水分活性

ドライフードは水分含量が10%以下、水分活性も0.65未満と微生物が繁殖しにくい条件を備えています。開封後はウエットフードのように食べきる必要もなく、常温で比較的日持ちが良いため最も普及しているタイプです。

したがって、基本的にドライフードには保存料は不要ですが、商品によっては使用されているものもあります。それはジャーキーなどのソフトタイプの肉が配合されているものです。

ジャーキーや半生タイプの角切り肉はソフトタイプにあたるので、これ自体に保存料が添加されています。一部のドライフードにおいて、保存料使用の表記があるのはこのためです。
 

添加物としての保存料

最期に保存料について少し詳しく見てみましょう。保存料とは食品防腐剤のことですので、「食品が腐敗するのを防ぐ化学物質」ということになります。食品を腐敗させない方法には「殺菌」と「静菌」の2つがあります。

殺菌作用

殺菌作用とは文字通り微生物を死滅させるはたらきのことです。殺菌作用をもつ添加物の代表は次亜塩素酸Na(ナトリウム)で、まな板やふきんに使う殺菌漂白剤のことです。

次亜塩素酸Naは強力な殺菌料ですが、実はその詳しい作用機序は現在も解明されていません。さまざまな研究により、微生物がもつ代謝酵素やタンパク質、核酸を変性させることによって死滅させていると考えられています。

静菌作用

これに対して静菌作用とは「微生物の発育を抑制して腐敗するまでの時間を延長させること」をいいます。すなわち微生物を積極的に殺す作用はないということです。

食品(フード)添加物のうち保存料として指定されているものは、この静菌作用のみもっています。代表としてソルビン酸、ソルビン酸K(カリウム)があります。

保存料が使用されている食品を食べるのを忘れて、冷蔵庫に入れたままにしておくとカビが生えたり傷んでしまいます。保存料には腐敗するまでの時間を延ばすはたらき(=静菌作用)しかないということです。

フード添加物は食品添加物を応用していますので、安全性に関しては科学的な裏付け(試験データ)があります。しかし、「何となく不安」とか「どうしても気になる」というオーナーが多いのも事実です。

これを受けて、製法の工夫によりできるだけ添加物を使用しないペットフードが開発されています。

今後もシリーズでフード添加物の解説を行っていきますので、オーナーのみなさんはフード選びの参考に活用してください。

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(以上)

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