獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「幼いペットのCa補給」

Ca(カルシウム)補給というと、高齢者や高齢ペットの健康維持というイメージがあります。これは老化により骨がもろくなるのをケアして、骨折などの事故を防ぐためです。今回は視点を変えて、育ち盛りである成長期ペットへのCa補給の重要性を考えます。

【フードのトッピング食材】

トッピングとは見た目を美味しくするために「食品の表面にのせるもの」という意味ですが、ペットフードでは中に練り込んだものや、何かの栄養機能をプラスするための食材も含んでトッピングと呼んでいます。

いろいろなトッピング食材

フードショップやホームセンターのフードコーナーにはいろいろなトッピング商品が並んでいます。ヤマザキ動物看護大学の大島誠之助は市販のトッピング商品を調査し、原材料を次のようにグループ分けしました(2019年)。

○肉類 
…チキン、ささみ、ビーフ ほか
○魚介類 
…マグロ、カツオ、サーモン、乾燥小魚、しらす干し、小エビ ほか
○野菜類 
…緑黄色野菜 など
○乳類 
  …ミルク、チーズ
○その他
  …玄米(米)、海藻(海苔、昆布) ほか

このように見るとトッピング食材には魚介類が多い感がありますが、もう一つカルシウム源となるものが広く採用されていることに気が付きます。

カルシウム源となる食材

「カルシウム補給になる食材は?」と聞かれた時にみなさんは何が頭に浮かぶでしょうか。おそらく10人中10人の方が「牛乳」と答えられると思われます。長崎大学の本田 藍らは大学生とその家族:合計486人を対象に、カルシウムを多く含む食品の認識度と摂取頻度を調査しています(2014年)。

認識度トップ3は小魚(91.6%)、牛乳(90.3%)、乳製品(73.9%)、摂取しているものトップ3は少し入れ替わって乳製品(53.9%)、牛乳(51.2%)、小魚(45.7%)という結果でした。調査地域が海の食材が豊富な長崎県であることも影響しているかもしれませんが、牛乳と並んで小魚がカルシウム源として高く認識されていました。

牛乳の摂取頻度

Ca(カルシウム)源として誰もが認めている牛乳ですが、続きの調査では実際に毎日飲んでいる人の割合は17.5%しかありませんでした。逆に「まったく飲まない」という回答は全体の37.9%もありました。

牛乳を飲まない理由としては、お腹ゴロゴロ問題(乳糖不耐症)よりも「牛乳を飲む習慣がない」というのが最も多い回答でした。小中学校では給食で毎日牛乳が飲まれていますが、これが高校生~大学生と進むにつれて徐々にCa源である牛乳を飲む習慣がなくなってゆくということです。

牛乳を飲む習慣がないということは、当然自宅の冷蔵庫の中に牛乳はありません。仮にこの人たちがペットを飼っている場合、愛犬や愛猫に牛乳を与えるという習慣もないということになります。

【幼いペットとCa】

学校給食で牛乳が出されているのは、成長期に丈夫な骨を作るためのCa補給という意味です。ではペットに関してはどうでしょうか。ここでペットフードの栄養基準がどのように設定されているのかを見てみましょう。

ミネラルの基準量

ペットフードのパッケージでよく目にするAAFCO(米国飼料検査官協会)は、定期的にフードの栄養基準を改定し公表しています。最新のものは2016年版になりますが、この中のドッグフードの成長期と維持期の基準値は次のようになっています。

乾物あたりの配合最小値(成長期→維持期)
○タンパク質(22.5%→18.0%)
○脂質(8.5%→5.5%)
○Ca(1.2%→0.5%)、P(1.0%→0.4%)、K(0.6%→0.6%)

体をつくるタンパク質やエネルギーである脂質は維持期(成犬)に比べて、成長期(幼犬)の方が高めに設定されているのが判ります。中でも幼犬用フードのCa(カルシウム)とP(リン)は成犬用の約2倍量を配合するように推奨されています。これはCaとPが骨の材料になっているためです。

Caのはたらき

ペットも含め私たち動物はいろいろなミネラルを必要とします。この中でCaは体内での存在量が最も多く体重kgあたり15g、次いでPが10gを占めています。これは骨がリン酸カルシウム(PとCaの化合物)という成分でできているためです。

体内でCaは①骨や歯の構成成分 ②筋肉の収縮 ③神経の情報伝達の3つの仕事に関わっています。骨や歯がCaからできていることは先ほど述べましたが、歩いたり走ったり筋肉を動かす時にもCaを必要とします。

これより幼い時期にCaが欠乏すると骨の成長に異常が見られたり、テタニーという筋肉のけいれん・硬直が起きることがあります。また過剰な場合にもいろいろな不都合が認められるため、AAFCOではドッグフードのCa量を成長期:1.2~2.5%(1.8%)、維持期0.5~2.5%(1.8%)という範囲を設定しています。(なお最大値の2.5%は小型犬用、1.8%は大型犬用も含めたフードの値です)。

【成長期へのCa補給】

幼い動物や子供の食事、特にCa量と運動機能の関係については多くの研究報告があります。その中で2つの試験データを紹介しましょう。

骨・筋肉の発育

大阪大学の平野朋枝らは、成長期の実験動物においてCaが不足すると実際に骨や筋肉の発育にどれくらいの影響が出るのかを調べています(2003年)。

●被験動物 成長期ラット(4週齢 23匹)
●グループ
A群:通常エサ(6匹)
B群:低Caエサ(6匹)
  C群:通常エサ+運動(6匹)
D群:低Caエサ+運動(5匹)

上記の条件で4~13週齢まで飼育し各グループの成長度合いを観察しました。通常のエサを給与されたA群を基準として各群の体重100gあたりの脚の骨と筋肉の重量を比較した結果、B群ラットは5~10ポイントも低い値でした。

育ち盛りの動物の骨はどんどん成長します。そして丈夫な骨ができると運動によって筋肉も発達します。Ca不足は骨と共に筋肉の発育低下も招くことが判ります。

運動能力の向上

子供が速く走ったり、ボールを遠くまで投げたりする運動能力は日常の食事内容と関係があるのではないかと考えた研究者がいます。福岡女子短期大学の瀬浦崇博らは6歳児21人を運動能力が高いグループ(12人)と低いグループ(9人)に分け、食事の栄養内容を調べました(2010年)。

運動能力の高グループの子供たちが摂取している栄養量を100として比較したところ、低グループではエネルギー量、タンパク質、脂質、炭水化物で5~15ポイントほど低い傾向が見られました。これよりも有意な差をもって摂取量が少なかったのがCa、P、ビタミンB2、パントテン酸でした。中でもCaは20ポイント以上も低い値を示していました。

両方のグループの子供たちは身長120cm前後、体重20kg前後と体格に大きな差はありませんでした。しかし栄養成分の摂取不足は走る、投げる、ジャンプするなどの運動能力の低下を招くことが判りました。

このようにヒトに限らず他の動物においても、成長期のCa補給は骨や筋肉の発育を促し運動能力を向上させます。当然このことは私たちのペットにもいえることでしょう。

市販の総合栄養食フードでは、AAFCOが推奨する栄養基準値が満たされています。しかし手作りフードの場合、栄養値の過不足が気になります。今回紹介したCa成分は牛乳や乳製品により補給できますが、どうしてボリュームがあるため小型犬では量としてあまり摂ることはできません。

このような時に登場するのがトッピング食材です。少しの量をフードにパラパラとふりかけたり、おやつとして与えることにより成長期のペットに手軽にCa補給ができます。次回はCa食材としての小魚を取り上げます。

(以上)

執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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