獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編:テーマ「発酵乳の香りと認知機能」

皆さんの朝の食卓にヨーグルトはありますか?そのままではすっぱいので砂糖やジャムを混ぜたり、好きなフルーツにかけるなどいろいろな食べ方があります。発酵乳とはこのヨーグルトのことで、乳酸菌による独特なにおいがあります。今回はこの発酵乳の香りの作用を紹介します。

【発酵乳の香りと食欲】

牛乳を飲むとよく眠れるといいます。これは緊張を抑えるカルシウムや誘眠作用があるトリプトファンというアミノ酸のはたらきとされています。このように牛乳には精神を落ち着かせる栄養成分が含まれていますが、発酵乳の香りにも同様の作用があります。

不安な気持ちを和らげる

マウスを使い乳酸菌と酵母から作った発酵乳の香りを1時間嗅がせるグループ、対照として蒸留水のにおいを嗅がせる陰性対照、抗不安薬を投与する陽性対照の3群の不安に対する反応実験の報告があります(川口恭輔 アサヒグループホールディングス㈱ 2018年)。

蒸留水の陰性対照群の抗不安度を100として他群と比較したところ、発酵乳群の方が高い値を示しました。もちろん抗不安薬群にはかないませんが、発酵乳の香りを嗅いだマウスは不安な気持ちが和らいでいたということになります。

食欲と消化を応援する

前回、私たち動物のからだは交感神経と副交感神経から成る自律神経が調整していると述べました。交感神経は興奮状態、副交感神経は休息状態で作動し、グレープフルーツの香りを嗅ぐと交感神経にスイッチが入るため食欲は抑えられました。

川口はラットに蒸留水(対照)または発酵乳の香りを10分間嗅がせ、その後の胃に分布する副交感神経の活動を測定しました。対照群ラットの活動値を100として発酵乳群の値を換算したところ、60分後では45%もアップしていました。

このようにグレープフルーツとは真逆に発酵乳の香りは副交感神経を刺激することでリラックス感をもたらし、胃の活動を促進して食欲・消化吸収作用を応援することが判ります。

【発酵乳の香りとストレス緩和】

発酵乳の香りとリラックス神経/副交感神経との関係をもう少し見てみましょう。私たち同様にペットも生活の中でさまざまなストレスを感じていると思われます。このストレス下でも発酵乳の香りは作用するのでしょうか。

ドキドキを抑える

川口はヒトを対象に心理面に対する発酵乳の香りの作用を調べました。

●被験者 大学生 30 名(平均年齢 21.8歳)
     この内、強いストレス感じている被験者20人
●グループ
  対照群
  試験群 …発酵乳飲料の香りを5分間嗅ぐ
●測定項目
  心拍数、副交感神経の活動

心拍数とは1分間あたりの心臓の拍動回数のことで、ヒトの標準値は70~80回です。実験とはいえ心拍数を測定するとなると誰しも少しは緊張するものですが、この範囲であれば数値が少々上がっても問題はありません。被験者30人全員の測定結果は対照群では増加(+1回)、試験群では減少(-0.8回)となりました。

この内、事前調査で常に強いストレスを感じているという20人のデータだけを見ると対照群(+2.1回)、試験群(-0.8回)と大きな差が確認されました。発酵乳の香りは緊張を和らげ、心臓のドキドキ/動悸を抑えていました。

リラックスした気分になる

心臓の拍動は生命活動の根本ですから自律神経が担当し、交感神経は心拍数を増加(=興奮状態)、副交感神経は減少(=リラックス状態)させます。

この実験時の副交感神経の活動値を測定すると、被験者全員では対照群よりも試験群の方で値が高くなる傾向が見られました。そして強いストレスを感じている20人に限定して結果を見ると、試験群の方で大きく副交感神経が活動していることが確認されました。

以上をまとめると、発酵乳の香りには気分を落ち着かせリラックスさせるはたらきがあり、この作用はストレス環境にいる人に対してより強い効果が示されるということになります。

【発酵乳の香りと認知機能】

今回は発酵乳/ヨーグルトの香りがもついろいろな作用を紹介しています。発酵乳の原料は牛乳ですが、牛乳と発酵乳とでは食べ方や期待する健康機能などに微妙な違いがあるようです。

牛乳と発酵乳

全国の中学生以上の男女3,200 人を対象にした「牛乳・乳製品の消費動向に関する調査」という報告書があります(独立行政法人農畜産業振興機構 平成 23 年度)。これを元に牛乳と発酵乳/ヨーグルトの消費現状を見てみましょう。

毎日飲んだり食べたりしている人の割合は牛乳が35%、ヨーグルトはその半分の15%です。また1日の平均摂取量は牛乳で110ml、ヨーグルトは100gとなっています。

そしてそれを摂取することで期待される効能・恩恵(ベネフィット)としては、牛乳は豊富なカルシウムや栄養成分の補給、対するヨーグルトでは整腸作用という回答がメインでした。はやりヨーグルトの魅力は発酵により増殖した善玉菌/乳酸菌であり、その香りがもつ作用についてはまだまだ認識されていませんでした。

発酵乳の香気成分

毎朝食べているヨーグルトですが、あまり意識してそのにおいを嗅ぐという事はないと思います。ヨーグルトのにおいは乳酸菌の発酵によるものであり、いろいろな香気成分が複雑に混ざり合っています。

発酵乳の香気成分の中で代表とされるのはアセトアルデヒドです。鼻にツンとくるような刺激的なにおいの正体です。この他にジアセチル、アセトインという成分があり共にバターやチーズ系のにおいの素です。そして酪酸(蒸れたようなにおい)や酢酸(すっぱい酢のにおい)といった有機酸が含まれています。

これらの香気成分を産生する乳酸菌とは、乳酸桿菌(ラクトバチルス)やビフィズス菌といった乳酸発酵を行うさまざまな細菌の総称です。したがって、その発酵乳メーカーが製造に採用している乳酸菌の菌種や菌株によって味も香りも異なります。

認知機能を活性化する

発酵乳の香りは自律神経の副交感神経のスイッチを入れ、リラックスした状態にしてくれると述べました。加えて最近、プレーンヨーグルトの香りが脳の認知機能を活性化するという研究発表がありました(小長井ちづる 十文字学園女子大学 2023年)。

脳は外部から刺激を受けるとこれに反応し、内部にはさまざまな電気信号(=脳電位)が発生します。この脳電位の中で認知に関する情報処理を担当しているものに着目し、刺激から反応するまでの時間を測定することで脳の認知機能を評価するという試験方法があります。反応時間が短いほど脳は活発に作動しているということになります。

研究ではプレーンヨーグルトの主要な香気成分である酪酸、酢酸、ジアセチルを嗅いだ時の認知に関与する脳電位の反応時間を測定しました。蒸留水を対照とした時の時間を100として比較した結果、有機酸である酪酸や酢酸では10~20%短かったのに対し、ジアセチルでは約40%もの短縮が確認されました。

プレーンヨーグルトの香りの中でもクエン酸を素に乳酸菌が産生するジアセチルという香気成分は、脳の認知機能を強く活性化するはたらきがあることが判りました。

発酵乳/ヨーグルトは、ペットの食事やおやつとしてとても身近なものです。牛乳が原料であるため育ちざかりはもちろんのこと、カルシウム補給の意味から高齢ペットのケア食材としても適しています。

今まではペロッと食べさせていたヨーグルトですが、これからは少し間を置いて十分ににおいを嗅がせてから与えてみてはいかがでしょうか。発酵乳の香りがペットのストレスを緩和したり、脳機能の活性化を応援することが期待されるでしょう。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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